漫才師鈴佐 ドラえもんの道具

命野糸水

ドラえもんの道具

「どうもー、鈴木と佐藤で鈴佐です。お願いします」


「突然なんだけどさ、佐藤、君ドラえもんは好きかね」


「そりゃ好きですよ。小さい頃は毎週見てましたから。金曜の夜が楽しみだったのも覚えています」


「ドラえもんってさ毎回ひみつ道具が登場するじゃないですか」


「そうですね、毎回のび太君がドラえもんに助けを求めてドラえもんがひみつ道具で助けてくれる。こういう流れでしたよね」


「佐藤はどう思ってたか分からないけれども、ひみつ道具の中にはこれいらなくねって思うものもあったでしょ」


「うーん、あったかもね」


「たとえばどこでもドアとか」


「おい、鈴木。それは違うだろ。どこでもドアは使えるだろ。どこでもドアを見て、あぁ僕も欲しいな。あれがあればどこでも行けるし、学校も遅刻しないで済むだろうなって思っただろ」


「確かにそれは思いましたよ。だけど抱えてるリスクを考えたらいらないなって」


「え?」


「例えばですね、今私が忘れ物に気が付いてどこでもドアを使い楽屋まで取りに行くとするじゃないですか。そうするとこの舞台上にはあなたとセンターマイクと扉が開いているどこでもドアが残りますよね」


「まぁそうなりますね」


「もしもあなたがどこでもドアの扉を閉めたらどうなりますか?私はすぐには戻れませんよね」


「すぐには戻れないかもしれないけどさ、数分で戻ってこれるだろ」


「この場合は数分で戻ってこられますけれども、ドアを閉めるという行動を私がどこでもドアを使って海外に行ったときにやられたらどうなりますか。私はパスポートを持っていないし持っていたとしても不法入国で捕まります」


「そこは事情を話せばどうにかなるだろ」


「言葉が通じない可能性もありますから不可能ですよね。あとドア自体が壊れる可能性もありますからね。そう考えると、どこでもドアはいらないですね」


「それは考えすぎだって」


「タケコプターも必要ないですね」


「え?」


「タケコプターって頭に付けますけど、あれ頭皮には影響ないんですかね。体重を一点で支えますから頭皮に相当な負荷がかかると思うんですけど」


「そこは帽子」


「佐藤は今帽子を被ればいいじゃないかって言おうとしたと思うんですけど、タケコプターを帽子に付けたら帽子だけ飛んでいくと思うんですよ。その場合タケコプターを使おうとした人は地面に落ちてさよならですよね。


タケコプターも故障とか電池がなくなる可能性もありますから、落下のリスクを考えるといらないですよね」


「ならタイム風呂敷はいらないな。あれあったらビンテージものが全てなくなるからな」


「あなた本当にドラえもんを見たことはありますか?タイム風呂敷は表面で包むと時間が早くなって裏面で包むと時間が戻る仕組みですよ。この効果があるのだからビンテージものが無くなるということにはなりません」


「もしもボックスはいらないよな。もしもの世界しか体験できないんだから」


「いるでしょ。もしもボックスがあれば永遠にもしもごっこが出来ますから。芸人はネタでもしも○○だったらといった設定を作ってコントや漫才をやりますから、実際にやってみて面白いか面白くないか一回試すことが出来ますから。


後勉強にもなると思いますよ。今あたりまえのようにあるものを一つ無くしてみただけでどれほど過ごしにくくなるか、もののありがたみを感じることも出来ると思いますから必要です」


「ビックライトはいらないよな。大きくなるだけだし」


「ビックライトはスモールライトもあればいいですね。大きくしすぎてしまったものを直す役割として使いたいですから。ただこれも電池が無くなりますから、誰かにビックライトやスモールライト用の電池を作ってもらう必要がありますね」


「ならあんきパンは?」


「いる」


「ほんやくこんにゃくは?」


「いる」


「スペアポケットは?」

「いる」


「なら鈴木が一番いらないと思う道具はなんだよ」


「地球破壊爆弾」


「それは俺もいらない。どうもありがとうございました」


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