きちにかえる

@torutetatan

第1話

私は知らない天井の下で目覚めた

まさしくよく本で見る状況だなと思い自分自身の状態を観察してみた

すると私はどうやらベッドの上で眠っているらしいことがわかった

全くこの場所に心当たりがない、いわゆる記憶喪失というものだろうか

こうも小説で王道な展開が続くと夢ではないかという疑いが出てくるものだ

ほおをつねってみると普通に痛い、ここまでも王道なようだった

いやはやしかし、それにしても全く状況がわからない

何か手掛かりはないかとスマホを探そうとして気がついた。なぜだか全身が痛む、そういえば本で記憶喪失の原因として事故などの怪我があると読んだような気がする

もしかしてそのようなことがあったのだろうか、しばらく視線を漂わせてみると今度はこの部屋のカーテンレールが折れていることに気がついた

やはり私は何か事故の影響で記憶を無くしてしまったのだろう、そう頭の中で結論づけて本来の目的であったスマホを探す

そしてようやく私はスマホを見つけたが、それはなんの手掛かりにもならなそうだった

なぜならそのスマホは画面がひび割れ電源がつかない状態であったからだ

ふと辺りを見渡してみると床にはひどくものが散乱しており、衣服や充電器や本まで落ちていた

しかも衣服は血のようなもので汚れ、充電器のコードは切れていた

もしかすると事故ではなく私は強盗か何かに襲われたのかもしれない

兎にも角にもベッドの上にいては何もわからない、そう思い私はベッドから立ち上がり、足の踏み場もないような床を歩いて、この部屋から廊下へと出た

廊下に出てみるとここはアパートの一室であろうことと、玄関に制服が落ちていたことから私が高校生であろうことがわかった

私は洗面所へと向かい鏡で自身の姿を見てみた

すると何やら私の首元に赤い跡がある、何者かに押し入られて襲われたことに違いないと確信した

それなら私はどうするべきだろうか、警察に駆け込んだところで

「おそらく何者かに押し入られて危害を加えられ記憶喪失になりました、助けてください」

などと言って信じてくれるとは考えられない、病院を紹介されて終わるだろう

それならばいっそ直接病院へ行くのはどうだろうか、これはなかなかに良い考えだ、もしかしたら過去の記憶が戻ってくるかもしれない

しかしそう簡単に信用してもらえるだろうか、ただの妄言を言っている人だと勘違いされて終わるような気もする

それならばもうしばらく自分自身のことについて考えてみてからでも遅くはないだろう、ならばどうしようかと再び酷い有様である部屋を見渡してみる

そうすると先ほどは気が付かなかったが机の上にやたら綺麗な状態である封筒を見つけた。これはなんだろうか、まだ未開封のもののようだが、、

盗られていないということはお札が入っているということでもないのだろう

気になってその封を切ってみるとそこには

「遺書」

と書かれた紙が一枚のみ入っていた

怪訝に思いその紙を読み進める、そこには典型的な辛くなったため命を断つという内容や友人への感謝と謝罪の文が刻まれていた

そしてその最後には私の名前が刻まれていた、私がこの文を書いたと言うことだろう

すると突然私の頭の中に濁流とも言える情報が浮かんできた

これは、この情報は確かに私の記憶に違いがない、身体中から汗が吹き出す。目眩も頭痛も吐き気もしてきた。いや、しかし、そんなはずは、、ああ、違ったのだ何もかも、私は事故にあったわけでも強盗に押し入られたわけでもなく、いや違う、そんなはずはない、この記憶が本当のはずがないもし本当のことならば私は自ら嫌だ違うそうじゃないはずだ体が重い私がそんなことをするはず、そうだこれは夢なんだそれなら眠ればこの悪夢から目覚めるに違いがない!

私は重い体を引きずり縋るように眠りへと落ちた




私は知らない天井の下で目覚めた

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