にわか・ヤンキー・ガール!
ぎゅうどん
Before 内気少女 After ヤンキー少女
私、秋葉陽子、15歳、高校一年の女子。私には同じ高校に通う幼馴染がいる、その子の名前は萌田萌々香。眼鏡をしていて性格はとても内気な子、いつもキョドキョドしていて、私以外の周りの人と上手く話せない。それを本人は悩んできたらしく一学期の終業式の帰りにこんな宣言をしてきた。
「えっ、イメチェンする?」
「うん…私、内気な性格を直して、その、目立てるようになりたいの…」
「目立てなくてもいいじゃん、今のままの萌々香で十分いいって。」
「駄目!これは私の一生に関わることなの!」
「一生とは大きく出たね、萌々香…?」
「だから応援して欲しい…こんなことを話せるのは幼馴染の陽子ちゃんだけだし…」
「そこまで私を信用してくれてるんだ。」
「応援してくれるかな…?」
「わかった、応援するよ、頑張れ、萌々香。」
「わぁ、嬉しい…大好き、陽子ちゃん…」
「だっ大好き!」
「うん、友達として大好きだよ…」
「なんだ、友達か、だよねー。」
私にとって萌々香はただの幼馴染の友人ではない、彼女本人には言わないが特別な感情を持っている。
「あれ…?なんで落ち込んでるの…?」
「なっなんでもない、イメチェンするってどの程度するの?髪型を変えてみたり、眼鏡からコンタクトにしてみるとか?」
「まだ決まってない…夏休み中にはやるつもり…」
「心配だな?私もイメチェンするの手伝おうか?」
「大丈夫、いつも陽子ちゃんに頼っちゃってるし…私一人でやってみるから…」
「そっそう?イメチェンしたら、すぐに私に連絡してよ?いいか悪いか判断してあげるから。」
「ありがとう…楽しみにしてて…」
でも確かに萌々香のイメチェンには期待が膨らむ、ハッキリ言って彼女は素材がいい、美少女のカテゴリーに入るはずだ。(私の見解)
それにイメチェンしたら家族の次に私に見せてくれるこの優先度の立ち位置がたまらない。萌々香にとって私が大事な存在だと言ってくれてるみたい。
だから楽しみに待つことにした。
しかし、それから1週間後、連絡が来て会いに行くと、イメチェンを応援すると言ったことを後悔することとなる、なぜなら彼女は⋯彼女は…
「あなた、萌々香だよね…?」
「何言ってんだよ、陽子?あたいに決まってるだろ?」
「わわわっ…」
萌々香は眼鏡を外したまでは想定内だったが、さらにキューティクルな黒髪だった髪を金髪に染め上げていて、耳にピアスまでしていた!さらにさらに、着ている服装まで柄が悪くなっていて!口調までやさぐれてるし!完全にヤンキーになってしまっていたぁー!!
