巨乳が弱点のモンスター ~『弱点変更』スキルでモンスターの弱点を性癖に変えたので、巨乳・貧乳・ギャルなどの美少女たちとハーレムパーティーを組んで無双します~

朔之蛍

第1話 『弱点変更』スキル

 世界中にダンジョンが出現して十年が経ち、世の中の価値観がひっくり返った。


 十年前、世界で初めて日本に現れたダンジョン、現在は最難関ダンジョン『東京ゼロ』と呼ばれるダンジョンに調査のために派遣された自衛隊の一部隊が持ち帰ったのは、手のひらサイズの綺麗な石だった。


 彼らはダンジョン内でスキルという力を授けられたと語り、銃火器のような現代の武器が効かないファンタジー世界のモンスターのような怪物と戦い、アイテムを入手するというまるでRPGの世界のような夢物語を語った。


 最初は頭がおかしくなったのかと疑われたが、鮮明な映像記録と現代の科学では解析できない未知の物質と技術を使った品々についに信じざるを得なくなった。


 そして、彼らが持ち帰った小さな石が実は魔導結晶と呼ばれる超貴重なアイテムで、この世界有数の大都市東京の電力全てをまかなえるほどの発電能力を持っていると認められた時、世界中が狂ったように熱狂し、そして今も現在進行形で狂い続けているのだった……。




「ついに、この日がやってきたな……」


 俺、宗谷大助は教室で小さくつぶやいた。高校に入学して数日が経ち、教室の中はまだお互いに打ち解けていない生徒たちが当たり障りのない会話を繰り広げて――いなかった。


 というより、教室に人がほぼいない。四十人分の机はあるのだが、せいぜい片手で数えられるほどしかいない。俺以外の生徒は食い入るように教科書や参考書を睨み、朝のホームルーム前だというのに必死になって勉強している。


 ついに日本の少子化もここまで来たか……いや違う。一応ちゃんと机の分だけ生徒は在籍している。では、なぜこんなことになっているのかというと、みんな自分のスキルの鑑定に行ってしまっているのだ。


 世界の国によって基準は違うが、日本の場合高校入学と同時にスキル鑑定とダンジョンへの立ち入りが許可されるので、みんな我先にと争って鑑定施設へと乗り込んでいったのだ。


 そして、勉強している彼らはというと、


「うっ、ううっ、何であんなごみスキルなんだよぉ……」


「くそぉ、これで人生逆転できるかと思ったのに、ううっ……」


 鑑定の結果、残念ながらしょぼいスキルだったようだ。すごいスキルを持ってダンジョンを攻略できれば、現代の科学技術など比較にならないようなアイテムが手に入るということから既存の科学や学問の価値が地に堕ちてしまい、今や勉学に励むのは負け組という時代になってしまったのだ。


 嫌な時代だなぁ……と思う反面、これは俺にとってもチャンスでもあった。だって俺、勉強も運動もあんまりできないしコミュ障だし異常なほどモテないし、今までの常識が通用する世界で成功する可能性なんてゼロに近かっただろう。


 だが! スキルの獲得は違う! 基本的に入手できるスキルは個人の資質によらず完全にランダムらしく、冴えないいじめられっ子がチートスキルを入手して億万長者になってモテモテになって調子こいて本を出版したりすることもあるくらい、人生逆転の可能性を秘めたイベントなのだ。


 じゃあ、なんで俺はすぐに行かなかったのかというと――うん、怖かったんだよ……。


 これでダメだったら、ずっとこんなつまらない人生が続くのかと思ったら、怖くて一歩踏み出せなかったんだ。


 だけど……それも今日で終わりだ! もう予約しちゃったし、行くしかないんだ! 勇気を出せ俺!


