AI時代の到来とともにAIが社会活用されるようになった一方で、AIによるディープフェイクやAIなりすまし詐欺などのAI汚染も現代社会に浸透し、社会問題を生み出しています。
現代社会の延長上にある近未来で国家認知署名機構の捜査官を勤める主人公、柏木修一の視点を中心に書き綴られたこの小説は、倫理的視点からAI利用について考えさせてくれるだけでなく、AIを利用していく中で人としてどうあるべきかを読み手の心に問いかけ、インターネットが普及する前の本を通して文章を学んだり、創作世界を楽しむ中で意志疎通の手段として言葉を使うようになった本来の人としての在り方にまで遡って、深く考えさせてくれる秀作です。
SF小説って「専門用語がいっぱいで難解、理数系」なイメージですが、星崎さんのSFは不思議にするっと入ってきます。表現力なのでしょうか。
洗練された無機質な雰囲気と、人物の温かさのバランスがほどよく、普段SFを読まないひとでも楽しめると思います。
最後は思わず「ふふっ、そう来たか……」と笑ってしまう終わり方でした。
久しぶりに「ウメワサビ」、食べたくなりました。
AIユーザーとして、たくさん感想を書きたいのですが、おそらくこのスペースでは語りきれません。残念……。
次回作も楽しみです。「ウメワサビ」の出演にも期待してます。
国家機関である著作物の承認機関に勤める男性主人公は、いつものように著作物を検査していた。パソコンが著作物がAIか人間のものかを判別し、指標となる数字を弾き出す。味気ないそんな日常で、唯一人間的な行為と言えば、コーヒーを淹れるくらいだった。
そんな主人公は「ワードレスバザール(言葉が失われた場所と言うことだろうか)」というSNSを見ていた。そのSNSの中に、詩を定期的にアップしている井上カナという存在があったからだ。反承認機関の態度が多く見られるユーザーの中でも、井上カナは異質な存在だった。突然そこに現れた当初は未熟な詩を書いていた井上カナの詩は時間と共に上達し、それは人間的な成長に見えた。しかし、ある時を境に詩は変化した。果たして、この井上カナという存在は何なのか?
その謎を追って主人公は恩師や上司、そして彼らと関わっていたはずの男性にコンタクトを取り始めるのだが……。
AIが書く文章は正義か、悪か?
もしも著作物が読み手に感動を与える物ならば、AIが書いても人間が書いても、その真正性は守られるのではないか?
人間が書く文章とAIが書く文章の間に何があるのか?
哲学的な文章でつづられる、言葉が死にかけた世界で、足搔く主人公の物語。
書き手にとってだけでなく、読み手にとっても有益な一作です。
是非、是非、ご一読下さい。