第34話
そういえばと、室内庭園をゆっくり眺めたいんだったと思い出した私は早速、リンジーにお願いしてルーシャンに許可を貰ってから探索する事にしました。
相変わらず手の加えられた花々は魅せる事を徹底されている。
美しく咲き乱れ、蕾の初々しさもある麗しい庭園だ。
最近は睡魔も落ち着き、抗わなければならない程でもない。
みんな心配してくれてたけど、こういう時もあると伝えたら納得はしてくれた。
「あ」
「どうされました」
リヴァの花が透明になってる。
もうそろそろなんだねー。なんて思いながら、今しか見れない透明な花びらを見つめながら問いかけてきたディアブロに答える。
「リヴァがもうすぐ顕現するねー」
「どのようなモノですか」
「…………え?」
あれ?世界共通…というか、人間世界共通だから知ってると思うんだけど…神々にも淫魔にも悪魔にも精霊にだって度々、通達してるし。
「リヴァ知らないの?」
「存じ上げません」
「たまに空にデカい生き物が突然現れるでしょ?」
「………暗黒の事でしょうか」
「え?なにそれ?」
「世界を蹂躙し、喰らいつくし、土地を枯らす未知の生物です」
ええ?最後に通達したのってだいぶ前だったっけ?もう一度、通達しておこうかな。
「暗黒の見た目が載ってる本、ある?」
「すぐに」
リンジーが急いで図書から本を持ってきた。
「こちらです」
やっぱりリヴァだ。
魚と狼とヘビを合体させたような気持ち悪い見た目で、世界を覆う程の大きさ。
「リヴァ知らないの?」
「「存じ上げません」」
名称も伝えてあるんだけどな?
「倒し方知ってる?」
「「存じ上げません」」
それは大変だ。
「豊潤な魔石のみを魔法陣に…あ、これ、この魔法陣に組み込んでリヴァに放つだけ」
「「…」」
「簡単でしょ?」
「「…」」
このやり方ももちろん通達してある。
リヴァとは人間世界に気まぐれに現れ、数日かけて世界を壊し周り、時間がきたら消滅するという生物だ。もちろん野放しにしておけば莫大な被害が及ぶ。討伐方法も豊潤な魔石を振りかけるしか方法がない為、知らなければ確かに消滅させるのは難しいけれど、知っていれば簡単に消滅できる生物。
神さえも討伐方法を知らなければ命を落とす程の被害がある。だからこそ、リヴァの消滅方法を定期的に通達している。
「もしかして知らない?」
「存じ上げません」「本当に…?」
うーん………
一応、新しい世界が生まれてしばらくした後に通達してるんだけど………。もうちょっと頻度を増やすか。
「さっきの透明になってる花、あれって見る者によっては色が異なって見えるでしょ?」
「う、うん」
「…」
「だけど殆どの者が透明に見える時期があるの。そこから17日と17時間17分17秒後にリヴァが顕現する」
「「…」」
後ろに居る護衛の人達も呆然としてる。
「顕現したらさっき見せた魔法陣に豊潤な魔石を含んでリヴァに当てると消滅するよ。ちなみに魔石の量はこれ」
「「「「「「「…」」」」」」」
しばらくみんな呆然と、いや、ディアブロだけはすぐにどっかに行っちゃったけど、呆然とした後に、あたふたとしながら報告やら詳細を私に聞いてきた。
といっても、説明した以上の事はないから繰り返し答えてたけど。その途中で焦ったバーナビーとルーシャンも来たから、また同じ説明をしておいた。
「本当に…」
「うん、世界の基本」
「「基本………」」
ついでに通達もしておいた。
まぁでも、ヘディが居るんだから私が言わなくてもどうにかなってそうだったけどね。
「疑う訳ではないんだが…本当に?」
「うん、もうすぐ顕現するんだからバーナビーが試してみたらいいよ」
「「…」」
確かに素早さがある生物だし、触れると溶けるけど、地面に足をつきながらでも出来るから近付かなくていいし、というより、そういう方法で出来る討伐方法にしたから安全だよ?
