感受性

 木々の木漏れ日がなんだか泣いているように見えました。

 木陰に座って文字を辿る視界の端で、揺れる光が1つ、私の視線を奪い取りました。

 暖かい春風が頬を掠って通り過ぎていきます。

 私は通り過ぎたそれを目で追います。

 風はどこへ行くのやら、その先に君がいました。

 私は地面から腰を上げて、木の幹から背を離します。

 立ち上がった私にはもう木々の囁きは聞こえなくて、ただ、君のもとへ歩みを進めます。


 君は私に無いものを沢山持っていて、強いて乏しいといえば、感受性。


 君は本当に素敵な人です。

 だから、君に、好きな本を、好きな曲を、好きな絵を、好きな映画を、好きなものを知って欲しいのです。


 感受性。


 そんなのは武器でも防具でもなんでもない。


 枷。


 私はそれに縛られて、君を縛るのです。

 感受性で人を殺したい。


 ただ、それだけです。

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心の在処 しう @Shiu_41

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