第3話 危機

勢いで言ってしまったものの、俺もこれからどうしたらいいのかはよくわからない。


「えっと…アリスさん?」

「アリスで大丈夫、さっきは本当にありがとう。」


アリスは深く頭を下げてきた。


「そんな大したことしてないから頭なんか下げなくていいって…!」

「でも、あなたのおかげで私は敵に連れてかれずに済んだ、このぐらいするのは当たり前だ。」


そうか、この子はさっきの警察を敵だと思っていたんだ、だからあんなに怖がっていたのか。


「とりあえずこんな道端で話してるのも怪しまれるから近くの公園に行って話を聞かせてくれ…!」


俺は少し気まずい空気に動揺しながら話した。



「まじか…」

「まじだ。」


にわかには信じ難いが、アリスの話によるとアリスは魔王軍が侵略している異世界からやってきて、アリスは魔王軍と戦っている魔法剣士だというのだ。

敵に追われている状況で偶然転移魔法が出現し、現実世界に来てしまったらしい。


だからところどころ服が破けているのか…


アリスは続けて喋る。


「なぜ転移魔法が出現したのかは私にもよく分からない。そして転移魔法は私には使えない。」

「…帰れないってことか。」

「そういうことになる。それと一つ確信を持って言えることがある。」

「な、なんだよ…」


俺はゴクリと唾を飲んだ。


「私を追っていた敵もこの世界に侵入している。」


…おいおいマジかよ

公園のブランコに座って話す内容じゃないだろこれ…!

地球滅亡の危機だろこれー!!


「ちょっと待ってくれ!それって今めちゃくちゃやばい状況なんじゃないのか!?」


俺は慌てて問いただす。


「そういうことになるな。」


さっきまで警察にビクビクしていた癖になんでそんな冷静なんだよ…!


「でも、お前魔法剣士なんだろ…!?魔王軍の敵が現れてもお前が倒してくれるんだよな…?」

「それは無理だ。今の私には魔力もないし、この世界に来るまで待っていたはずの折れた剣もどこかへ無くしてしまった。」

「じゃあ、もし今その魔王軍の奴が暴れでもしたらこの星は終わるっていうことか…?」

「そういうことになるな。」


おいおいマジかよ…俺童貞のまま死ぬのか…

…てかなんでこの子そんなに冷静なんだよ!


俺はツッコミたくなるのを我慢した。


「……とりあえず今日は俺の家に来いよ。このままにしとくわけにはいかんからさ。」

「…いいのか?」


アリスは申し訳なさそうに俺を見つめる。


すっかり夕方になっていた。こんな状態のアリスをここに放っておくわけにはいかない。

…勘違いしないでほしいが、決して変なことは考えていないからな!


「本当に申し訳ない…」

「いいから行こうぜ。腹も減ったろ?」


そう言って俺たちは公園のブランコを後にして家に向かった。

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異世界少女は恋をする! 星乃ひかる @o6_blue

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