お前になんか分かってたまるか

橙こあら

お前になんか分かってたまるか

「ちょっと、そこのあなた……」

「はい?」


 道を歩いていると、急に呼び止められた。相手は占い師。振り返って、すぐに分かった。この見た目は占い師。


「あなたは、もうすぐで死ぬでしょう……」

「……え?」

「私には分かります。他の人々には見えない未知なるものが……私には見えるので「んなわけねーだろ」


 予想外の言葉だったのか「は?」と占い師は驚いている。口元は布で隠されているが、口がポカーンと開けられているのはバレバレ。


「そんな力が本当にあったら、あんた今ごろこんなところにいるわけねーだろ。そんなすげー能力を持っている奴、誰もほっとかねーよ。大体、今知り合ったばかりのあんたなんかにオレの人生を分かってたまるか。オレは自分の未来は自分で切り開くから、余計なことすんなバーカ。そんな不確かなもんに、金なんて払うもんか。効果があるかどうかなんて分からないものなんかいらないよ。ノストラダムスの予言だって外れたんだ。占いなんて信じるかよ」


 オレに売り付ける気満々な怪しいグッズに囲まれ、胡散臭い水晶玉を目の前に置いている奴に言いたいことを言ってやったオレ。すぐに手を振って、その場から離れた。


「……チッ!」


 めちゃめちゃはっきりと舌打ちが聞こえたが、思い切りシカトした。

 そして……。


「先日、自称占い師の女が逮捕されました」


 数日後に見たニュース番組で、オレはあいつが逮捕されたことを知った。やはりインチキ占い師だった。オレはこんな自分を、一生信じていきたい。

 オレは本物だ。だからニセモノなんて、すぐに分かるんだ。

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