第12話 消えた道標
深層の通路をさらに進むキースと三匹の猫型モンスターたち。周囲は闇に包まれ、微かな光だけが石壁を照らしている。水滴の落ちる音が静寂を引き裂き、足元には古代文字が刻まれた床石が散らばる。
「……道標はどこだ?」
キースは通路の先を見渡す。ここまで来る途中、要所要所に設置されていた魔法の道標――安全な通路を示す目印――が、いくつか消えている。
ミィ、黒猫、シャオは周囲を警戒しながら、道標の残りを確認している。
「……まさか、消滅したのか。」
キースは小さく息を吐く。道標なしで進むのは危険だ。罠やモンスターの存在を予測する手段が失われたことになる。
「……でも、行くしかない。」
剣を握り直し、キースは猫たちに視線を送る。
三匹は小さく鳴き、頷くように体を寄せる。信頼できる仲間がいる――それが、唯一の安心材料だった。
【まねきねこ、発動】
【対象:ミィ、黒猫、シャオ】
猫たちは慎重に通路を先導する。微かな床の凹凸や壁の反射を感じ取り、危険な箇所を察知してキースに知らせる。道標がなくとも、三匹の連携で進む道は確保される。
しかし、通路の奥で異変が起きた。突然、壁の一部が崩れ、粉塵が舞い上がる。床の一部も軋み、踏み込めば落とし穴に落ちそうだ。
「……くそ、完全に迷宮化してる!」
キースは剣を構え、猫たちの動きを注視する。
ミィは左の壁際を伝い、黒猫は中央を確認。シャオは後方で警戒し、三匹が互いに体を擦り合わせながら、キースに進むルートを示す。
「……よし、行くぞ!」
猫たちの合図に従い、キースは慎重に一歩ずつ進む。床が軋むたびに呼吸を整え、猫たちの指示に従って道を選ぶ。
通路を抜けると、小さな広間に出た。中央には古代の祭壇があり、消えた道標の残骸が散らばっている。微かに光る破片は、かつての魔法がまだ残っていることを示していた。
「……なるほどな。」
キースは破片を見て、小さく笑う。道標は消えたが、痕跡は残っている。それを頼りにすれば、安全な道を確保できる。
猫たちは祭壇周囲を歩き回り、破片や微妙な光の変化を感知する。三匹の連携で、次の通路の安全が確認される。
「……ありがとう、みんな。」
キースは三匹の頭を撫で、微笑む。最弱と呼ばれた自分も、仲間の力で困難を乗り越えられる。
通路の先には、さらに深い迷宮が待っている。消えた道標に惑わされることなく、キースと猫たちは前へ進む。
「……行くぞ、ミィ、黒猫、シャオ。」
三匹は小さく鳴き、キースの周りに集まる。
「俺たちは、どんな迷宮でも、必ず進む――仲間と共に。」
深層の闇に包まれながら、最底辺探索者と猫たちの絆は、消えた道標よりも確かな道を切り開いていくのだった。
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