アフター/After ――死んだはずの私は、 成仏もせずに、 死後の世界を見て回ることにした。
揺籠(ゆりかご)ゆらぎ
第1話
アフター/After
――死んだはずの私は、
成仏もせずに、
死後の世界を見て回ることにした。
ここまでタイトル
第一話
あの日あの時、
世界は変わった。
……と思った。
でもたぶん、
世界は最初から、
そういうものだったのだ。
みんなが、
知らなかっただけで。
だから私は、知りたいと、
——そう思ったんだ
バイクを買って、二週間。
都会に憧れ(都会?)
千葉の二流の美術大学にすべりこんだ私、
摩訶不思議は(本名だから!ふざけてないよ?)
前々からコレに目をつけていたのだ。
中古のスズキ V-Strom のイエロー
このイエローちゃんが私のハートを射抜いた。
さっそく購入。
店員さんに
お・願・い
して安く買えたぞ、ふはは!
(なかなか美人なのだ。顔だけは)
身長百六十三センチ。
流れるような黒髪ストレートヘアをまとめるのは黄色いリボン
健康的な肌にスタイル抜群Fカップ!
(ほめろ!)
そうそうこのバイク!
スタイル抜群の私に、
さぞ似合うであろう。
ふへへ。
お前は今日から、
わたしの相棒だ♪
すりすりすり!
大学入学後から待ち望んだ長期休暇。
ようやくこのバイクで、
ツーリングにいくのである。
(ふんす!)
えーと、まずは?
スマホ? OK!
のーぱそ! ノート、ボールペン? OK!
スマホがあるのにノートは必要だ。
電池が切れても、
圏外でも、
書けるから。
芸大生あるある。
多分。おそらく。
しらんけど
あとは〜?
お茶におにぎり!
よし!完璧
(多分)
バイクの荷台のバッグに、
他にも色々、
ぎゅうぎゅうに詰め込み。
準備万端!
よし!
いくぞこらー!
私はるんるんで、
バイクにまたがる。
ぶるん♪ぶるん♪
無駄に回してみる。
おほー
きもちええー
そんじゃまぁ、いきますか。
私はアクセルをひねった。
ぶるるん、と
エンジンが軽く唸って、
身体が前に押し出される。
あー、いい。
これよこれ。
バイクってやつは。
風が気持ちいい。
ヘルメットの中で、
私は一人でにやけていた。
信号をいくつか越える。
建物が低くなって、
空が少し広くなる。
考え事が減る。
余計なことを考えなくてよくなる。
さて、まずは――
ん?
視界の端に、
小さな影。
猫。
あ、猫だ。
思ったより、近い。
!?
ブレーキをかける暇は、なかった。
反射的に、
ハンドルを切った。
その
瞬間。
ガンッ。
音と、
一緒に、
視界が
跳ねた。
身体が、
前じゃなく、
上に浮く。
あ、これ、
投げ出されるやつだ。
そう思った。
空が近い。
地面が遠い。
黄色が、
黒に、
ぐちゃっと混ざって――
――あ。
そこで、
世界が
止まった。
*
気づいたら、
私は立っていた。
道路の脇。
少し離れたところに、
倒れている黄色いバイク。
アフター/After
――死んだはずの私は、
成仏もせずに、
死後の世界を見て回ることにした。
ここまでタイトル
第一話
あの日あの時、
世界は変わった。
……と思った。
でもたぶん、
世界は最初から、
そういうものだったのだ。
みんなが、
知らなかっただけで。
だから私は、知りたいと、
——そう思ったんだ
バイクを買って、二週間。
都会に憧れ(都会?)
千葉の二流の美術大学にすべりこんだ私、
摩訶不思議は(本名だから!ふざけてないよ?)
前々からコレに目をつけていたのだ。
中古のスズキ V-Strom のイエロー
このイエローちゃんが私のハートを射抜いた。
さっそく購入。
店員さんに
お・願・い
して安く買えたぞ、ふはは!
(なかなか美人なのだ。顔だけは)
身長百六十三センチ。
流れるような黒髪ストレートヘアをまとめるのは黄色いリボン
健康的な肌にスタイル抜群Fカップ!
(ほめろ!)
そうそうこのバイク!
スタイル抜群の私に、
さぞ似合うであろう。
ふへへ。
お前は今日から、
わたしの相棒だ♪
すりすりすり!
大学入学後から待ち望んだ長期休暇。
ようやくこのバイクで、
ツーリングにいくのである。
(ふんす!)
えーと、まずは?
スマホ? OK!
のーぱそ! ノート、ボールペン? OK!
スマホがあるのにノートは必要だ。
電池が切れても、
圏外でも、
書けるから。
芸大生あるある。
多分。おそらく。
しらんけど
あとは〜?
お茶におにぎり!
よし!完璧
(多分)
バイクの荷台のバッグに、
他にも色々、
ぎゅうぎゅうに詰め込み。
準備万端!
よし!
いくぞこらー!
