魔法を失った世界で魔眼少女は迷宮に踊る
結城ヒカゲ
一章 三花の園
第1話 リリア・ホワイトロード
魔法。神が人類の発展の為に与えた奇跡。しかし、人類はその力を私利私欲、争いの為に使った。
神は怒り、魔法の根源をモンスターの跋扈する地下迷宮――ダンジョンの最深部に封印した。
魔法を取り戻すには、ダンジョンを踏破するしかない。しかし、ダンジョンにはモンスターという人知を超えた化け物がいる。
魔法を失った人類に、ダンジョンの攻略など不可能。理不尽な試練を憐れんだ、下界の
しかし、やり過ぎれば、魔法を封印した神、主神ゼウスに粛清されてしまう。そこで、ゼウスに目溢されるギリギリのラインを見極め、力を与えた。
人類に与えられた力とは、モンスターを斃した際に発生する魔素を取り込む事で肉体を強化する力。
力を得るには、危険を冒してモンスターに挑まなければならない。それもまた試練である、とゼウスはその力を認めた。
かくして、人類はダンジョンの攻略を開始した。
人類が魔法を失って約五〇〇〇年。未だ、ダンジョンは踏破されていない。
*
「うわー、あくまだー! にげろー!」
「気持ち悪いんだよ! こっちくんな!」
「ママがあなたとは遊んじゃダメって言ってた」
「違う! 私は悪魔なんかじゃない!」
四、五歳の子供達が、同じ年頃の一人の少女を遠巻きに囲んでいる。
少年の投げた小石が白髪の少女の額に当たった。少女が額に触れると、その手は真っ赤に染まる。
胸を押さえ蹲る少女に、少年達は次々と石を投げつける。
恐怖、怒り、憎悪、様々な感情が胸を締め付ける。それが限界に達した時、左目に激痛が走った。
「ひっ」
顔を上げた少女に、少年達は石を投げる手を止めた。
少女の表情は苦痛に歪み、右目は燃え盛る炎のような紅、そして、左目は黄金に輝いている。
少女に気圧され、少年達は後ずさる。一人の少年が尻もちをついた。それを合図にしたように、他の少年達は走り去ってしまった。
「おい! まっ」
少女はゆっくりと立ち上がり、少年の方へと歩を進める。
「まて、来るな! やめ、うわああああ!」
勢いよく、少女は体を起こした。窓から差し込む太陽の光に目を細め、不快な汗で肌着が体に張り付いている事に眉を寄せた。
今でも度々夢に見る、一〇年前の出来事。決まって同じタイミングで目を覚ます。その先の事を少女は覚えていなかったが、恐らく、あのクソガキをボコボコにしてやったのだろう。
少女は大きく伸びをして眠気を払うと、立ち上がり汗で濡れた肌着を脱ぎベッドに放り投げた。
露わになった透き通るような白い肌と、深い谷間を作る双丘。バランスの良いくびれを作る腰に、ショートパンツから覗く瑞々しい太腿。
美しくも妖艶な半裸を晒す少女は、小さく欠伸しながら姿見の前に立った。
身長は約一六〇
ショートパンツまでも脱ぎ捨て下着一枚になった少女は、上半身を捻ったり、屈伸をしたりと軽く柔軟を済ませると、純白の髪とは対照的な、漆黒の
「よし」
言葉に出して気合を入れた少女は、最後に壁に立てかけてあった剣を腰に差す。
少女の名前は、リリア・ホワイトロード。一五歳。ダンジョン探索を生業とする者、冒険者。に、昨日なったばかりの新人である。
今日は、いよいよ初めてのダンジョン探索。朝に弱いリリアが珍しく早起き(本人比)し、なけなしのお金で買った戦闘衣に身を包み、気合十分に宿を後にする。
見上げれば、眩しい程の快晴。天に御座す神々が、今日という日を祝福して下さっているようだ。
新人冒険者にありがちな、出所不明の自信を胸いっぱいに詰め込み、リリアは冒険者としての一歩を踏み出す。
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