趣味を題材にした結果

有木珠乃

当たるも八卦当たらぬも八卦

 最初に宣言すると、私は多趣味である。それがいいのか悪いことなのかは分からない。でも、興味を持つと一直線に向かってしまうのだ。ジグソーパズルなんて、普通サイズではもう満足できない状態に。キルトや編み物は飽きてしまい、部屋のどこかに今も眠っていることだろう。

 それも興味は尽きず、どんどん趣味が増えていった。


 今回あげる趣味は、今年に入ってから興味を持った占い。それもカード占いだ。星占いのような占星術は、学ぶことが多いためか、最初の段階で音を上げた。堪え性がないのだ。


 元々、カード占いには興味があった。小さい頃、マンガ雑誌の付録で、大アルカナのみのタロットカードがあったのだ。カード自体は頑丈ではなかったが、上下の意味も記載されていて、小学生でも遊び易く作られていた。

 今でもお気に入りなので、大切にとってある。


 けれどそれは小学生の頃の話。大人になると、さまざまなことができるから恐ろしい。今の時代だから、というのもあるが、インターネットで色々と調べてしまえることだ。

 さらにカードも手に入れ易くなった、というのも危険だった。検索をかけるだけでも分かると思うが、可愛いカードが多いこと多いこと。専門書も合わせたら……と考えただでも恐ろしい。


 それでも手を出してしまったのは、それほどカード占いに魅力があったからだ。特にハマったのは、占い動画。専門書を読むのもいいが、実際やっている動画を見た方が、より分かり易く覚えやすかった。


 実は占い動画というものは、人気占い師さんの動画を見ていると、どうやら五年くらい前からあったらしい。五年前というと、私もまだ小説を書いていない時期。正確にいうと、復帰する前である。


 余談だが、私は一度筆を下ろしている。酷いことを言われて心が折れたとかではないため、このような表現になるが。


 つまり何が言いたいかというと、かなり前からあった、ということだ。ただ私が出会ったのが、ここ最近のことである、というだけで。


 そのキッカケは、実は占い動画ではなく、Xだった。フォロワーさんが遊ばれているのを見て、私も何気なく参加したのだ。

 この時の私は、カード占いといったらタロットカードしか知らず、さまざまな種類のカードに驚かされた。それもとても綺麗なカードたちで、これを見て、目移りしない方がおかしいだろう。


 そこからどうやって動画に辿り着いたのか、については、実はよく覚えていないのだ。Xで星座占いを見かけて、そこから検索したのがキッカケだったように思える。


 この時の私は、先行きが見えないことに不安を抱いていた。ようやく動き出したことや、このまま漠然とした流れに身を任せていることが、おそらく怖かったのだろう。

 ただ、その道が間違っていないこと。大丈夫だと言ってもらいたかったのかもしれない。確信した答えでなくても、前向きになれる。そんな安心感を得たかったのだと、今なら言える。


 気がつくと、いくつかの占い動画に行きついた。そこで知る、タロットカード以外のカードたち。


 オラクルカード、ルノルマンカード。他にもあったような気はするが、主にこのカードである。


 オラクルカードは、タロットカードのような決まりはなく。カードの著者のオリジナリティが光るカードだ。そのため、メッセージも様々なものがあり、逆にそこが面白いと思っている。

 ただメッセージがほしい時などは、オラクルカードの一枚引き(ワンオラクル)で十分だろう。


 次にルノルマンカード。こちらはタロットカードのように決まりがある。けれどタロットカードほど多い枚数ではなく、絵柄もシンプルであるため、私はどちらかというと、ルノルマンカードの方が読み易いと思っている。

 枚数は三十六枚と、タロットカードよりも少ないのも、またいい。タロットカードが抽象的な答えを示してくれるとしたら、ルノルマンカードは具体的な答えを出してくれるからだ。


 これは絵柄から読み取ることができるからだろう。占い動画では、説明書や解説本だけでは分からない、独特な読み方をされるのもまた、ルノルマンカードは多くて面白い。


 たとえば、七番目の『蛇』のカード。こちらは本来、悪意や不正、嫉妬など、見た目通り、良くない意味のカードである。しかし、蛇は脱皮する生き物。その性質を使い、ひと皮むける、という読み方ができるのだ。


