神殺しの少女

みゆり

プロローグ

その昔彼の人は「神を殺した者」の烙印を押されていた。批判の波に流され、誰も彼の人に寄り添うことも話を聞くこともしなかった。

それは、世界の破滅への道だと知らずに。


あの様な馬鹿げた言い伝えが本当だと知らずに。

侮って誰も彼も信じなかったあの日の結末。

それを知るものは彼の人だけだと言うのに。

誰もが知りたがった結末を、聞いておいて「夢物語」と称して、信じなかった。

 それ故彼の人は、人間を信じなくなり、他の誰も信じなくなった。

 此れは世界と民の為に闘ったのに信じて貰えなかった一人の「少女」の物語である。


その昔、こんな伝説がまことしやかに囁かれていた。


『神を殺めるもの、世界に平和を齎す礎となろう。』


この伝説は何時になっても、叶うことがなかった。批判に晒されたこの伝説は虚言だと言い伝えられていった。

それから二千年が経ち、伝説は本当となった。

更にそれから百年が経ち、本当となった『伝説』

は嘘だと、誰も彼も信じなくなった。

「本当」のことを知っているのはもう、誰も生きていない—―。はずだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る