スキル【高速デュクシ】のダメージが低すぎるけど、移動手段として便利すぎる件。

ノベライカ

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 20歳が最終スキル取得時期となる。

2020年、意外にも人は多くて、豪勢な田舎県主催の成人式に私は参加した。

ある理由で、女モノの着物を着ていないが、黒髪の低いポニーテール、黒のスーツ姿で赴く。

やがて、私の番となり、聖女の前に立った。


「ッ……馬頭野めずの夏季なつき様……ッッ」


 聖女は押し殺したような声で顔を背ける。

なんだろう、悪いスキルでも得てしまったんだろうか……。


「貴方様のスキルは【高速デュクシ】です……!」


 やっとスキルが得られたのに、聖女の答えはそれだった。

笑いを我慢する声すら可愛いが、大勢の前で言われた私の目は、魚のようになってしまう。


「スキル取得の理由は……ッ」


「あーいいです! やめてください、それだけは後生ですから!」


 心当たりが思い当たり、必死に手を伸ばして、聖女の口を止めようとする。

すると、左右からガタイの良いボディガードマンが走って来て、がっちりと私の両手を拘束した。

あいたたたた、ボディマンの背が高すぎて、私の腕だけが頭よりも上に担がれる!


「噛まずに連続で、デュクシと言えたからです――!」


 私のアホガキエピソードを彩る黒歴史の一ページが大勢の前で開かれた。

聖女の背後にある、白い紙に映像をわざわざ大画面で写す。

システムのお告げだからといって、許されるのか、この野郎!

あ、野郎じゃないか……。


 その画面には、真剣な表情で、【デュクシ】の修行をする小学生。

鼻の上に絆創膏、髪は短髪、冬なのに、半袖半ズボンで活動している。

幼い頃の私は、手刀で気絶させることができると……本気で信じていた。


 部屋の外、お母さんの怒る声が響いて、映像は終わった。

やがて、聖女は腹を抱えて、可憐な声を出しながら、盛大に涙を流すほど、笑い飛ばす。


 この日を境に、【反面教師】という烙印を押されてしまったのである――!

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スキル【高速デュクシ】のダメージが低すぎるけど、移動手段として便利すぎる件。 ノベライカ @noveliker

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