宮廷詩人は心を知らない

月見だんご

プロローグ

さむい。

吐く息が白い。

目に移るものすべてがゆっくりと過ぎ去っていく。


もうろうとした視界の中、目には雪がうつる。

真っ白な地面。

寒々しい裸足。


立っていた。

少女は立っていた。

吹雪の中。


ここがどこなのか

どうしてここにいるのか

わからない。

ただ、胸に抱きしめていた。

一本の羽ペンと一冊のノート。

それだけがぬくもりを与えてくれていた。


ボロボロの軍服に

ズタボロの手足。

でも痛みは感じなかった。

気づけば寒ささえ忘れていた。


感情のない機械はただ立っていた。

心をもたない少女。

でもその胸元には

あたたかい詩集が握られていた。




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