第2話
次の日、冬休みの前の教室で私たちの止まらないおしゃべりが周りの人たちの無関心と無言の興味にさらされていた。
学校自慢の漆喰の壁と木製の机や椅子。教室の窓は大きく、外庭の緑が淡い。
女子中学生たちは制服やジャージをまばらに着て、それぞれの机でノートに何かを書き込んだり、小声で英語の会話をしている。校則では授業中以外、英語で話すことが求められるため、教室内のほとんどの声は英語が飛び交い、規律を守るような静かな緊張感が漂っていた。
しかし、私たちの机の周りだけは、日本語での会話が続いていた。周囲の女子たちはちらりとこちらを見て、小さく眉をひそめる。あからさまではないが、「校則違反してる」という視線が飛んでくるのが分かる。私たちはそれに気づきつつも、少し微笑みながら話を続けていた。
「ね、聞いて、この前のデート、なんだけど……ね、!」
私は机に肘をつきながら漆喰の壁が不自然に淡白色で、しかし柔らいなと思った。木製の机と椅子は和モダンで落ち着いた色合いだ。
「ちょっと!話聞く気あるの!?」彼女。
「あ、うんうん……、ごめん、話聞いてなかった(笑)別のこと考えてた」
私がそう答えると、彼女は自分の机に寄りかかり、少し笑みを浮かべながら私の目の輝きを確認するように見てきた。その口元には、ほんのわずかに不満そうなニュアンスも混じっている。
「もう、なんで話聞いてくれないの?」
「ごめ、頭の中で思考がぐるぐるしてて……」
「デートの最中にナンパされたんだけど何でなんでだ?!」
彼女は?な顔で両手を机の上で軽く広げた。机の上の筆箱や教科書が微かに揺れ、私はその動きに目を細めて言う。
「相手は女子だったの?男子だったの?」
「私の彼女は女子に決まってるじゃない、生物として男子はありえない」
「違うよ、ナンパしてきた人」
「女子だよ、背中に剣を刺してた」
「剣?ゲームとか?の?ロールプレイングみたいなやつ?」
「そうそう」
「そんなの売ってるの?」
「知らない。それで、その剣すごいですねって言ったらその子、すごく喜んで……」
彼女は笑顔でその様子を再現する。私は少し眉をひそめつつも、興味深そうに彼女を見つめている。
「ふふーん、それから?」
「3人で盛り上がった。けど、私の彼女がデートなのに何で三角デートになってんの?って、ちょっと拗ねて、しまって……それで剣の女子が私の彼女にデザートでも食べに行こ?、奢りますって(笑)3人でデザート食べて帰ってきた」
「珍しいデートだね」
彼女の頬がほんのり赤くなるのがわかる。光の陰影が、可愛らしさを際立たせていた。
机の上の教科書やノートがきれいに並ぶ教室内で、私たちはそれぞれの席に少し体を寄せ、視線を交わす。
「うん……面白かった!」
彼女の言葉に私はくすりと笑うのだった。
「私もデートしたいな」
「誰と?」
「ちょっと言ってみたかっただけ(笑)」
「ふふーん」
「ふふーん」
「(笑)」
(了)
恋愛関係三角 紙の妖精さん @paperfairy
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