美少女になる箱

ツキシロ

美少女になる箱


それは、都市部の交差点のど真ん中にいきなり現れた。


約1メートル四方の、黒い箱だった。


調査官たちが派遣されて、安全を調べていた。


「あっ」


中に入った調査官が箱を閉じてしまった。すぐに開けたが……。


「お前……誰だ?」


「ん?それってどういう……あれ?」


調査官の制服を着た、可憐な美少女が出てきた。


実験してみると、箱の中に入った人は例外なくこうなった。


あっという間に世間に知れ渡り、一般人が利用するようになった。


最初は、美容の一環として。老婆やマダムが美少女に大変身する様子は、若い女性にも衝撃を与えた。女子高生すらも利用して話題になった。


「生まれ変わった気分です」


「箱に入ってから周りの人が優しい」


それを聞いたおじさんも次々に入り始めた。


その頃、舌足らずな高い声で誰かが言った。


「人に不快な容姿を見せるな。外見ハラスメントだ」


「まだ入ってないの?」


「箱未経験は頭がおかしい」


数十年後、外にいるのは美少女だけになっていた。


街には、肉体労働の求人票があふれかえっていた。


破裂した水道管や、崩れかけた建物を直す者は、もう誰もいない。


新生児を抱えた多数の美少女が、今日も行列をなして箱に並んでいる。

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美少女になる箱 ツキシロ @tsuki902

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