路上占い、あれこれ153【占い師は営業夜曲の続きを語る】
崔 梨遙(再)
ふと目が覚めた時の掌編 1563文字 です。
僕は営業先の人事部長に、『崔さんは、元暴走族の総長やで』と営業先の会社の事務員さんに嘘を吹き込まれました。それを事務員さんは何故か信じました! そこで僕は事務員さんから電話番号を書いたメモを渡されました(お茶を持って来てくれた時に)。でも、僕は公私混同は嫌でしたので事務員さんに連絡はしませんでした。ですが、僕はいろいろありまして会社を辞めてフリーの求人広告屋(採用コンサルタント)になりました。
そこで、あの事務員さんのことを思い出しました。会社勤めをしていた時には考えていませんでしたが、辞めてフリーになったのですから、誘ってもいいかも! と思いました。実は、その事務員さん、長身スレンダー髪は少し茶色ロング美人だったのです。名前も知りませんでしたが、もらっていたメモに書いてある電話番号に電話をかけてみました。
『もしもし・・・? どなたですか?』
『こんにちは、崔です』
『あ! 崔さん? やっと電話かけてくれたんですね?』
『はい。もうフリーになりましたし』
『もしかして、デートのお誘いですか?』
『はい、ご迷惑でなければ』
『今度の土曜はどうですか?』
『いいですよ、何時にどこで待ち合わせます?』
『〇〇駅前に〇〇というビルがあるんです。その前に〇〇時とか?』
『いいですよ、じゃあ、それで』
電話を切ってから、僕は考えました。彼女は「元暴走族の総長だった僕」に興味を抱いています。やんちゃな男性に対する興味で僕に接近してきたのでしょう。ここで、僕が「暴走族ではないよ」と説明したら、きっと彼女は冷めてしまいます。それなら、ここは「元暴走族の総長」を演じるしかありません。
『待たせてごめんなさい!』
『ううん、待ってないよ。大丈夫』
『うわ、それが崔さんのファッションですか?』
『うん、変かな?』
悩んだ僕は、黒のタンクトップに黒のスーツ、ネックレスにブレスレット、そしてオールバックの髪にサングラスという姿でした。
『いえ! いいと思います! さすが元暴走族の総長さんですね!』
(マジ? これでええの? まるでVシ〇マの人なんやけど)
『まるでVシ〇マですね!』
(あ! 言われた。まあ、第一関門突破だ)
『ほな、食事に行こうか?』
『はい!』
『良い店ですね』
『ここら辺にはあまり来ないから調べたんだけど』
『で、崔さん、暴走族ってどんな感じなんですか?』
『いやあ、僕等の頃は、もう族なんて流行らなくなっていたんやけどね。族の数も少なくなっていたし。まあ、喧嘩よりも走りを楽しむチームやったで』
『抗争とかは?』
『まあ、たまにはあったね。族と族がぶつかると、仕方ないよね』
『崔さんは、強かったんですか?』
『普通やったで。柔道と空手は習っていたけど』
『えー! すごーい! じゃあ、喧嘩もしたんですか? 総長同士のタイマンとかあったんですか?』
『うーん、それもあったけど、やっぱり乱闘になるよねー!』
『うわ、すごい! 強いチームだったんですか?』
『普通やで、普通。基本、走りのチームだったから。族っていうよりもチームって感じかな? レーシングチーム』
『いいなぁ、私、ワイルドな人に憧れてたんです。崔さんみたいにワイルドな人』
『どうする? ワイルドな男と付き合ってみる?』
『はい! 私、崔さんとお付き合いします』
『じゃあ、ホテルに行くことになるで。僕は身体の相性を重視してるから。もしかすると僕が君を満足させられないかもしれないし』
『うーん、いいですよ。相性は大切ですからね』
『じゃあ、行こうか』
『崔さん、ベッドでは紳士なんですね』
僕の腕枕で彼女(麗華)が言った。僕は微笑みながら考えていた。
(とりあえず、元暴走族の総長ということで押し通すことができた。それは良かったが、さて、どこまでバレずに付き合えるだろう? まあ、いいか)
僕は普段神経質なのだが、何故かこういう時には楽観的になるのだった。
路上占い、あれこれ153【占い師は営業夜曲の続きを語る】 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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