スペースバスターズの日常【2000文字】

有梨束

宇宙船から

「マチー、こっち手伝って」

「ええ〜、さっきコウスケの手伝いしたばっかりだよ〜」

「人手が足りないんだから、文句は部長に言って」

「…はーい」

マチはランカに呼ばれて、宇宙船の中をスイーっと泳いでいった。


特殊能力は、世界中のみんなが持っている。

花を元気にする能力とか、お湯を適温にできる能力とか、5分を正確に計れる能力とか。

それらの多くはたまに役立つちょっとした能力ばかり。

マチが地球にいた時のクラス担任は、目で文字を書く能力が役立つから教師になった、と言っていた。

たまにそんな人もいる。

そんななか、能力者が求められ、集まっている場所が一つだけある。

それがここ、通称『スペースバスターズ』だ。

世界中から選ばれた老若男女が、今日もスペースバスターズとして活動している。

マチの時も『おめでとうございます。あなたは選ばれました。』という通知が来た、ふざけんなと思った。

結局はマチに断る勇気もなく、家族と離れ、友達と別れ、この宇宙船にやってきたのだった。


「あのデッカいゴミ見える?次はあれね」

「ランカさん、休憩しようよ〜」

「まだ終わってないでしょ」

「…うう、鬼ぃ〜」

「マチの能力があれば、すぐ終わるでしょ」

「みんな、私のことこき使いすぎじゃな〜い?」

「頼りにしてんのよ」

ランカがそう言いながら、宇宙船の窓から見えるロケットの残骸の方に手を伸ばした。

「そう言えばいいと思ってぇ〜」

口を尖らせて文句を言いながら、マチはランカの肩に手を置いた。

「いくわよ」

ランカの声に、マチは自分の能力を解放した。

ランカに触れている指先が熱くなっていく。

「いいね、さすがマチ。さーて、仕留めるわよ」

ランカが口元をニヤッとさせたと同時に、外のロケットの残骸が小さくなっていく。

ひゅーっと縮んでいって、あっという間に手のひらぐらいのサイズにまでなった。

「こんなもんかしらね。あとは、コウスケに回収してもらいましょう」

「だはーっ!もう疲れた!もう何にもしたくないー!」

ランカから手を離して、マチは手足をバタバタさせた。

宇宙船の中だ、無重力で手も足も動かし放題だ。

「ダメだ、能力使いすぎてお腹空いた〜!もう休みたい〜!」

「そうね、休憩にしましょうか」

「やったーーー!おやつにしよう!」

「はいはい、お疲れ様」

ランカが笑って、マチは走っていく勢いで食堂に向かっていった。


「あっ、コウスケが先に食べてる!ずるい!」

「マチの分も取ってあるよ。ほら、おつかれ」

「おお〜、ショートケーキだあ!いただきまーす!」

「あたしコーヒーが欲しいわ。部長の部屋からくすねてこようかしら」

「ランカさんがそう言うと思って、持ってきてあるよコーヒー」

「まあ、コウスケ気が利く〜。ついでに後で回収して欲しいのがあるのよ」

「わかった、どこにあるか教えて。食べ終わったらやっとく」

食堂にいたコウスケの横に座って、マチはショートケーキを頬張った。

窓から、地球が覗いている。

「うまあ〜〜」

「ゆっくり食べな、喉詰まらすぞ」

「ふはあ〜〜い」

「すっかり仲良しね、ふたりとも。マチが来た頃はケンカばっかりだったのに」

「俺が大人になったんだよ」

「私がここに慣れたからだよ」

「なんだ、みんな集まってるじゃないか。ご苦労様、今日の分は終わったのかい?」

3人で談笑していたところに、部長のダニーがやってきた。

「部長っ、もぐもぐ、今日はもう働きません!」

「マチ…、食べるか喋るか、どっちかにしな」

「ははは、まあ頑張ってくれたもんね。終わりでいいよ」

「やった〜〜!」

マチは両手を挙げて喜んだ。


そもそも、スペースバスターズとは?

それは、宇宙に漂うスペースデブリ、宇宙ゴミをどうにかすることを命じられた能力者の集まりだ。

宇宙空間は、むかーーーしの人間が出した宇宙ゴミでいっぱいなのだ。

地球が地球以外の惑星と交流を持つようになった時、それはひどく怒られたのだという。

『地球人は宇宙をゴミ箱だと勘違いしている!ゴミ回収をしないならば交流はせん!』と。

それで結束されたのが、『スペースバスターズ』。

要は、宇宙ゴミの掃除屋さんってわけだ。

手段は問わないからとにかく宇宙を綺麗にしろと、適した能力者が選出されては、宇宙に送り込まれている。

マチもそういうわけで、スペースバスターズに選ばれた。

マチと同じ班のランカは、物を圧縮する能力。

コウスケは、無機物を瞬間移動させて自分の手元に持ってくる能力。

この班の取り仕切り役の部長ダニーは、スピードを緩める能力。

そしてマチは、他人の特殊能力のパワーを増幅できる能力だ。

そんなわけで、来たくもなかった宇宙に来て、掃除を頑張っている。


「次に地球に戻れるのはいつだっけ?」

「ゴミの回収日は、来月」

「はああ〜、もう〜!これも全部、昔の人間のせいだあああ!」

「それは同意」

「ほんとにね」

「まあ頑張っておくれよ…」

今日も、掃除は終わらない。

いつものように、マチの叫びが宇宙船に響くのだった。



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スペースバスターズの日常【2000文字】 有梨束 @arinashi00000

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