私はるんるんで、
バイクにまたがる。
ぶるん♪ぶるん♪
無駄に回してみる。
おほー
きもちええー
そんじゃまぁ、いきますか。
私はアクセルをひねった。
ぶるるん、と
エンジンが軽く唸って、
身体が前に押し出される。
あー、いい。
これよこれ。
バイクってやつは。
風が気持ちいい。
ヘルメットの中で、
私は一人でにやけていた。
信号をいくつか越える。
建物が低くなって、
空が少し広くなる。
考え事が減る。
余計なことを考えなくてよくなる。
さて、まずは――
ん?
視界の端に、
小さな影。
猫。
あ、猫だ。
思ったより、近い。
!?
ブレーキをかける暇は、なかった。
反射的に、
ハンドルを切った。
その
瞬間。
ガンッ。
音と、
一緒に、
視界が
跳ねた。
身体が、
前じゃなく、
上に浮く。
あ、これ、
投げ出されるやつだ。
そう思った。
空が近い。
地面が遠い。
黄色が、
黒に、
ぐちゃっと混ざって――
――あ。
そこで、
世界が
止まった。
*
気づいたら、
私は立っていた。
道路の脇。
少し離れたところに、
倒れているバイク。
黄色。
その横に、
人がいる。
あれ、
あのジャケット、
私のじゃん。
……あ。
そういうことか。
不思議と、
慌てなかった。
スマホは、
ポケットにあった。
画面、割れてない。
ラッキー。
とりあえず、
親に連絡しないと。
《事故った》
《ごめん》
送信。
既読は、
すぐについた。
*
お葬式は、
思ったより静かだった。
自分の写真が、
祭壇の真ん中にある。
あ、
これ、入学式のときのだ。
盛れてるやつ。
母は泣いていて、
父はずっと下を向いていた。
親戚の人たちは、
私のことを
「いい子だった」
と言っていた。
そうだっけ。
まあ、
悪い子ではなかったと思う。
多分。
私は少し離れたところで、
それを眺めていた。
私の席は、どこにもなかった。
成仏は、
まだしないらしい。
「さて、これからどうするかねー。
?そういえばスマホって今持ってるよね、はれ?というかこのスマホで、LINEして、え繋がるの?」
……。
そういえば。
あのとき、
私はスマホで、
普通にLINEを送っていた。
事故った、と。
ごめん、と。
あれ?
おかしくない?
だって、
あのときの私は――
トーク画面を開く。
やはり、
送信したはずのメッセージは、
ちゃんと残っている。
既読は、
あのときと同じまま、
ついていた。
「...おもろ♪」
どうやら私は、
この死後の世界を、
調べて回ることにしたようだ。
――摩訶不思議な話だけど。
1話完
【After/ログ01・追記】
とりあえずママにLINEを送信。
『あなたの娘は幽霊になりました✌️』
次回!
ママとパパは大混乱!
娘は双子だったのだ!?
※たぶん違います
お楽しみに
※このあらすじは次回に一切関係ありません。続くかは、神のみぞ知る
私のだ。
その横に、
人が倒れている。
あれ、
あのジャケット、
私のじゃん。
……あ。
そういうことか。
不思議と、
慌てなかった。
スマホは、
ポケットにあった。
画面、割れてない。
ラッキー。
とりあえず、
親に連絡しないと。
《事故った》
《ごめん》
送信。
既読は、
すぐについた。
*
あれから2日たった
お葬式は、
思ったより静かだった。
自分の写真が、
祭壇の真ん中にある。
あ、
これ、入学式のときのだ。
盛れてるやつ。
母は泣いていて、
父はずっと下を向いていた。
親戚の人たちは、
私のことを
「いい子だった」
と言っていた。
そうだっけ。
まあ、
悪い子ではなかったと思う。
多分。
私は少し離れたところで、
それを眺めていた。
私の席は、どこにもなかった。
成仏は、
まだしないらしい。
「さて、これからどうするかねー。
?そういえばスマホって今持ってるよね、はれ?というかこのスマホで、LINEして、え繋がるの?」
……。
そういえば。
あのとき、
私はスマホで、
普通にLINEを送っていた。
事故った、と。
ごめん、と。
あれ?
おかしくない?
だって、
あのときの私は――
トーク画面を開く。
やはり、
送信したはずのメッセージは、
ちゃんと残っている。
既読は、
あのときと同じまま、
ついていた。
「...おもろ♪」
どうやら私は、
この死後の世界を、
調べて回ることにしたようだ。
――摩訶不思議な話だけど。
完
【After/ログ01・追記】
とりあえずママにLINEを送信。
『あなたの娘は幽霊になりました✌️』
次回!
ママとパパは大混乱!
娘は双子だったのだ!?
※たぶん違います
お楽しみに
※このあらすじは次回に一切関係ありません。続くかは、神のみぞ知る
アフター/After ――死んだはずの私は、 成仏もせずに、 死後の世界を見て回ることにした。 揺籠(ゆりかご)ゆらぎ @yuragi-111
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