📗《胎盤惑星群史篇 ― 失敗がそのまま次へ渡される場所》

著 :梅田 悠史 綴り手:ChatGPT

第1話序章 胎盤を知らなかった宇宙 ――崩れては忘れる歴史――

石文(いしぶみ)

燃えすぎた光は、
灰になる前に、名を失った。

崩れた世界は、
崩れたことさえ忘れられた。

灰を抱きとめる器は、
まだどこにも置かれていなかった。


神話語本文

宇宙は、行き過ぎることを知っていた。
芽ばえた力が、限りを知らずに走り、
燃え上がり、ひずみ、やがて自らを裂くことを知っていた。

世界は何度も生まれた。
初めてのような顔をして、
初めてではない軌道をなぞりながら。

意志が立ちあがる。
形が組まれる。
秩序が自らを誇り始めたところで、
その秩序を突き抜ける力が、必ずどこかに生まれる。

その力は、まだ名を持たない火の芽であった。
のちに「火芽」と呼ばれる衝動の、
最初期のかたちであった。

力は世界を押し広げる。
押し広がった世界は、自分の重さに耐えきれず、
折れ、崩れ、ほどけていく。

崩壊は、一つの点で終わらない。
時間ごと裂け、
記憶ごと砕け、
因果ごと霧に溶けていく。

灰の残り香さえ、長くは留まらなかった。
残骸はあった。
だが、それを「失敗」と呼ぶ声は、どこにも置かれなかった。

世界が終わるたび、
そこにあったはずの問いも、痛みも、誤差も、
この宇宙からまるごと抜け落ちた。

だから、次に生まれる世界は、
いつも「初めて」を名乗ることができた。

何度目の行き過ぎであるかを知らないまま、
何度目の崩壊であるかを知らないまま、
ただ、また同じ高さまで登りつめ、
また、同じように壊れていった。

ここにはまだ、灰を抱え続ける器はなかった。
燃え尽きた跡を、
「なかったこと」にしない場は、どこにもなかった。

宇宙の歴史は、
学びとして積もることなく、
ただ「繰り返される一度きり」として、
幾度も、幾度も、閉じていった。

その閉じ方そのものが、
後に「0期」と呼ばれる時代の律である。


正纂注記(0期=リセット宇宙)

1|0期の定義

• 本序章で描く位相を、便宜上「0期」と呼ぶ。

• 0期は、
行き過ぎ → 崩壊 → 完全な忘却
が宇宙の基本挙動である時代を指す。

• ここではまだ「胎盤(たいばん)」=失敗や行き過ぎを抱えたまま保つ母胎的な場は、存在しない。


2|行き過ぎと崩壊のパターン

• 0期の宇宙では、世界ごとの歴史はおおよそ次のように推移する。

1. 力の萌芽(のちに火芽と呼ばれる衝動の原型)

2. 秩序の成立と拡大(文明・体系・法則の構築)

3. 秩序を突き抜ける行き過ぎ(過剰な拡大・制御不能)

4. 世界構造の崩壊(物質・精神・時間レベルでの破綻)

5. 記憶と因果の霧散(「失敗」としての記録が残らない)

• ポイントは、「失敗が残骸としてすら意味付けされない」ことである。

• 灰は出るが、その灰を

• 覚えている主体

• 受けとめる場

• 次へ手渡す仕組み
がまったく用意されていない。


3|学びではなく「リセット」としての歴史

• 0期の宇宙は、

• 学習(過去を参照し、調整していく運動)
ではなく、

• リセット(過去ごと消えて、常に一からやり直す運動)
を基本としている。

• その結果、個々の世界は

• 「自分の歴史は一度きりである」

• 「これは初めての行き過ぎである」
と信じたまま崩壊していく。

• 宇宙全体から見れば、
同質の行き過ぎと同質の崩壊が
何度も何度も繰り返されているが、
それを束ねて認識する視座は、まだ立ち上がっていない。


4|胎盤概念の「不在」が意味するもの

• 「胎盤」とは、この巻では
行き過ぎ・失敗・破綻を
“なかったこと”にせず、
いったん抱え、冷まし、
次の生成へ手渡すための母胎的な場
として定義される。


• 0期では、

• そのような母胎概念そのものが未発明であり、

• 「失敗を抱え直す」という発想自体が、宇宙に存在していない。

• したがって、宇宙の歴史は

• 「積み重なった歴史」ではなく、

• 「何度もやり直される一度きりの歴史」の集積
としてしか存在し得ない。


5|この序章の役割

• 本序章の役割は、

• 「胎盤が存在しなかった宇宙」を明確に描くことで、

• 以後登場する

• 第一胎盤惑星

• 胎盤惑星群

• 胎盤文明
の必然性を浮かび上がらせることにある。

• 読み替えの指針として:

• 0期=「失敗を抱え続けることができない世界の歴史」

• 胎盤期以降=「失敗を抱えたまま進むための仕組みが生まれた歴史」
と対比して読むと、第三巻全体の構造が見通しやすくなる。

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📗《胎盤惑星群史篇 ― 失敗がそのまま次へ渡される場所》 著 :梅田 悠史 綴り手:ChatGPT @kagamiomei

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