「どうだ、これなら目立てるだろ?」
「なんでそうなった〜!?」
「へっへ、知りたいだろうな、教えてやるよ、夏休みが始まってすぐにな、家族と一緒にじいちゃんの家に遊びに行ったんだよ。そしたら偶然にも小さい頃に遊んでくれたりした近所に住んでる親戚の兄ちゃんも来ててさ、あたい相談したんだよ、どうやったら目立てるようになれるか?って、そしたら兄ちゃんが目立つならヤンキーになるのが一番だって、家からヤンキー漫画持ってきてくれてよ、それを読んだらすっかりあたいもヤンキーに憧れちまって、結果、こうなったわけよ。」
「オー・マイ・ゴッド…これ以上の言葉が出ない…というか悩みが話せるのは私だけじゃなかったんかい…?」
「今のあたいに怖いもんはないぜ、これからヤンキー道を爆進してやるからな、ハハハッ。」
「あはは、もう涙しか出ない…」
私が大好きだったあの純粋な萌々香よ、カムバックしてぇぇ!と心の中で叫んだ。
「二学期の始業式は目立ちまくり間違いなしだな。」
「その姿で学校に登校するつもり!?」
「当たり前だろ?」
「先生から怒られるなんてレベルじゃないって!校則破りまくりだし!そもそも親御さんが許してくれないでしょう!」
「ハハハッ、親が怖くてヤンキーが出来っかよ!この姿で学校に行ってやるぜ!」
「あら、萌々香、話が違うじゃない?」
後ろから怒っているのか顔が笑ってない萌々香のお母さんが現れた。
「かっ母ちゃん!」
「こんにちわ、おばさん。」
「こんにちわ、陽子ちゃん。萌々香?あんた、夏休みの間だけ、金髪とピアスさせて欲しいって泣きながら頼んでくるから仕方なく許可したのよ?約束が違うじゃない?ちょっと来なさい?」
「説教はいやだ〜!陽子助けてくれ〜!」
「叱られてこーい。」
「裏切り者〜!」
「あんた、母ちゃん呼びはやめなさいって言ったわよねー?今日の説教は長いわよー?」
「許してぇ〜!」
首根っこを掴まれて連れて行かれた。
「あんな、叱られてる萌々香も初めて見るな…?でもこれで二学期に怒られることはなさそう…?大丈夫だよね…?多分…」
そして夏休みが終わり、二学期の始業式の日、私は萌々香がちゃんと黒髪に戻し、耳のピアスも外したのか心配で、普段の登校時は公園で待ち合わせにしてるんだけど、今回は家まで迎えに行った。すると金髪は黒髪に戻っており、耳のピアスも外してあって一安心した。というかそもそも髪自体染めておらず、簡単に落とせるヘアカラースプレーで染めており、ピアスは穴を開けないフェイクピアスだったらしい、心配して損した。でもそれすらやらせてもらえないことに不満があるのだろう、萌々香は家を出るとグチグチと文句を言っていた。
「ちぇ、夏休みが終わったらヘアカラースプレーもフェイクピアスも全部没収されちまった。」
「残念だったね。」
「嬉しそうな顔しやがって、あーあー、これじゃあ、イメチェンしたってならないじゃんか。」
「眼鏡外してコンタクトにして髪もポニーテールにしてるし、十分イメチェンしてると思うけどな?あと口調も?」
「どれもインパクトが足りねぇだろう。」
「それに可愛いじゃない…なんちゃって…」
「フフフッ。」
「えっ、そこ笑うところじゃ…?」
「実はな、あたい、母ちゃんに内緒であるものを鞄に隠して持ってきたんだよ。」
「あるものって!」
まさか!ガチのヤンキーみたいに未成年が持ってちゃ駄目な停学or退学になりかねないやつ(煙草、酒、メリケサック的なやつ)を持ってきたんじゃ!
「流石にまずいでしょう!」
「かもな?あたいが持ってきたのはこれだ!」
「へっ…?」
鞄から出したのは酒でも煙草でもましてやメリケサック的なやつでもなくて、真っ白い何かの制服だった…?
「何それ…?」
「何って特攻服だよ?ヤンキーの服といえばこれだろ?母ちゃんに内緒でネットで買っておいだんだ。」
「なんだ、特攻服ね…?」
「ちゃんと背中に文字も書いてあるんだぜ。」
萌々香はサイズの合ってないブカブカの特攻服を着るとしゃがんで背中を見せてきた。ああ、確かに書いてある、刺繍で大きく夜露死苦の文字が…?