 というわけで、午前中だけ授業を受けて午後には早退してスキル鑑定所へと向かうことにした。スキル鑑定やダンジョン攻略など、冒険関連ならいくらでも休むことが認められるので、正直もう教育施設なのか何なのかよくわからない感じだ。




 そして、電車とバスを乗り継ぐこと数十分――


「ここが、スキル鑑定所か……」


 郊外にまるで要塞のようにそびえ立つ、ごつくて黒塗りの未来的な外観の建物。それがスキル鑑定所の印象だった。ものによっては、それこそ国や世界を変えるほどの力を持つスキルを鑑定する場所なだけに厳重な警備態勢が敷かれているようだ。


「嘘だああああああああっ! 俺がこんな雑魚スキルだなんて認めないいいいいいいいっ!」


「違う! そんなはずはない! 頼む! もう一回鑑定し直してくれ! ちょっ、やめっ! お、おい放せ!」


 敷地の周りでははずれスキルを引いて絶望して叫ぶ者や、鑑定のやり直しを求めて無理矢理敷地内に入ろうとして重武装の警備員に引きずり出される者など、阿鼻叫喚の騒ぎになっていた。


 うっ、覚悟を決めたつもりだったが、こういうのを目の当たりにすると足がすくんじまうなぁ……。


「すーっ、はーっ……よしっ!」


 深呼吸して心を落ち着かせ、気合を入れて一歩を踏み出した。


 敷地に入ろうとすると、郵送されてきたカードキーでの本人確認や手荷物及びボディーチェック、その他様々な検査をされようやく本人だと認められると、小さな個室に通された。


「こんにちわ、宗谷大助くん。担当の深谷です。では、早速鑑定に入りますね」


 挨拶もそこそこにパンツスーツ姿の若い女の人が俺にヘルメットのような器具を被せて、有線接続され机の上に乗っている機材の調整を始める。俺にとっては一世一代の大勝負なのだが、彼女たちにはただの流れ作業で日常の一環なのだ。この入学シーズンにはただでさえ人が多いだろうし、事務的にこなさないとやってられないのだろう。


 少し拍子抜けしながら、機材の調整が終わるのを待つ。この機材はダンジョンから大量に発掘されるということで有名で、まるでスキルを調べてダンジョンに来いと迷宮自体が誘っているようだと恐れられているいわくつきの品だった。その異様な曲線を描いた前衛的な形は確かに禍々しく、冒険者たちを死地へと誘惑しているようにも見えた。


「リラックスして目をつぶってください、すぐに終わりますからねー……はい、終了です」


 ええっ? ほ、本当にすぐだな! もうちょっと溜めてくれよ、こっちにとっては一生を左右するものなんだぞ!


 ドキドキしながら、担当の人の表情を窺う。彼女は驚愕の表情を浮かべ、鑑定結果を動揺しながら何度も見直し、急いでスマホで上司に連絡を――することもなく、あっさりと告げられた。


「あなたのスキルは『弱点変更』ですね。モンスターの弱点を変更できるというものです」


「は、はぁ……」


 な、なんだそれ? なんか微妙に地味な感じがするが、喜んでいいんだが悲しんでいいんだかわかんねぇ……。


「このスキルは……詳しい仕様はダンジョンで実際に使わらないとわからないようになっているみたいですね。そして、一度弱点を決めるともう二度と変更はできないようなので慎重に考えてください。どのような弱点にするかしっかりと決めてから、ダンジョンでスキルを発動することをおすすめします。では、次の方――」


「ちょっ、ちょっと待ってください! もっと詳しく説明してくださいよ!」


「いえ、こちらも予定が詰まっているもので……あっ、説明し忘れてました。『スキル』と唱えてみてください」


「えっ? はぁ……『スキル』。うおっ!?」


 急に頭の中に画面が展開してビビった。そこには『弱点変更』スキルについての説明が書かれており、俺の思考をなぞるように疑問に答えてくれているようだった。



Q:このスキルはどのようなものなのか、詳しく説明してくれ。


A:秘密♡ ダンジョンに入ってからのお楽しみです。



「全然説明になってねぇじゃねぇか!? いや、だからダンジョンに行く前にどういうスキルか詳しく――」


「あっ、時間切れです。それでは、冒険頑張ってくださいねー」


「ちょっ、まっ……おいっ!」


 奥からごつい黒服の男二人が現れ、俺を取り押さえると部屋から放り出された。くっ、アイドルの握手会のはがしじゃねぇんだからよぉ……。


 こうして自分のスキルがどのようなものなのかよくわからないまま、俺のダンジョン攻略の日々は始まった。


 まさか自分のスキルが……あんなもので。そんな感じに美少女たちと出会い、色々あってダンジョンを無双し、なんだかんだで日本でも有数の冒険者パーティーに成り上がっていくだなんて、この時はまだ1ミリも想像していなかったのだった……。

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