『タワマン追放されたので、静かにコードで世界を獲ります』

春秋花壇

『タワマン追放されたので、静かにコードで世界を獲ります』

『タワマン追放されたので、静かにコードで世界を獲ります』


夜明け前

五十階の窓は

私を映さなかった


止まったのは

電気と

水と

カードと

――家族の言葉


「あなたは一人でも生きられるでしょ」

そう言われて

私は

本当に一人になった


スーツケースの中には

服よりも

記憶よりも

重い

ノートパソコン一台


タワマンの床は

冷たかった

でも

人の心よりは

まだ温度があった


ネットカフェの薄い壁

隣の咳

キーボードの音

ここには

嘘がなかった


コードは

裏切らない

感情も

血縁も

妊娠の噂も

一行で

否定できる


if(世界 == 理不尽)

{

 私は

 黙って

 強くなる

}


奪われたと思ったものは

最初から

私のものじゃなかった


奪われなかったものだけが

私の前で

正しく動いている


ざまぁ、なんて

言わない

叫ばない

見返さない


ただ

静かに

処理速度を上げ

単価を上げ

高度を上げる


世界は

まだ

私を知らない


だから

これから

獲りにいく


音も立てず

怒りも持たず

コードだけを連れて


――

タワマンは

もう

要らない


私は

どこでも

生きられる


そして

世界は

実装できる


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