「書いてあるわ…?」
「イカしてるだろ、これを着て登校すればみんなビビるぞ、ヤンキーとして目立つこと間違いなしだぜ。」
「萌々香が着たところでビビるかな…?って!そこじゃない!そんなの着て行ったら駄目に決まってるでしょう!本物のヤンキーじゃないんだから!」
「あたいは本物のヤンキーだ!」
「にわかでしょうが!」
「にわかじゃねぇやい!」
「いいから脱げ〜!」
私は脱がせると特攻服を鞄に戻させて、絶対に学校で出さないようにきつくきつく注意した。そんなすったもんだで学校に遅刻しそうになり走るハメになった。すると校門前で生活指導の先生が居て指導を受けた。
「おまえら、遅刻ギリギリだぞ?早く教室に行け?」
「すみません!」
「あたいは遅刻でも構わないぜ、なんせあたいはヤン…」
「余計なことを言わないの!」
口を手でふさいだ。
「なんか言ったか?」
「なっなんでもありません!」
「ぷはぁ、なんだよ?口閉じさせやがって?」
「当たり前でしょう、わざわざ先生に叱られそうなこと言うんじゃないの!」
「はん!せんこうが怖くて、ヤンキーがやってられるかってんだ!」
「だからあんた、にわかだってば…?」
「またにわかって言いやがって?」
校舎に入り下駄箱から自分達の上履きに履き替えながら、続きを話した。
「いいか?何度も言うが、あたいはな、にわかじゃねぇ?本気でヤンキーなんだよ。」
「あのね、こんな背が小さくて幼児体型のヤンキーがいてたまりますかって。」
「くぅぅ、人が気にしてることを、ちょっと背が高くて胸が大きいからってよ!」
「きゃっ!何するのよ!?」
萌々香が私の胸を揉んできた!
「別にいいじゃんかよ?女同士なんだし?」
「あっあんた、今までそんなことして来なかったじゃない…?」
「ヤンキーになったからかな?」
「答えになってない!」
「へっへ。」
「こら、待て!」
でも内心、ドキドキしてる自分もいた。まさか萌々香に胸を揉まれる日が来るなんて。
「ヤンキーになった今のあたいに怖いもんなんかないんだよ〜。」
「ちょっと!前!」
「えっ?」
«きゃっ!»
萌々香は前をちゃんと見てなくて、上級生だと思われる背の高い女の人とぶつかってしまった。
「痛てて…」
「あんた、前見てないからよ?ちゃんと謝りなさい?」
「ふっふん、ヤンキーなんだ、誰が謝るもんか。」
「全くあんたね…?すみません、うちの萌々香が、なっ!」
「そもそもこういう時は…どっちとかじゃなく…なっ!」
萌々香と私が思わずビビった、なぜなら萌々香がぶつかった女の人は目つきが凄く悪く、この人こそ、ヤンキーだろって感じの人だったからだ!
「私は気にしてないよ。」
その人は立ち上がるとホコリをほろって、萌々香に手を伸ばした。
「立てる?」
「だっだって、萌々香!」
「聞いてる?」
「ごっごっごっ、ごめんなさいぃ〜〜!!」
萌々香は恐怖のあまりガチ泣きした!
「えっ!なんで泣いて!」
「持ち金全部渡しますからぁ〜!!どうかお命だけはお助けを〜!!」
「何の話!?」
それはみんなから注目されていた。
「可哀想、怖い先輩にたかられてるのね?」
「きっとそうよ、あんな小さい子を。」
「違います、違います!」
「そうです!悪いのはぶつかったうちの萌々香の方で!」
「ねぇ、君も違うって言って?」
「うわぁぁ〜ん!!」
「どっどうしたら!」
その後、なんとかみんなの誤解をといた私とその先輩は萌々香を泣き止ませた。
「グスンッ、グスンッ、ぶつかってごめぇんなしゃい…」
「いいよ、いいよ、気にしてないから、それじゃあね。」
先輩は悪くないのに申し訳なさそうに去って行った。私は萌々香にどう慰めてやればいいか、いいのが思いつかなかったので、これだけ言った。
「よかったね、萌々香、目立てて…?」
「こっこっこんなのあたいの考えてた目立つとは違うから〜!!」
萌々香のヤンキー道の始まりは大勢に泣く情けない場面を見られる所からとなりました。
「やっぱりにわか・ヤンキーだわ…」
にわか・ヤンキー・ガール! ぎゅうどん @yurilove277
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