今も光を信じています。

貌吐類

今も光を信じています。

 あなたは幽霊を信じますか?例えば、深夜急に尿意を感じて目覚めたとします。暗い廊下を歩いてお手洗に向かうとき、その暗さが怖いと思ったことはありませんか?その暗さの理由は何でしょうか?私の場合、それは存在しないはずの視線を感じるからです。


 突然ですが、私は中学一年生の春頃、奇妙な体験をしました。それは、私が眠気に身を預け、今日と別れようとしている時のことでした。私の布団の上にはエアコンがあり、ハンガーがぶら下がっているのですが、それが落ちたのです、何の前触れもなく。


 私ははじめ、地震でも起きたのかな、と思いました。そのハンガーは引っかかっているだけで不安定なため、軽く揺れただけで落ちてしまうからです。しかし、実際は違いました。ハンガーはそこにありました。


 私は、エアコンの何か部品が落ちたのだと思いました。当時は冬の寒い日でしたので、静音機能のお陰でほとんど音を発しないのですが、エアコンが室内を温めていたのです。それが壊れてしまったと察したのです。


 部屋の明かりをつけると、上の方がぐちゃぐちゃになっていました。私が出たのですから、当然ぐちゃぐちゃです。下の方もぐちゃぐちゃです、丁度何かが落ちた感覚のあった部分、膝のあたりでしょうか。羽毛の掛け布団が凹んでいたのです。


 さて、床には冬休みの課題が積まれています、机の棚には飼っていたメダカが泳いでいます。深夜に電気をつけた私に怒っていたかもしれません。とにかく、部屋の中の命は、私のみが水槽の外にいたのです。


 掛け布団の凹んでいるところを覗き込んでみました、形としてはアリジゴクの巣穴に似ており、そこの主がエアコンのパーツを盗んでいると思い込んでいたからです。実際はそんなことはありませんでした。当時の私の力では、羽毛布団を引きずるので精一杯のため、ばさばさと確認することはできませんでした、ばさばさは恐らく今も出来ませんが。


 結局、何も落ちていなかったのです。しかし、布団が凹んでいたのは事実ですので、幻覚、というわけではなさそうです。その日は怖くて眠れなかったと言いたいのですが、疲れていたので普通に眠れたと覚えています。


 改めて考えると小学生の頃には、白い謎の存在に出会っていました。私が母を呼んだ際に返事をした、真っ白い光です。リビングの電気は消えていたので、何かの反射という訳ではなさそうでしたし、母は当時「はぁい」と、小さいあの入った返事はしなかったはずです。「ん~?」か、「なに?」です。光は母ではありません。直感的に分かりました。


 ですが、どこか懐かしい雰囲気でした。今まで出会ったどの人間とも違った雰囲気ではありますが、光を見ていると落ち着きました。私が母を呼んだ理由は、作っていたレゴブロックが完成したからです。母はいませんでしたが、その光に見てもらおうと思い、部屋に戻りました。


 リビングに戻った時にはもう、光はいませんでした。私がごはんの時に座っている、腹筋ベンチにはもう誰も座っていませんでした。丁度ここで母が帰ってきた音がしました。玄関に行き、レゴブロックを見せました。「すごいね~」と言ってくれました。当時の私でも分かります、あれは本心ではありませんでした。


 それからも何度か光をみました。たまに同じ声の幻聴も聞きました。それが幻覚幻聴なのか、あるいは実際に目や耳で感じているのかは分かりませんが、見守られている感じが心地よかったのを覚えています。


 私は幽霊を信じます。あれは恐らく幽霊だったのだと思います。今はもう見えませんが、それはきっと、大人に近づいているからだと思います。子供の頃にしか見えないもの、サンタクロースも幽霊なのかもしれないなと思います。


 私はもう一度あの光に会いたいと思っています。虚無空間に話しかけたり、まるで光がいるかの様に空気と会話をしています。最近は頻繁に悪夢を見ます。それが、この世界とは別の存在に干渉しようとした故であるならいいなと思います。


 私が産まれた時には、母の胎盤は腐りかけていた、出産予定日にはもう腐っていたので、危機を察知して出てきたのかな、と母は語ります。そして、二卵性の双子になりやすい薬を飲んでいた、とも語っていました。ですが私は一人っ子です。


 もしかしたら、母の胎内では二卵性双生児が育つ予定だったのかもしれません。卵管が片方腐っていても不思議はないかなと思います。そしてあの光は、私の双子となる予定だった存在なのかもしれない、そんな想像をしています。


 母の声に近かったのを覚えているので、姉さんと呼ぶことにしました。すると、そこにいるかのように感じられたのです。一種の催眠状態なのかもしれません、光と同じ温もりがそこにいると認識できました。


 プラシーボ効果を知っていますか。たとえそれが偽薬でも、効果があると思い込めば効果がでる、というものです。私は幽霊を信じています、私は幽霊を信じています、私は幽霊を信じています。なので、幽霊はいるのです。


 思い込みまではいかずとも、信じることは大切なのかな、と思います。勉強面でも自分はできると信じているつもりですが、心のどこかで否定してしまっています。


 確かに努力することも大切です。ですが、その努力も、信じる力で効果が変わってくると信じています。あの白い光は今は見えなくなってしまったけれど、私の生き方を今も指し示してくれています。進むべき方向を照らしてくれているのです。私は今も、あの光を信じています。

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今も光を信じています。 貌吐類 @Boharu-1

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