田舎の島を舞台にしたギャルゲーの悪役令息に転生した俺、破滅エンドを回避するために頑張ってたら主人公がここへ引っ越してくる前に全ヒロインを寝取ってしまった件について

鮫島 鱗

第1話 12月31日

 令和七年十二月三十一日


 ついにこの日が来てしまった。

 今日で俺は二十九歳になる、大晦日が誕生日なんだ。


 だが、誕生日だというのにスマホの通知音は一度も鳴らない。

 友達からも、両親からも。


 ……恋人から、なんて言うまでもないか。


 そもそも俺には今まで一度も彼女ができたことがない。


 最初から諦めていたわけじゃない。

 何度も作ろうと努力してきたつもりだけれど、その結果はどれも無残なものだった。


 そして、追い打ちをかけるように先週仕事までクビになってしまった。

 責任感を持って真面目に働いてきたつもりだっただけに、ショックは大きい。

 何がいけなかったのか、その答えは今でも見つからないままだ。


 どうしようもない憂鬱な気分を少しでも紛らわせたくて、俺はスマホを手に取り、なんとなくネットを眺めていた。


 すると、昔大好きだったギャルゲーのリメイクが今年の夏にパッケージ版限定で発売されていたことを知る。

 忙しくてまったく気づいていなかったが、まさかあの作品が令和の時代にもう一度蘇っていたなんて。


 知らない人に説明すると、サマーバケーションとは夏休みに田舎の島に引っ越してきた主人公が、島で暮らす五人のヒロインたちと恋愛をしていくギャルゲーだ。


 登場人物はみんな個性的で今でも鮮明に思い出せる。中でも悪役令息として登場する金城貴かねしろたかしは別格だった。


 彼の救いようのないクズっぷりは当時から話題で、プレイヤーたちの間ではネタにされ、いつしかネットミームにまでなっていた。

 それもまたこの作品が俺の心にいつまでも残り続けている理由のひとつなのかもしれない。


 正直、真冬に夏をテーマにしたゲームを遊ぶのは季節外れだが、この凍えるような現実から目を逸らすにはむしろちょうどいい。


 そう思った瞬間、気づけば俺はコートに袖を通していた。


 今日は今まで不器用なりに頑張って生きてきた自分にささやかな誕生日プレゼントを買ってやろうと思う。


 それじゃあ今からゲームショップへ出かけてくる、楽しみだな。

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