教師アリアは学園に潜む魔族を殺す
社会の猫
第1話 1人目の魔族
王立魔法学園メガロス。
生徒数30名。
教師数5名。
メガロス王国最高峰の魔法使いと、メガロス王国最高峰の魔法使い見習いが集まる場所だ。
そこでは、言語学や歴史などの授業ではなく超高度な魔法の訓練が日夜実施されており、メガロスを卒業すれば王国の重役になるのは確定といわれている。
……そのため、スパイもメガロスに入学していた。
人間と敵対する種族・魔族。
その魔族からの刺客を見分けるのも、メガロスの教師の仕事だ。
「貴方がフィーロの後任ですか」
立派な部屋の中。
老婆の教師が手元にある資料を見る。
その部屋はただ広く清潔なだけではない。机にも椅子にも窓にも最高クラスの防御魔法が施されている。
「私が校長のミエルです。どうぞよろしくお願いします」
「はい。新任教師のアリア……って、知ってるか。よろしくっす」
アリアはそう言うと口を大きく開けてあくびをした。
そんな失礼な態度をとられてもを校長は眉一つ動かさない。
「えぇ、知っていますよ。”魔族殺し”のアリア。ドルナー戦争で魔族を同時に100人殺した男」
「その話有名になってくれて嬉しいっすわ。頑張ってちょうど100人殺したんで」
アリアがひょうひょうと受け答えするのを見て、校長は
「なぜあなたのような化け物が教師になろうと思ったのか甚だ疑問ですね」
と疑問を口にする。
「理由は単純っすよ。フィーロが殺されたからっす」
アリアは当然といった様子で答えた。
メガロスの元教師フィーロ・アスフューロ。
その男はメガロスの教師になった間違いなく最強クラスの魔法使いであり、
「あいつ、俺のライバルなんすよ」
アリアの親友でもあった。
しかし、フィーロはメガロス内で何者かによって殺害された。
「まぁ弔いってやつっすね。フィーロを殺したやつを殺す。まぁ、あいつを殺せるぐらいだったらなかなか尻尾を出さないと思うっすけどね」
アリアの言葉を受け、校長は少し安心したような顔をした。
「貴方も人間なんですね」
「まぁ、魔族ではないっすよ」
数時間後。
もろもろの準備を終えたアリアは体育館の教壇前にいた。
周囲にはメガロスの生徒と教師が立っている。
「え~みなさんどーも、新任教師のアリアでーす」
その言葉を受け、生徒たちはざわついた。
「アリアってあの魔族殺しの……!?」
「ドルナー大戦で100体殺したやつか」
「ヒトってかバケモンのやつね」
場が緊張に包まれる。
アリアはある程度場が静まったのを見て、口を開いた。
「え~、いろいろ話したいことはあったんすよ。新任教師として意気込みとか、どんな教育をしていくよとか。本当にいろいろ……でもですね」
「一人の雑魚のせいで、台無しになりましたー」
ざわっ
次は教師も含めて場がざわつく。
「アリア先生。一体どういうことですか」
校長がアリアに聞く。
「えーっとっすねー……そこ。そこの腕組んでるお前」
アリアが一人の生徒を指さした。
「え?俺?」
指をさされた男はがっちりとした体つきの男で、名前をドンという。成績は30人中26位で、腕を組んでる以外は他の生徒とと何か変わった様子はない。
でも、アリアがその生徒に指をさした瞬間、その生徒の周りにいた生徒はドンから一気に距離をとった。
「お前、魔族のことを”体”で数えたな?俺たち人間は魔族も1人2人で数えるんだよ」
ドンはその指摘を受けても、表情を変えない。
「……本来魔族の数え方は体じゃないか。なにもおかしいことは言っていない!」
と言ってアリアに近付いた。
「いくらあのアリアといえど、難癖をつけるのは勘弁してもらいたい」
そして、アリアの目を正面から見つめる。
「あー、まぁそうだな。これじゃまだ違和感程度だ」
アリアが頭をかく。
「でもな、お前。ドルナー大戦っつーのは魔族側での呼び名だぜ?」
「」
ドンはポケットから小さいナイフを取り出し、アリアに向かって振りかぶった。
ダンッ!!
瞬間、ドンは地面にめり込んだ。
「ガハッ……」
ドンが口から血を吐く。
「弱すぎるな……」
アリアが小さくつぶやく。
「まっ、体格良いしな。近接戦闘に持ち込んだのはいいと思うぜ。でも、バレバレすぎるな。魔法を使う余裕がありすぎた」
アリアがドンの顔を覗き込む。
「まずは一人」
ドンは白目をむき気絶していた。
「じゃ、拘束しといてください」
そういってアリアは再び教壇の前に戻り、
「ほかの潜んでる魔族。次はてめぇの番だからな」
と言って体育館を後にした。
自室に帰る途中で、アリアは考える。
(これは……想像以上に数が多いかもな)
理由は一つ。
ドンの行動が異常に”捨て身”すぎたこと。
潜んでいる魔族の数が少ないならあんなにも大胆な行為には出られないはずだとアリアは考えていた。
「チッ……」
アリアは、今は亡き友の顔を思い浮かべて舌打ちをする。
「必ず、殺してやる」
アリアの目が鋭く光った。
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