宴会芸だと笑われた【誇張ものまね】が、実は神の業だった件〜囮として捨てられた荷物持ち、絶世の王女を救って「真の無双」を始める。今更戻ってこいと言われても、もう遅い〜
プロンプト作家
第1話 便利屋の終焉と、勇者の本性
「アレン、お前はここで死ね。それが唯一、お前がこのパーティーの役に立てる方法だ」
湿ったダンジョンの最奥。Sランク指定の魔境『終焉の奈落』。勇者リガスは、冷淡な声でそう言い放った。
俺の目の前には、山の如き巨躯を誇る『
「……何、言ってんだよ、リガス」
俺は背負った巨大なマジックバッグの紐を握りしめ、震える声で問い返した。俺、アレンは、このパーティーの荷物持ちだ。戦闘能力は皆無。持っているスキルは【誇張ものまね】。見た相手の動きを少し大袈裟に真似するだけの、宴会芸にもならないゴミスキルだと笑われてきた。
「分からないか? お前が囮になってこのバケモノを引きつけている間に、俺たちは脱出する。お前はただの荷物持ちだ。代わりなんていくらでもいるんだよ」
「でも、俺がいなきゃ予備の武器も食料も……!」
「はっ、そんなもん、また買えばいいだろうが」
聖女のルナが、さげすむような視線を俺に向けた。
「アレン、あなたのその『ものまね』、一度も役に立たなかったわよね? リガスの剣筋を真似しては転んで、私の祈りを真似しては鼻血を出して……見ていて惨めだったわ」
「……あれは、身体が追いつかなくて……」
「言い訳は見苦しいわよ。死ぬ時くらい、英雄を支えた誇りを持って消えなさい」
魔導師のゼクスが、俺の足元に
「……おい、何をする!」
「逃げられては困るからな。お前はここで、じっくりと食われろ」
彼らは一斉に転移結晶を砕いた。淡い光が彼らを包み込む。リガスが最後に浮かべた、嘲りを含んだ笑みが脳裏に焼き付いた。
「じゃあな、アレン。ゴミにはゴミらしい最期がお似合いだ」
光が消え、静寂が訪れる。残されたのは、呪いで動けない俺と、怒り狂った守護者の咆哮だけだった。
「……はは、そうか」
視界が赤く染まる。俺の人生は、何だったんだろう。あいつらのために泥水を啜り、重い荷物を運び、夜通し武器を研いできた。【誇張ものまね】で彼らの動きを研究し、少しでも役に立とうと、彼らの技術を頭に叩き込んできた。
守護者の巨大な拳が振り下ろされる。死が、目前に迫ったその瞬間。
《――条件を達成しました。対象による「完全な拒絶」および「絶体絶命の生存危機」を検知》
《隠蔽スキル【誇張ものまね】の制限を解除。真名解放……【
脳内に、無機質な声が響いた。
《これまで蓄積した数万の「観察データ」を解析。
《勇者リガスの『聖剣術』、聖女ルナの『神聖魔術』、魔導師ゼクスの『深淵魔術』……すべてを極致へと昇華。これより、再現を実行します》
視界が、一変した。世界から色が消え、すべてが「線」と「数式」に見える。 振り下ろされる守護者の拳。その軌道、質量、速度、衝撃波の伝播……すべてが手に取るようにわかる。
「……なんだ。あいつらの技、穴だらけじゃないか」
俺は一歩、踏み出した。呪いを、意識だけでねじ伏せる。
「【神意模倣】――『
俺の手には武器はない。だが、リガスが誇っていた奥義を「本質」から書き換え、極限まで研ぎ澄ませた一閃を、手刀で放つ。
ズドォォォォォン!!
守護者の巨大な腕が、紙切れのように切り裂かれ、背後の岩壁までをも両断した。
「……ふぅ。宴会芸にしては、少し派手すぎたかな」
俺の物語は、ここから始まる。
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