爽快な笑いと、その奥に仕込まれた物語の巧みな展開力に驚かされる作品です。
はじめに、「シリアスな危機」の使い方についてです。 圧倒的な脅威が迫るたび、私は息を呑むような面持ちでスクロールをしました。 だけど、それらが次々と「掃除」や「食材調達」として処理されていくとき、自分の認識が間違っていたことに気づかされます。 絶望的な導入は、その後の爽快な解決を際立たせるための「フリ」として完璧に機能しており、何度も笑わせてもらいました。 このシリアスとコメディの緩急が、物語にしっかりとした奥行きを与えているのだと思います。
もう一点、私が深く納得したのは、「怠惰の因果応報」というルールについてです。 アルスが楽をしようとするほど、周囲が崇拝し、地位が上がり、結果として「だらだらライフ」が遠のいていく……。 この法則が物語中にあるからこそ、彼の繁栄が「幸福な罰」として機能し、独自の面白さを生んでいます。
そして、シオンがリリのアップルパイを一口食べた瞬間、彫像のように凍りつくあの場面についてです。 冷徹なメイドの鎧を一瞬で砕くリリの異質さと、言葉にならない衝撃が見事に描かれていました。
「半径数メートルの平穏」を守るためにゼロから世界を築き上げたこの物語を、これからも楽しみにしています。
本当にほんわかした気持ちになれる、素晴らしい物語でした。
この作品は、敵と味方がはっきり分かれて戦うタイプの異世界ファンタジーとは全然違っていました。
タイトルに「王都を凌駕する」という、なかなかハードなキーワードが入っていたので、読む前は派手な展開のある異世界ファンタジーを想像していたのですが、実際に読んでみると、何と平和な世界なんだろうと(笑)
たいそうな肩書きと覚悟を背負って現れる敵役たちが、現代的な便利道具を魔道具として再現した世界の中で、見事に拍子抜けしていく。そのズレが、心地よいドタバタ喜劇になっています。
主人公は圧倒的な力を持ちながらも、「倒す」「殺す」という生々しい世界ではなく、魔道具と称した、リアル社会の便利機器を堂々と登場させ、それらを使って、敵方キャラクター達を、面白おかしく翻弄していくのが、痛快な物語です。
敵方達は、なんだかんだどやられていきますが、それでも、「あれっ、ここにいるのもここも悪くないんじゃね?」と納得させてしまう。
敵味方関係なく、両陣営共にとても大人で、どこか優しい。
そんな価値観が終始軽やかに描かれていて、読み終えた後には、スカッとするよりも「なんだか安心した」という気持ちが残ります。
肩の力を抜いて楽しみたい人に、ぜひおすすめしたい一作です。