ハッピーメリークリスマス!

スカイ

第1話何故なら!私はサンタクロースだからだ!

12月24日、俺の人生で最も重要な作戦の日。だがハゲ将軍(部長)は容赦なく「これ、今日中ね!」を三連発してきやがった。


いつもなら「ああ、君?いいよ。帰って!別に仕事が片付いているのなら」とか言って窓際送りしときながら、今日に限って仕事をバカみたいに増やして!っていうか全部お前のだろ!全部振りやがって!


六歳の愛娘にとって、今日は人生初めてパパがサンタに会える日なのに。いつも「勉強しろ」しか言えない俺が、初めて父親らしいことをする日なのに。


一旦、"M"に報告しよう!

スマホのメッセージアプリで"M"に連絡した。


「緊急事態発生!本日残業確定であり。およそ二〇時まで終わらせる予定であり。パーティ参加不可」


数秒後、返信がきた。


「死ね」


何故か自分のスマホから殺気まで感じる。冬の寒さより寒い悪寒までする。


俺は、大量の仕事の山を潰しまくった。修羅の如くありとあらゆる書類という書類を、中には会社にとって大事な書類もあったが気にも止めなかった。とにかく早く仕事を終わらせなければいけない!なぜならば"M"(ママ(嫁))に殺されかねない。それに人生初のサンタクロースになる日なのだ!


大急ぎで仕事を終わらせたが、結局、夜の9時になってしまった。


すぐにMに報告すると——


「了解!プランBでいく!ターゲットは部屋に連れていったわ。」


プランBか。ブツは例の場所に置いているはずだ。とりあえずターゲットが確実に眠ってからが勝負だ。


「任務了解!ターゲットが眠りについたら報告求む。」


一旦、24時間営業のラーメン屋へ行き待機することにした。


11時になってもMから連絡がまだこない。連絡をとるとターゲットがたった今、寝たところらしい。


ターゲットが「サンタさんに会うもん!パパは生きてるか死んでるかトドになってるかでわからないからパパはどうでもいい。けどサンタさんはプレゼントくれるもん、パパと全然違う、パパはいいから。サンタと遊びたい!」と駄々をこねたらしい。


Mから一言——


「仕事が忙しいのわかるけど、子供とどの様に接したらいいかわからないからって相手にしなくて『勉強しろ』しか言わない、親としてどうなの⁉」


ぐ~の根も出ない。


マンションに到着して周囲を警戒しつつ階段で"サンタクロース"に変身してプレゼントを握りしめて家に向かった。チャイムを鳴らしてしまうとターゲットにバレてしまう為、メッセージアプリでMに報告した。


静かに家の鍵が開けた音がした。


家に入りママに「寝ている?」と小さな声で聞くと「お帰りなさい。寝てるわ、もう12時になるからゆっくりやってね!」と小さな声で言った。


リビングの隣が子供部屋になっている。ゆっくり歩いて子供部屋のドアを静かに開ける。


(今の俺はサンタだ、今の俺はサンタだ、今の俺はサンタだ、今の俺はサンタだ、今の俺はサンタだ、今の俺はサンタだ、今の俺はサンタだ、今の俺はサンタだ、今の俺はサンタだ、)


自分に言い聞かせながらターゲット——いや"愛する娘"に近づき、枕元の横にあるベッドライトの小スペースの場所にそっとプレゼントを置いた。


Mission completed!


やっと父親としての役目を——その瞬間、タンスの角に小指が激突した。


「ぎゃあああああああ!」


絶叫。

ママが扉を開けた。

娘が目をこすりながら起きた。


終わった。


いや、始まった。


娘が目をこすりながら「サンタさんだ!」と言い近寄ってきた!どうすればいいんだ!ママが「よかったね~!サンタさんが来てくれたよ~!」とフォローしてくれた。


と、とりあえず「ハハハハハハハハ、そうだ!私は、サンタクロースだ!」と言いそのまま「愛ちゃんがとても良い子だったから、プレゼント届けにきたよ!」というと愛娘が物凄く喜んでいる。


今までこんなに喜んでくれた事があったんだろうか。誕生日プレゼントの日はいつも、プレゼントを部屋に持っていって部屋にこもってお礼の一言だけ言ってほとんど話してくれない。まるで"勉強しろ"と言われないために逃げられていた。それどころか、勉強道具しかプレゼントしてないから余計に白い目で睨まれていた。ママからも「プレゼントが勉強道具ってなんなの⁉もうバカなの」と呆れられてしまっていた。


愛娘の喜ぶ顔を見ていると幸せだ!


ママが「ほら、サンタさんに"プレゼントくれてありがとうございます"と言ってバイバイしようね!」というと愛娘が今まで見た事がないくらい悲しい顔をしていた。


小さな声で悲しそうに言うと、俺は「良い子にしていたらまた来年もプレゼント届けにあげるよ!ママの言うことちゃんと聞くんだよ」と言うと愛娘は満面な笑みで「はい!良い子にしてお母さんの言う事、ちゃんと聞きます」と言った。


私はそれを聞き「サンタさんと約束だよ」と指切りげんまんして玄関へ向かった。


すると「えっ!玄関から帰るの?サンタさんは煙突とか窓から来るんじゃないの?」


そうだった!娘はまだ六歳、ピュアだ!純粋なピュアな心を裏切ってはならない!


(やばい、考えてなかった!でも娘の純粋な心を裏切れない!)


「そうだよ!」


一言いってベランダへ行き、娘を見た。キラキラした瞳でこちらを見ている。


「君はとても賢くて良い子だ!何故なら私は!」


ベランダから羽ばたくように飛んだ。


---


翌日


医者「よくもまあ、10階から飛び降りて全身複雑骨折ですみましたね。普通は死んじゃってますよ」


私はそんな医者の言葉に耳を貸さず、包帯で全身グルグル巻きになった状態で愛娘の喜んでいる姿を思い出していた。


医者「なんで、あんな事したんですか?」


私「なぜなら私はサンタクロースだからだ!」


医者「はっ?」









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