3−4

「あたりまえだけど、人間とサキュバスって、全然違うんだな。」

ぱっと見の見た目は、(羽や尻尾さえ見なければ)ほとんど変わらないのに、体の構造単位で違いが多い。


もちろんそれに即して文化や社会も変わってきて。案外、人種の違いにも似たようなことが言えるのかもしれないな、と感じた。


「ヤラシ区はサキュバスとインキュバスで大体は構成されているけど、他の地区では違うんだろ?」

「そだねー。いろんな魔物がごちゃ混ぜに住んでいる感じ!」

「また今度、他の地区も紹介するね!」


ラブはルンルンで寝囊の上でビョンビョンしている。柔らかそうな胸もそれに合わせてバインバイン動いて…目を合わせられない。


それはさておき。人間界の住民としては、姿形の違う存在が自然に一つの社会に溶け込んでいるのが少し不思議に思える。


「うーん、あんまりお互いを意識してないからかもね。」

「敵だとも仲間だとも思ってない。自分も他人も”ただの生命でしかない”って感じだからかもね。」


なるほどと思う一方で、その割には協調性があるような気もした。このあたりの住民が喧嘩や争いをしているのを、今のところ見ていない。


「ルールもルールだし、取り合いみたいな事が起こっても不思議じゃないけどな。」

「他所の地区だとまあまああるかも?でもここだと”楽しい事重視”だからねー。楽しくない事自体を避けているのかも。」


なんだか羨ましい。人間界は人間同士で醜く争っているのに。

もしかしたらここの生活はあらたな社会モデルの一例になるかもしれない。


が。自分はもはや帰るつもりはない。このノートを人間に共有する気もない。自分だけの満足にするつもりだ。


「そうだ!明日はちょっと面白いところに行くよー!」

「…劇場みたいなノリじゃないといいけど。」


だいじょーぶ、と彼女は言うけど、心配だ。であると同時に、また明日が楽しみだ。



『3日目、終了。少しずつ、彼女達のことが鮮明になってきた。』

『いつか人間のことよりも、サキュバスのことについての方が詳しくなれるかもしれない。』

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