閉店する店

☒☒☒

第1話

 小学校の近くの駄菓子屋が毎日閉店セールをしていた。

「閉店セールだからね。安いよ」

 っていうのが、店番のおばあちゃんの口癖だった。

 最初は「へえ、なくなっちゃうのか寂しいな」なんて思っていた。

 当時でも駄菓子屋なんて珍しくて、時代とともに消えていくものなんだろうなとなんとなく子供ながらに思っていたから。

 だけれど、駄菓子屋は一向に閉店しなかった。

 閉店セールも前もってやることもあるので、いつか閉店するのだろうと思いながら、実際に閉店するよりも私の身長が伸びてランドセルに背負われていたのがいつのまにかランドセルじゃ窮屈になるのが先だった。


 そんなある日、いつものように私は駄菓子屋で買い物をしていた。

 チューブにはいったゼリーだとか、シールと粉ジュースをみつくろっていると、店番のおばあちゃんが変な箱をくれた。


「閉店セールのおまけだよ」


 そういって渡された箱は寄せ木細工とでもいうのだろうか。

 色んな模様が組み合わさった箱だった。仕掛け箱とかいうやつだろうか。


「この箱を開けられたら、店のものなんでもあげよう」

「なんでも?」

「ああ、なんでもいいよ」

「店、全部でも?」


 私が聞くとおばあさんはいつも細い目を見開いた。

 そして、私はその夜一生懸命箱を開けようとした。

 しかし開かない。

 学校にいるあいだもこっそり開けようといろいろ試した。

 そして、なんとか一週間ほどかけてあけたとき、中には鍵がはいっていた。

 私は喜んで、駄菓子屋にいくと駄菓子屋は閉店していた。


 しまったシャッターには鍵穴があった。

 だけれど、いやな予感がした。

 そのカギをあけたら私が駄菓子屋に閉じ込められてしまうんじゃないかというような。変な妄想が一瞬脳裏をよぎった。


 それ以来私はあの店には近づいていない。


 きっと今もシャッターが閉まったままひっそりとあの場所にあるのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

閉店する店 ☒☒☒ @kakuyomu7

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画