異世界転生詩集（音読用）

第一章（だいいっしょう）：覚醒（かくせい）と別離（べつり）

『信号機（しんごうき）のない交差点（こうさてん）』

最後（さいご）に見（み）たのは

赤（あか）から青（あお）に変（か）わらない信号機（しんごうき）と

雨（あめ）に濡（ぬ）れたアスファルトに迫（せま）る

二（ふた）つの強烈（きょうれつ）なヘッドライト

ブレーキ音（おん）は遠（とお）く

衝撃（しょうげき）は一瞬（いっしゅん）で永遠（えいえん）

次（つぎ）に目（め）を開（ひら）けたとき

天井（てんじょう）の木目（もくめ）は知（し）らない模様（もよう）を描（ねこ）いていた

ああ、私（わたし）はもう

定期券（ていきけん）を更新（こうしん）する必要（ひつよう）がないのだ

> 解説（かいせつ）: 転生（てんせい）のきっかけとなる「事故（じこ）（トラック）」と、現世（げんせ）からの唐突（とうとつ）な解放（かいほう）を詠（うた）った詩（し）。

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『二（ふた）つの月（つき）』

夜風（よかぜ）に当（あ）たりたくて

石造（いしづく）りの窓枠（まどわく）に肘（ひじ）をつく

見慣（みな）れたオリオン座（ざ）を探（さが）して

視線（しせん）は迷子（まいご）になる

紫色（むらさきいろ）の夜空（よぞら）に浮（う）かぶのは

青白（あおじろ）き兄（あに）と

赤（あか）き弟（おとうと）

二（ふた）つの月（つき）が私（わたし）を見下（みお）ろしている

その美（うつく）しさに息（いき）を呑（の）むと同時（どうじ）に

私（わたし）の孤独（こどく）は決定的（けっていてき）なものとなった

ここは、どこまでも「此処（ここ）」なのだ

> 解説（かいせつ）: 異世界転生（いせかいてんせい）モノの象徴的（しょうちょう）な風景（ふうけい）である「複数（ふくすう）の月（つき）」を見（み）て、異郷（いきょう）にいることを痛感（つうかん）する心情（しんじょう）。

熟語（じゅくご）の意味（いみ）

■ タイトル・テーマ関連（かんれん）

* 覚醒（かくせい）

* 目（め）が覚（さ）めること。また、迷（まよ）いから覚（さ）めて過（あやま）ちに気（き）づくこと。ここでは「異世界（いせかい）で目覚（めざ）めること」を指（さ）しています。

* 別離（べつり）

* 別（わか）れること。特（とく）に、親（した）しい人（ひと）と別（わか）れること。

■ 『信号機（しんごうき）のない交差点（こうさてん）』および解説（かいせつ）

事故（じこ）と最期（さいご）の瞬間（しゅんかん）

* 信号機（しんごうき）

* 交通（こうつう）整理（せいり）のために信号（しんごう）を表示（ひょうじ）する装置（そうち）。

* 交差点（こうさてん）

* 二（ふた）つ以上（いじょう）の道路（どうろ）が交（まじ）わる場所（ばしょ）。

* 強烈（きょうれつ）

* 力（ちから）や作用（さよう）が非常（ひじょう）に強（つよ）いこと。

* 衝撃（しょうげき）

* 物体（ぶったい）が激（はげ）しく突（つ）き当（あ）たること。また、心（こころ）に受（う）ける強（つよ）いショック。

* 一瞬（いっしゅん）

* またたきをする間（ま）ほどの、ほんのわずかな時間（じかん）。

* 永遠（えいえん）

* いつまでも果（は）てしなく続（つづ）くこと。

* 唐突（とうとつ）

* だしぬけであること。前触（まえぶ）れもなく急（きゅう）であるさま。

目覚（めざ）めと変化（へんか）

* 天井（てんじょう）

* 部屋（へや）の上部（じょうぶ）にある、屋根裏（やねうら）などを隠（かく）すための面（めん）。

* 木目（もくめ）

* 木材（もくざい）の切（き）り口（くち）に現（あらわ）れる、年輪（ねんりん）などの模様（もよう）。

* 定期券（ていきけん）

* 一定（いってい）期間（きかん）、特定（とくてい）の区間（くかん）を乗車（じょうしゃ）できる乗車券（じょうしゃけん）。ここでは「現実（げんじつ）世界（せかい）での繰（く）り替（か）えしの日常（にちじょう）」の象徴（しょうちょう）です。

* 更新（こうしん）

* 期間（きかん）が終（お）わった契約（けいやく）などを、新（あたら）しく改（あらた）めること。

* 転生（てんせい）

* 生（う）まれ変（か）わること。

* 現世（げんせ／うつしよ）

* 現在（げんざい）生（い）きているこの世（よ）。前世（ぜんせ）や来世（らいせ）に対（たい）する語（ご）。

* 解放（かいほう）

* 束縛（そくばく）や制限（せいげん）を取（と）り除（のぞ）いて自由（じゆう）にすること。

■ 『二（ふた）つの月（つき）』および解説（かいせつ）

異世界（いせかい）の風景（ふうけい）

* 石造（り）（いしづく（り））

* 石（いし）で作（つく）られていること。

* 窓枠（まどわく）

* 窓（まど）ガラスなどをはめこむ枠（わく）。

* 視線（しせん）

* 目（め）の向（む）いている方向（ほうこう）。

* 迷子（まいご）

* 道（みち）がわからなくなること。ここでは、知（し）っている星座（せいざ）が見（み）つからず視線（しせん）のやり場（ば）がない状態（じょうたい）を比喩（ひゆ）しています。

* 象徴的（しょうちょうてき）

* 抽象的（ちゅうしょうてき）な思想（しそう）や物事（ものごと）を、具体的（ぐたいてき）な形（かたち）あるもので表（あらわ）しているさま。

* 複数（ふくすう）

* 二（ふた）つ以上（いじょう）あること。

心理（しんり）・感情（かんじょう）

* 決定的（けっていてき）

* 物事（ものごと）がはっきりと決（き）まっていて動（うご）かないさま。

* 孤独（こどく）

* 仲間（なかま）がおらず、ひとりぼっちであること。

* 異郷（いきょう）

* 故郷（こきょう）ではない、よその土地（とち）。外国（がいこく）。

* 痛感（つうかん）

* 身（み）にしみて強（つよ）く感（かん）じること。

* 心情（しんじょう）

* 心（こころ）の中（なか）にある思（おも）いや感情（かんじょう）。