E p i s o d e .2
ーーー私は悪くない。
ーーー生徒会長が悪いんだから。
ーーー秋月先輩を救えるのは私しかいない
空き教室で2人きり。今日も俺は 倒れそうになったところを美希に助けてもらった。
「ゆきと、少しは落ち着いた?」
優しく髪を撫でられる感触に安心し目を閉じる。
友達と話している最中だったとしても美希は
俺に少しでも異変があれば優先し助けてくれる。
その優しさに甘えてしまっている自分が嫌いだった。
「……俺も、美希のために何かできたらいいのに」
生徒会長をやっているのも 勉強や運動を頑張ってるのも、
共働きの両親の負担にならないようにという自己満足からだ。
そうじゃなくて ただでさえ、美希の負担になってしまっている俺が少しでも
美希の役に立てることをしたい。
もちろん 頼らないのが1番だが、1度それで美希を泣かせている。
流石に2度も泣かせる訳には行かない。
「ボク的には甘えてほしいけどなぁ。」
甘えるなんて さらに美希の負担になるだけだ。
「甘えてほしいの?俺に」
美希は悩むこともなく頷き頭を撫で続けながら言った。
「ゆきとのこと大切だから。それに……」
少し間を空けて 美希はいたずらっぽく笑った。
「ゆきとが甘えてるとこ絶対赤ちゃんみたいで可愛いだろうし。楽しみだなぁ〜」
赤ちゃんみたいって、なんだよ。
そもそも甘える前提なのか。
いろいろツッコミたいところがあるが美希の楽しそうな笑顔を見てると
どうでもよくなる。
「そのうち、気が向いたら。」
しばらくして 完全に落ち着き俺と美希は互いの教室へ戻る。
教室に入ると騒がしかった声が急にピタリと止まる。
時計の秒針の音だけが 空気を読んでいないように鳴っている。
自分の席につき 小さな声で 隣の席の子にたずねた。
「何かあったの?」
答えたのは隣の席の子ではなくクラスで1番目立つ女の子。
「……生徒会長、秋月のこといじめてるんだって?」
あぁ、この雰囲気は異質なものを避けるためのものか。何となく冷静な自分がいた。
「そんなわけないよ。秋月くんに勉強教えてただけだし」
美希に毎回言われている約束。
「何してたの?」と聞かれたら勉強していたと答えること。
「でも、噂になってるよ?生徒会長が秋月をいじめてるって」
そこから 1週間もしないうちにその噂は色々な形に変わり校内中に広まった。
「生徒会長って 秋月先輩のこといじめるんだって」
「実は朝宮って 秋月のこと中学の時パシリにしてたらしくて」
でも、1番濃く 信じられている噂は
「朝宮先輩って、秋月先輩のこと よく八つ当たりするために
空き教室連れて行ってるんだよ。それでたまたま殴った時に
できた傷があれだったみたい」
という ものだった。
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