空から爆弾が降ることも 引き金を引けと強制されることも無い日々は とても稀有であり 大切にしなければいけないと思った
涼月
ちょっと真面目な話
世界史を広げれば、いつの時代もどこかで誰かが戦っている。
常に争いが絶えない絶望的状況。
刑法で『殺人罪』が制定されていても、自国を守るという大義名分があれば、大量虐殺しても勝利の雄叫びでお咎めなしになってしまう。
人間社会は、矛盾だらけだ。
だから敗戦後八十年の間、徴兵制も無く、戦場の最前線に立たされることもなく過ごせている今の日本の現状はとても貴重だということを、しみじみありがたいと思った。
でもこれは、多くの先人の犠牲の上に成り立っているのだと言うことも、ちゃんと覚えておかなければならない。
皆さんが第二次世界大戦と聞いて思い出すことは何だろうか?
真珠湾攻撃、零戦、ひめゆりの塔、東京大空襲、原爆投下……
かくいう私は、学校で近代史をきちんと習ってはいない。三学期に時間切れで、さらっと流されただけ。
今の高校では、もう少し力を入れているようなので良かったが、現在の世界情勢は、第二次世界大戦の影響を色濃く残しているので、きちんと学ぶことが大切だと思う。
第二次世界大戦と聞いて、私が一番に思い出すのは原爆。この悲劇は、ずっと語り継いでいくべき事だ。
と同時に、日本軍が引き起こした悲劇も、知っておくべきことだろう。
でも、その辺りの詳しいこと。
学校では習わないんですよね。
こんな無知な私が、海外で知って驚いた日本軍の姿を二つご紹介する。
一つは、シンガポール国立博物館に展示されている日本軍の自転車だ。
ドビーゴート駅から徒歩圏内。
白亜の壮麗な建物で、外観を見ただけでテンションがあがる。
シンガポールへ行かれたら、是非訪ねていただきたい場所だ。
常設展示は、密林だった頃から近代建築が林立する現在までのシンガポールの歴史。
植民地時代の生活と共に大きく取り上げられているのが戦争の傷跡だ。
第二次世界大戦の時に、日本軍がシンガポールを陥落。数々の残虐な行為を行なった事実が残されていた。
目を覆いたくなるような酷いことを、日本軍もやっていた。
ここでは、日本は加害者側だ。
被害国で、被害の状況を突きつけられることほど生々しいことはない。
ショックだった。
展示品の中に異様な物がある。
日本軍がマレーシアを抜けてシンガポールに辿り着いた時に乗ってきた自転車だ。銀輪部隊と呼ばれていたらしい。
熱帯の密林を自転車で行軍!?
狂気としか思えない。
戦争時の異常性を突きつけられた気がした。
恥ずかしながら、私は日本軍がシンガポールまで侵略していた事を知らなかった。
いや、南方作戦のことは知っていたが、正確にどこにどうやって攻めていき、どんな事をしたのかは知らなかったのだ。
でも、本来、知っていなければいけなかったのだと恥ずかしかったし、被害を受けたシンガポールの方々に申し訳なかったと思った。
現在、シンガポールの人々は日本人に優しい。それは過去を過去として、現在に向き合ってくれているからこそ。
私たち現在の日本人は、同じ過ちを繰り返さないようにしなければいけない。
二つ目は、オーストラリアの西海岸。
パースのキングスパーク公園の崖だ。
日本から直行便で十時間ほどかかる。
地図で見ていただければわかると思うが、オーストラリア大陸の中で、一番日本から離れた場所にある都市だ。
最近は山火事のニュースが頻繁で乾燥した地だが、実は南極に近く隔てるものも無いので、海の水は冷たい。
キングスパークは市街地を見下ろす小高い丘にあって、休日になると多くの市民が訪れる憩いの場だ。
ここには、数々の戦争犠牲者を追悼するための戦争記念碑があり、アボリジニ文化の紹介もされている。
そんな公園内を散策していた時、展望場所の一つに設置された説明書きに『この下の崖から日本軍が攻め入ってきたが、勇敢なオーストラリア兵士によって阻止された』という文章。
ここにも日本兵が進軍していたんだ!
無知な私はここでも驚いた。
見下ろしても鬱蒼とした木や草に阻まれて、海岸は見えなかった。
ここから登って戦って……
想像してみたが、美しい風景とあまりにも馴染みが悪過ぎる。
それに、遥か日本からここまで来て、日本の何十倍も広いオーストラリアに攻め入るなどという考えは、まるっきり現実味がわかなかった。
私は平和に慣れすぎているし、戦争の真実を知らなすぎる。
それを実感した。
平和に慣れるのは悪いことではないが、平和のありがたさを忘れるのは危険だと思う。
戦争の真実を知らないのは由々しき事態だ。
正しく知って、過ちを繰り返さないようにするためには、冷静に偏見なく歴史を学ばなければならない。
大抵の場合、仕掛けた側が加害者で、仕掛けられた側が被害者だ。
でも、戦争をそんな立場や事情で正当化するのはナンセンスだ。
戦場にあるのは、生か死。
殺すか殺されるか。
人々をそんな最悪の二択に追い込む圧力は全て、悪でしかない。
だから、これからの私達は二択に追い込まれないようにするために、普段から対話を大切にしていかれたらいいなと思う。
幸いなことに、今はSNSで簡単に世界と繋がれる。
どうせ発信するなら、みんなが安心できるような言葉がいい。
そして、こんなふうにスマホをのんびり眺めていられる今、この瞬間が、世界史から見たらとても『稀有な時間』なのだということに感謝したいと思う。
完
ウクライナやパレスチナだけでなく、現在も地球上では戦いの中で生死を脅かされている方々がたくさんいらっしゃいます。
一日も早く、安心して生活できるようになりますように!
空から爆弾が降ることも 引き金を引けと強制されることも無い日々は とても稀有であり 大切にしなければいけないと思った 涼月 @piyotama
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