無力な天使、苦しむ悪魔

天使は失格になった後、下界に降り立った。答えを求めて天界に昇ってから、既にひと月が経っていた。


 下界にはやはり、人気がなかった。


 街は荒廃していた。


 生活感がなく、ところどころ建物は崩れ、木が倒れて、道がが瓦礫に埋もれて。


 そこにあったのは、人が争った形跡。多くの人が命を落とした、跡。


「何故だ· · · · · ·。何故· · · · · ·!」


 天使は涙を零した。


「王は死んだと、いうのに」


 そこに、足音が近づいて。


「王が死んだから、国は壊れた」


 立っていたのは、目のない悪魔だった———。


🪽


 悪魔は神に尋ねた。


「何故あの少女は、死ぬ必要があったのでしょう?」


 神は、やはり冷たい目で彼を見つめて。


「あの少女自身には、罪はない。しかし、あれは王の妾の 娘。生かしておくことはできぬ」


 神は、見越していた。今の王政は長く続かぬと。王が倒れた時その血を継ぐ者がいれば、革命は必ず失敗する。


 何も言えない絶望。


 ———また誰も、助けられない———。


* * *


 下界に降りてすぐ、悪魔は少女の家に向かった。


 しかし、そこにあったのは瓦礫の山だった。そして、少女の亡骸。


 誰にやられたのか、殴られ、杭に鎖でつながれて。そうやって甚振られて、死んでいた。


「また、俺は、誰も———」


 言葉に、ならなかった。


 その顔に浮かぶのは、———憎しみと、絶望。


🪽


 フラフラと街中を歩く。


 争いは、王の側近———カイザルが恐怖政治を行った為に起きた。この街は、最初の戦いで消えた。———そう、悪魔にきいた。


「俺は· · · · · ·どうすれば· · · · · ·」


 悪魔は、哀しそうに天使を見ていた。


「俺等は、何もできない」


 手を下した罪の数々を、彼は背負っていた。


🪽


 彼等は、ゲリラに加わった。しかし、仲間は減っていくばかり。———最新の武器を持った新政府軍には、敵わない。


 もう、何故戦い始めたかさえ覚えていなかった。


”ドーン”


 また、新政府軍が攻撃をしかけてきた。———もう、終わりにしよう。


 嗚呼。

 世界は結局、変わらない———。


「お2人さんは隠れてて!」


 仲間の青年が叫ぶ。


「それでは、君が· · · · · ·」


 もう誰にも、死んでほしくない。


———だからいっそ、死んでしまおうと思った。


「いいから! もう、とっくに覚悟できてるよ」


 哀しそうに微笑んで———。


「全員突撃!!」


 青年に入っていてと押し込まれたクローゼットの隙間から、外をのぞくことしかできない。


 お願いだ。死なないでくれ。俺を、守らないで。




———それでも、彼等は死ねない。

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失格 雨宮翠紗 @rulina

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