 また、二十六番目の『本』の読み方も面白い。説明書などでは、知識、発見、秘密などある。絵柄によって、この本が開いているものもあれば、閉じているものもあるため、それによって読む意味も変えることができる。

 開いている本ならば、「まだ白紙であるため、ここに物語を刻むのはあなた」とか、とても希望に満ちたロマンチックな読み方に。

 閉じている本だったら、「まだ明かされていない秘密がある」と、本来の意味に深みを持たせることができるのだ。


 このようにルノルマンカードは、タロットカードと同じ様な法則性はあるのだが、シンプルであるため、とても読み易いカードになっている。

 けれど残念なことに、タロットカードほどの知名度はないため、知らない方が多い。かくいう私も、占い動画を見るまでは、ルノルマンカードの存在を知らなかったため、人のことは言えないのだが。

 だからこそ、作品に落とし込み、多くの人に知ってもらいたかった。


 そこで私が何をしたのかというと、いきなりルノルマンカードを出すことよりも、馴染み深いタロットカードを出すべきではないか、と思い至ったのだ。

 私自身、うまく作品に落とし込めるのか、という自信も半々だったからだ。とはいえ、この時の私は、タロットカードよりもルノルマンカードにどっぷりハマっていたため、一からタロットカードを学んだ。


 教えを乞うたのではない。占い動画から独学で学んだ。正直、占い師になりたいわけではなかったから、というのが最大の理由である。


 自分でも、多少なりとも読めればいい、その程度だった。しかし実際やってみると、これが難しい。一枚引き(ワンオラクル)でさえ、何を言っているのか、分からなかったからだ。ルノルマンカードなら分かるのに……と何度思ったことか。


 それでも作品作りのために、読めるように頑張った。興味のないことならいざ知らず、自分自身が題材に決めたからだろう。


 そうしていざ作品に向き合うことになったのだが……ここで私は我に返ることになる。こんな初心者丸出しのリーディングを、作品に落とし込んでいいものか、と。本当に今更な話である。


 けれど、もう書き出してしまったのだから後には戻れない。いや、白紙にすることは、いつでもできるのだが、私の気分的に……。


 色々と考えた挙句、主人公を私と同じ、初心者にすれば問題がないので? という初歩的な回答を導き出した。そしてできあがったのが、『タロットをめくる転生王女と過保護な護衛騎士様』という作品である。


 王女である立場ならば、初心者でもいい。間違っていても、苦情の来ない立場だからだ。さらに、占いは怖いものではない、ということを広めるのには、うってつけの身分だった。


 そうして出来上がったわけだが、思った以上に占いを怖い、と捉えている方が多いことを知った。私自身はテレビや雑誌などで見かける星座占い程度にしか感じていなかったのだが、そう思わない方の多さに驚かされたのだ。


 まさかの弊害に、私は頭を悩ませた。実は次回作も占いをテーマにした作品だったからだ。作品に占いは怖いものではない、と落とし込んでも、読む前の人々の感情が『怖い』のあれば意味がない。これでは、怖いものを見たくないから、ホラーは読まない、というのと同じ心理ではないか。


 どうしたら、と思うものの、これらは占いを悪用した人たちが起こした事件、もしくは霊感商法の弊害だろうか。実際、出た占い通りにやらなければ不幸になる、というはない。むしろあり得ない、と断言しておこう。


 占い動画を検索しただけで、数多くの占い師さんがこの世にはいる。私のように趣味でやる者も含めると、なんと多いことか。その中で本物の占い師さんを見つけることなど、できると思う方がおかしい。


 だから気軽に見て、当てはまっているものだけ受けるのが、正しい見方だと思っている。なぜなら、私もそうだが、当たっていると言われれば嬉しいし、当たっていないと苦情を言われると困ってしまうからだ。


 占う方も見る方も、気軽に楽しむ。それでいいのではないだろうか。日々を少しでも楽しく感じるためのスパイス。私はそれでいいと思っている。


 怖いものではなく、そっと背中を押してくれる優しいもの。気負う必要のないもの。


 それが多くの人に伝わることを切に願います。

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