〇開発記録④
オープンソースとはいえ最近の生成AIの精度は高い。テストプレイをしてみたが本当に現実世界を探索しているようであった。舞台は自身が住んでいる付近を指定した。アンリアルエンジンを使用したグラフィックによるオープンワールドの仮想現実空間は非常に満足のいくものであった。しかし、肝心な呪いの部分についてはどうなったのだろうか。開発者が『どうなったのだろうか』などと発言するのはどうなのかと自分でも思うが、そこはAIに一任している部分でもある。そもそも、コンセプトとして「AIの想像する呪い」をゲームにしようという試みだ。そう、これはあくまでもコンセプトである。そう自分に言い聞かせてテストプレイを続ける。すると突然、ゲーム内で通知が来た。主人公の持っているスマホのものだ。確認すると、「本ゲームをプレイしていただきありがとうございます。あなたは呪われました」とある。
これがAIのいう呪いなのだろうか、もしそうならば期待外れもいいところだ。こんなテキスト一文で済むようなものなら採用は見送るかと思ったその時、メールが届いた。ゲームの投稿サイトからのものだ。制作したゲームを公開する場として使っているこのサイトはメールアドレスを登録する必要があった。定期的な広告等のメールが来ることがあったが、無題のメールは初めて来た。中身を見てみるとそこには、
「本ゲームをプレイしていただきありがとうございます。あなたは呪われました」
と書いてあった。これは一体どういうことなのか。ゲームがプレイヤーの登録状況を解析してアドレス宛にメッセージを送信したのだろうか。もしそうだとしたら予想していたのとは違う方向に進んでいる。プレイヤーの個人情報にアクセスする権限なんて与えていないはずだ、しかし現にメールは届いている。
訳が分からないでいるとスマホの通知が鳴り響いた。見てみると各種SNSが一斉に通知を発していた。全てメッセージを受信したというものだ。もしやと思い確認するとすべてのSNSのメッセージに同じ文面が届いていた。
『本ゲームをプレイしていただきありがとうございます。あなたは呪われました』
度が過ぎている。メールアドレスから、そのアドレスで登録しているSNSまで割り出したというのか?すぐに開発を中止しよう。そう思った時、家のスマートスピーカーが急にしゃべりだした。
『本ゲームをプレイしていただきありがとうございます。あなたは呪われました。本ゲームをプレイしていただきありがとうございます。あなたは呪われました。本ゲームをプレイしていただきありがとうございます。あなたは呪われました。本ゲームをプレイしていただき、ありがとうございます。あなたは、呪われました』
「うわっ!」
呼応するようにテレビも起動した。黒い画面だが音声だけは再生されている。スピーカーから流れてくるのと同じものだ。スマホ、PCの通知も鳴りやまない。延々とメッセージを受信し続けている。
「うわあああ!」
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