「しかし……金のかかる相手だ」
ルーシャンは放心状態から目覚めたのか、苦笑しながらそんな事を言う。
確かにお金がかかる。だから大抵は国主導で討伐してると思うよ?多分ね。
「ありがとう…ありがとうヒナノ」
「ううん」
どちらかというと私の通達の頻度が緩かったせいだからね。こちらの方がごめんなさいだ。
「魔石あげる」
「しかし…」
「こんな風に純度の高い魔石のみじゃないと討伐できないの。今からじゃ時間がないだろうし、混ざり物と見分けるのも大変でしょ?」
「そうだが…ヒナノの大切な物だ」
「全然大切じゃない」
「「…」」
「命の方が大切」
「………ありがとう」
「ううん」
これで説明終わったかな?なんて思いながら紅茶を飲み干した。
「お礼は必ず」
「それならパジャマパーティーしたい!」
「ふっ」
「必ずだ!」
どうやらリヴァの花が透明になって数十日は経っていたみたいで、数日後にリヴァが顕現した。昼の空に。
けれど、すぐに魔法陣を起動したのかあっさりと消滅した。
そんな光景をディアブロと一緒にバルコニーから眺めていた。
「終わりましたね」
「…」
「心配じゃなかったの?」
「なぜです」
「みんな不安そうだったから」
ここ数日はみんなそわそわしてた。
「なぜ不安がるのか分かりません」
「そっか」
「中に」
「はあい」
ソファに座り、飲み途中だった紅茶を口に含んでいると、護衛中のディアブロから声をかけられた。
「詠唱にした理由を伺っています」
「…」
うん。今日も紅茶が美味しいです。
「「「「!」」」」「…」
こんなに神が現れちゃってみんな疲れないかな?なんて思いながら、来てくれたゼトスにちょいちょいと手招いてソファに誘導した。
「………その………」
言いたいことがあるらしい。
もぞもぞとしながら、落ち着きがない姿勢でソファに座ってる。
「あーー………」
言いたいことは分からないけど、渡したいと思ってることはなんとなく伝わったので、ゼトスの手から小さな花びらがたくさん咲いている花束を勝手に取って匂いを嗅いだ。
「………ふふっ、いい匂い」
「っ、……あー……その……」
「私に?」
「……はいっす。その……似合うと…前々から思ってたんす」
「私よりゼトスに似合う」
「その……うあっ!に、似合わないっすよ!」
1輪、手に取りゼトスの髪に差した。
「ほら、似合う」
「っっ〜〜、それならイヴの方が似合うっす!」
ゼトスが1輪、私の髪に花を咲かせてくれた。
「ふふっ、おそろいね?」
「………っす」
気恥ずかしそうに手を口にやるゼトスの顔は真っ赤。
「お茶でもしない?」
「い、いいっす。ま、また来るっすから」
「うん」
「わ、渡しに来ただけなんで!」
「くすくす、うん」
「……やっぱ似合うっすよ」
「ありがとう」
ガバッと立ち上がったゼトスはコケそうな体勢のまま転移し、帰って行った。
気に入りの花瓶を出して花束を飾った私は口元が緩んだまま眺めていた…ずっと…
と、言いたいところなんだけど。
「天使様、よろしいですか」
ディアブロから話しかけられた。
「うん?」
顔を上げると少し厳しめな表情をしているディアブロがいた。
「イヴというのは天使様のことですか」
「………」
ゼトスのばかあ!!!
まだアレスの方が危うくなかったよ!
っていうかなんで私も気付かなかったんだ!
私のばかあ!!!
「ミドルネーム?」
「嘘は駄目だと伝えたはずだ」
「そうでした。イヴも名前です」
「他には」
「ありません」
「…」
ま、まぁ、名前が2つも3つもあっても不思議じゃない!そう思おう!
「詠唱にした理由は」
「…」
うん、とても綺麗な花束を子どもに貰いました。
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