第3話 魔法少女全力拒否
「おお!ついにプレシャス☆マホの復活だ!!」
「まだするとは言ってないわよ。」
そう言ってフェスから渡された小さなハートの宝石を魔法のステッキに嵌めると、魔法のステッキの宝石が輝きだして麻保にかつての記憶を呼び覚ましていく。
「ああ、そうよ。変身の呪文で光に包まれて、え?なんであんなあられもない姿に⁉・・・ちょっと!そんなに動いたらパンツ見えちゃう!・・・いやっ!もう止めて~~!!」
急に頭を抱えてのたうち回る麻保にフェスは若干引きながらおずおずと尋ねる。
「あ、あの~麻保?大丈夫かい?」
「こんなの黒歴史じゃない!いっそ殺して~!」
「一体どうしたって言うんだ⁉キミには世界を救う使命があるんだよ。」
「世界なんてどうでもいい!今から消滅させてやる!」
「なんてこと言うんだ!しっかりしてくれ!プレシャス☆マホ!」
「イヤ~~~!!」
暴れる専業主婦を宥めるために小妖精は格闘し続けて小一時間、麻保は落ち着きを取り戻したがフェスはボロ雑巾のようにぐったりしていた。
「・・・お、落ち着いたかい?」
「・・・少々お見苦しいところを見せて申し訳ありませんわ。」
「少々?」
プイッと顔を背けて素っ気ない対応をする麻保にフェスはむくれながらも毛繕いして向き直る。
「それで魔法少女もとい魔法戦士の件なんだけど、やってくれますね?」
「お断りよ!」
「でっすよね~。」
フェスは不貞腐れてゴロンと仰向けになりそのまま腕を組んで首をひねる。
「どうしたものかな?プレシャス☆マホの復活が叶わなければ代理を探すしかないか~?」
「そうしてちょうだい!いらない記憶をありがとうございました!」
麻保はシッシッとフェスを家から出るように追い立てる。それを見てフェスは肩を落としながら魔法のステッキを抱えてトボトボと玄関へ向かう。
「やれやれ。共に世界を救う活躍をした仲だというのに・・・時の流れは残酷だなぁ。」
背中の羽を羽ばたかせてフェスは玄関の扉の取っ手に手をかける。
「こうなったら仕方がない。馬場正義くんにプレシャス☆マホを引き継いで・・・グエッ!!」
玄関から家を出ようとしたその瞬間、首根っこを掴まれ物凄い勢いで家に引き込まれたフェスは体勢を崩して床を転がっていく。
「イテテッ!な、なんだ⁉・・・ヒッ!!」
フェスが顔を上げると、そこには鬼の形相をした麻保が仁王立ちしている。
「フェス~!さっき変なこと言ってなかったかしら?正義をなんだって?」
麻保の気迫にフェスは脚が震え冷や汗をかきながら喉を震わせて話し出す。
「・・・そ、それはキミの血なのか正義くんには潜在的にマジカルパワーの適正がかなり高いからだよ。そもそも適正のある魔法戦士候補は見つけるのがかなり難しい。彼ならきっと素晴らしい魔法少女になれると思うよ!」
「ふざけんじゃないわよ!」
麻保の怒号が家の中を震わせる。
「正義にそんなことさせるわけないでしょ!大体なんで魔法少女を男の子の正義にやらせるのよ!・・・魔法少女の正義はちょっと見てみたいけど。」
怒りで炎を体から噴出させる麻保にフェスはおずおずと答える。
「プレシャス☆マホの魔法のステッキには長年キミの魔法少女の武器として活躍してきたおかげで尋常じゃないマジカルパワーが蓄積された名器なんだ。だけどそのせいでこのワンドは魔法少女の武器としてしか発動しないし、うまく扱えるのはキミか正義くんのような魔法戦士の器しかいないんだ。」
「ダメよ!正義に危ないことはさせられない!もう私たち家族に関わらないで!」
「そうはいかない!このまま世界を悪の魔物に支配されるのを見過ごすわけにはいかないんだ!」
「勝手なこと言わないでちょうだい!」
フェスにゴミを見るような目で見下す麻保は魔法のステッキを奪いとる。
「おい!何するんだ!」
「こんなものこうしてやる!」
ミシミシとステッキを圧し折ろうとする麻保に慌ててフェスは泣きながらステッキを抱える。
「やめてくれ!これが無かったら魔法少女たちの希望が潰えてしまう!」
「知ったことか~!」
魔法のステッキをグルグルと回しながら麻保はフェスを引き剝がそうとする。
すると、
ドド――――――――ン!!
突如として爆発音と衝撃が閑静な住宅街に響き渡る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます