3.

「おきないかな〜⋯⋯」


寝息を立てているらしい、かすかに鼻息がかかる。

その時、開けたままの口がぱくぱくと動いた。

さっきとは違う動きで何かを言ったのだけは分かった。

もしかしたら夢を見ているのかもしれない。何を見ているのだろうか。"たーちゃん"のことだから、ままが出ている夢を見ているのだろう。

そう思うのは、ほっぺが上がったように見えたからだ。

内容は分からないけど、楽しそうで良かった。

でも、ぼくが出ていたらいいのにと思ってしまう。


「⋯⋯⋯」


上がっているらしいほっぺをそーっと触った。


ふにっ。


「おお⋯⋯っ」と歓声を上げそうになるのを無理やり口を閉じて堪えた。

何かの気配を感じたのか、不快そうに眉をぎゅっとし、むっと口を閉じていた"たーちゃん"だったけど、眉を戻し、また口を開けていた。

気がつけば止めていた息を吐いて、改めて起きてないのを確認した後、自分のほっぺを触った。


ふに。


「⋯⋯なにかちがうような」


うーん、なんだろう。

その違いは何なのか、また"たーちゃん"のほっぺを触ろうと、指でそーっと触った。

と、その直後、眉間にシワを寄せた"たーちゃん"がゆっくりと目を開けた。


あ、おこしちゃった。


「おはよ」

「⋯⋯⋯」

「たーちゃん?」

「⋯⋯⋯」


機嫌悪そうに眉を潜めたまま目を擦る。

そのままずっと天井を見ていた"たーちゃん"は、やがてゆっくりと目を動かした。


「ま⋯⋯ま⋯⋯」


開口一番に発したたどたどしい言葉は"たーちゃん"らしいなとふっと笑っていた。

と、不意にこちらを見たかと思うと、「⋯⋯ま⋯ま」とぼんやりとした目で言ってきた。


"たーちゃん"は起きてすぐには目が覚めないようだ。


新しい発見だと嬉しくなった。

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