ペンネームの由来はペンギンを蒸す機械です。というのは嘘です。
人鳥暖炉
ペンネームの由来はペンギンを蒸す機械です。というのは嘘です。
どうも皆さん、こんにちは。人鳥暖炉です。
このエッセイでは、私のペンネームがどのようにして決まったのかという知られざる過去について語っていきたいと思います。
さて、皆さんはそもそも「人鳥」というのがいったい何なのかご存知でしょうか?
暖炉が何かは分かるけど、人鳥って何やねんという人も多いのではないかと思います。
別にもったいぶるような話でもないのでさっさと答えを言ってしまうと、「人鳥」というのはペンギンの漢字表記です。
ペンギンが好きだからペンギン由来のペンネームにしよ。<del>これぞまさしく“ペン”ネーム! HAHAHA!</del>
……そんな安直な考えのもと、ペンネームの苗字部分は決まったわけですね。
もっとも、ペンギンの漢字表記は実のところ「人鳥(じんちょう)」だけではありません。他にもう一つ、「企鵝(きが)」というものもあります。
ペンギンモチーフが多数登場するアニメ「輪るピングドラム」には「企鵝の会」というテロ組織が登場しますが、この組織の名前はこのペンギンの漢字表記から来ているわけですね。
そういうわけでペンネームの苗字部分を決める際、私には「人鳥」ではなく「企鵝」にするという選択肢もあったのですが、ここはあまり迷わず「人鳥」の方を選びました。理由はシンプルで、「企鵝」だと何と読んだら良いのか分からない人も多いだろうと思ったのですよ。「企」は「企画」の「企」だからまだ読めるとして、「鵝」なんて滅多に使わない漢字ですしね。
ついでに言えば、「きが」という読みは「飢餓」を連想させてどうにもイメージがよくありません。当時の私は大学にて任期付きで働く研究員で、数年後には食うに困っているかもしれない身分だったのでなおさらです(任期付きは今もですが……)。
その点、「人鳥」なら「人」も「鳥」もよく使う漢字だし、ストレートに「じんちょう」と読めるし、べつにイメージの悪い読みでもない。こっちなら全てOK、何の問題も無い……と、当時の私は考えたわけですが、後にこれが大いなる思い違いであると知ることになります。
まあ、その話は後ほどするとして、ここではいったん下の名前の方がなぜ暖炉になったのかという話に移りましょう。
実を言うと、ペンネームの苗字部分と名前部分が決まったのは同時ではありません。人鳥暖炉というペンネームを初めて使ったのは第二回星新一賞の応募時ですが、その前年の第一回星新一賞に応募した時のペンネームは「人鳥帝國」でした。なので、もしこの第一回で受賞していたら、私は「人鳥帝國」の名で世に出ることになっていたことになります。
しかし幸か不幸か第一回星新一賞には落選し(落選したのは不幸だけど、ペンネームが「人鳥帝國」にならなかったのは幸)、翌年になると「さすがに『帝國』は中二病過ぎないか?」と恥ずかしく思う気持ちが湧いてきたので、下の名前は変えることにしたわけです。
さて、第二回星新一賞に応募するにあたってペンネームの下の名前だけを考え直そうとしていた私ですが、ちょうどこの頃、あることで悩んでいました。
職場が、寒かったのです。
任期付き研究員なんて冬場も暖房無しの部屋で働かせておけ! 任期が三年なら、三年後に力尽きて倒れても構いやしねえからな! ガハハ!――みたいな感じの労働環境で働かされていたというわけではありません。なぜなら、これは夏の話なのですから。
要は、冷房がきつすぎたんですね。どのくらいきつかったかというと、夏場だというのにハクキンカイロを持って行っていたくらいです。
「大学の運営交付金が年々減らされとんのに無駄に電気代使って部屋を冷やしてんじゃねえぞゴルァ! 省エネって言葉を知らんのかオラァ!」
私は怒り心頭で、いつも冷房の温度をがんがん下げる人を怒鳴り倒しにいきました。
脳内で。
なにせペンネームは人鳥でも心は
「おやおや! ペンギンは南極のブリザードにも耐えながら子育てを頑張っているというのに、あなたは冷房の風にすら耐えられないっていうんですか? それでよく自分のペンネームに『人鳥』などと付けられたものですねぇ!」
「まあ、愛する我が子のために頑張っている本物のペンギンと違って、あなたには何もありませんからねぇ!」
「家庭もねえ! 彼女もねえ! 任期もあんまり残ってねえ!」
なんて酷いことを言うのでしょう。こんな罵詈雑言を思いつくなんて、きっと人の心が無いに違いありません。
