流れる星の魔導士

@jimgim

第1話


【魔法】


それは賢人曰く、無限の可能性を秘めた技術。


事実として、人類はこの技術を用いて生存圏を広げ、大きく文明を発展させて来た。


いつしかその技術によって生物としての生存競走の頂点に立った人類は、次のステージへと歩み始める。


無限の可能性を見るための"対象"として

栄光を手に入れるための"手段"として

あるいは欲望のままに振る舞う"力"として


己の魔法の技術を磨きあげていく。


彼らはいつしか畏敬を込めてこう呼ばれるようになった




─魔導士と













アルティミシア国領─フィアス


街の大通りにて、会話をする男女のグループがあった。



「お前には今日限りでパーティを抜けてもらう」


赤髪の男が毅然とした声で告げる。

それに慌てて食いかかるのは、黒髪の男。


「ま、待ってくれよ!なんで急に─」

「このパーティに弱いやつは要らねえって事だ」

「っ...!」


その言葉に悔しそうに顔を俯かせた黒髪の男は、無意識に己の魔導具をチラリと見る。


"青"


それが、男の魔導具に使用されている魔石のランクであり、最低ランクから抜け出したばかりの魔導士の限界。


「俺たちはお前以外みんな赤なんだよ。足手まといをこれ以上抱えるのは勘弁だ」


「──」


反論しようと思っていても、男の口から言葉が出ることはない。無力さを実感しているのは何よりも己自身。

激情のままに喚いても、惨めなだけ。


パーティの面々も黙って成り行きを見守っている。


「でもっ!僕だって努力を─」


「いい加減にしろよ!それともなんだ?惨めにパーティを追い出されるのが気に食わないってんなら─」



そう言って赤髪の男は己の魔導具に魔力を込めはじめる。


「名誉の負傷で戦線離脱って事にしてやるよ!」


傷害沙汰は流石にまずいと思ったのか、他のパーティの仲間が慌てて止めに入ろうとする


─が、それよりも先に野太い叫び声がピリついた空気を切り裂いた。



「食い逃げだーっ!捕まえてくれ!」

「食い逃げじゃない!未来への投資だ!」


思わず騒ぎの方向に目を向けるパーティの面々。

見れば大通りの向こうから人影が勢いよく迫ってくる。


「こんな場所で食い逃げだぁ?」


赤髪の男は己の苛立ちをぶつけるように魔力を高める。


「..はっ!いい度胸じゃねえか、憂さ晴らしついでに「邪魔だぁっ!!」─うぼぁっ!?」



人影は魔力を高めた男に気づくと、瞬く間に加速し、そのまま顔面を蹴り抜いた。

誰も反応が出来なかった、"赤"の魔導士のパーティが。


顔を歪なまでに変形させられ、吹き飛んだ赤髪の男はそのまま道脇のゴミ捨て場に突っ込んだ。


その事実を頭が理解する間もなく、人影は次の行動に映る。


バッ


「えっ!」


標的になったのは黒髪の男、一瞬で間合いを詰められ、あれよという間に拘束される。


「動くな!動いたらコイツがどうなっても知らんぞ!」



首元に添えられたのは星の意匠が施されたナイフ、耳元から聞こえる凛々しい声と恐ろしい脅迫。


黒髪の男"アレス"はこの日、人生で初めて人質に取られた。






─そしてこれが



「ふはははははっ!!道を開けろ!」



世界を大きく動かす一人の魔導士



"メテオ"との初めての出会いだった。












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