しかし、ここで論破されるような私ではありませんでした。
「ペンギンがみんな南極のブリザードに耐えながら子育てしていると思ったら大間違いだが?」
そう、ペンギンというのは南極にばかりいるものではありません。実は南アメリカ、アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドと南半球のあちこちに生息しています。ガラパゴスペンギンに至っては、その生息地は赤道直下のガラパゴス諸島です。むしろ南極で子育てをするペンギンの方が少数派で、コウテイペンギンとアデリーペンギンくらいのものなのです。
皆さんも、日本の動物園や水族館でケープペンギンやフンボルトペンギンが屋外飼育されているのを見たことがありませんか? あれを見て、「南極で暮らすペンギンにとって日本の屋外は暑すぎるのでは?」と思った方もいるかもしれませんが、そもそもあれらのペンギンは南極原産ではないのです。
そして、そういった温帯産のペンギンの中には、日本の冬ですら寒いので冬場にヒーターが用意されるとその周囲に暖まりに来るものさえいるそうです。
私のこの見事な反論に脳内の敵はガックリと膝をつき、私は脳内で勝利の雄叫びをあげ、そして現実の職場は寒いままでした。
ここまで書けば、もうお分かりでしょう。「人鳥暖炉」というペンネームには、「人鳥がみんな寒いのが得意だと思うなよ! ヒーターで暖まりたい人鳥だっているんだ!」という私の魂の叫びが込められているのです。
……まあ細かいことを言えばヒーターは「暖炉」というよりは「暖房」なのですが、「人鳥暖房」だといまいち風情が無いし(?)、語呂も悪い気がしたので、そこは暖炉にしました。
この人鳥暖炉名義で初めて応募した作品は第二回星新一賞で最終選考まで残ったのですが、残念ながら落選しました。この時の作品「出ユーロパ記」はカクヨムでも公開しておりますので、気になる方は御一読いただけますと私が喜びます。
その翌年、今度はペンネームを変えることなく星新一賞に三度目のチャレンジをし、グランプリは逃したものの準グランプリを受賞することができました。これをもって、私は人鳥暖炉というペンネームで世に出ることとなったのです。
ちなみにこれ以前はウェブ小説のアカウントなども持っていなかったので、この時が正真正銘の初出になります。
さて、ペンネームがどのようにして決まったのかという話はここでおしまいなのですが、このペンネームを使うようになってから何年かした後、思わぬ問題が出てきました。それが序盤でも少し触れた、「人鳥」をなんと読むのか問題です。
前述の通り、このペンネームを考えた当時の私は「みんな『じんちょう』って読むっしょ」と軽く考えていたのですが、思いの外、「何て読むんだ、これ?」となる人の割合が高かったのです。
まあ確かに、個々の漢字をそのまま素直に読むとしても「じんちょう」だけでなく「ひととり」とも読めますし、湯桶読みとか重箱読みをして「ひとちょう」とか「じんとり」と読む可能性だってあります。昔話題になった漫才のネタ「鳥人」の読み方は「とりじん」でしたしね。
あと、西尾維新のファンなら「刀語」に登場する真庭忍軍十二頭領が一人、
この何て読むのか分からん問題に拍車をかけてしまったのが、私が特に深い考えも無くSNSやウェブ小説サイトなどのIDをPenguin_danroにしていることで、恐らくはこのせいで人鳥暖炉の読みは「ぺんぎんだんろ」なのだと思っている人が一定数いるようです。
今からでも色んなSNSやウェブ小説サイトのIDをJinchou_danroに変更しようか。
それとも、むしろ逆に正式な読みを「ぺんぎんだんろ」の方にしてしまった方が良いだろうか? 「じんちょう」って読みにしたのは素直に読んだらそうなるだろうと思っただけで、べつにその読みにこだわりがあるというわけでもないしな……。
いや、でも昔からの知り合いには「じんちょうだんろ」って呼ばれてるし、それに星新一賞の受賞作品集内でも「じんちょう・だんろ」ってフリガナ振られてるから今さら読みを変えるのも微妙か?
もういっそ、次に何かの公募に出す時はまた新しいペンネームを考えようか。
……などといろいろ考えてはいるのですが、結論はまだ出ていません。
おしまい。
ペンネームの由来はペンギンを蒸す機械です。というのは嘘です。 人鳥暖炉 @Penguin_danro
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