第3話 : 問題だらけの最強なフリートレス達
───第二次世界大戦期、
陽元とステイツが争った太平洋を巡る様々な戦いを『太平洋戦争』あるいは『大東亜戦争』と呼ぶ。
この戦争において、歴史の分岐点と言われる海戦がいくつか存在した。
真珠湾攻撃
ミッドウェー海戦
そして、第3次ソロモン海戦
今となっては知名度が低い戦いである第3次ソロモン海戦だが、この戦いでもしもボタンのかけ違いがあれば両軍のその後の結果も変わる重要な戦いだったと、買った側であるステイツも語る。
そして、この戦いは、歴史家や当時生き残っていた人々が口を揃えて言う。
おそらく、最低最悪の大混乱の中での戦いだった、と。
そしてその混乱の発端は当時の気象と、
ある一隻の陽元の駆逐艦が、引き起こした。
***
さて、皆さんの視点を房総半島沖に戻そう
「あらまー、忌々しそうなお顔〜!
あなた方が感情むき出しにしてる顔見てると、あーコイツら怪物なんかじゃないんだなーって安心できますよ。
だって、お前ら喋るし、正体不明でもなければ、こうすりゃ死ぬ!!」
いの一番に前に出た
着弾と同時に引火、拡散するフリートレス達の青い血液『フリートブルー』を込めた砲弾は、何よりD.E.E.P.という人魚に似た怪物を獰猛に溶かして水へ変えていく。
「当たり前じゃない」
「私達は、お前達みたいな怪物じゃない!!」
初めてその顔に怒りを浮かべたD.E.E.P.達が、初めてその腕を鋭い刃物のような形に変形させて攻撃する。
夕立の背中から伸びるフレキシブル装甲兼魚雷発射管懸架アームがそれを器用にそらして、右腕でグリップを掴む至近距離に銃口を押し当てた12.7cm連装砲を押し当てて放つ。
実際の口径はcmがmmになった程度に見えるが、彼女らの血液フリートブルーの爆発力と使われている人類用兵器では使えない特殊な弾頭の重さのせいで実際の威力はcmのままのそれが、D.E.E.P.の身体をただの液体にまで分解する。
だが、単騎では多勢に無勢。
すぐさま自ら一個体の犠牲など気にしない人魚達に取り囲まれ、鋼鉄を貫く生体組織の刃の切先が向かってくる。
「……ごめんね、毎回突っ込んじゃって」
「────いつもの事っす!!!」
瞬間、後ろから伸びてきた12.7cm連装砲二つが、群れの一角に穴を開ける。
「勘弁してくれとは思うけど、自分は夕立姉さんの僚艦っすから!!!」
夕立の肩に手を置いて跳び箱がわりに跳躍し、空中を一回転して両腕の12.7cm連装砲『近接攻撃用カスタム』をもう一発ぶっ放しながら叫ぶ春雨。
「言っておくけど、合わせる身にもなってね」
ズドドドン!
そんな春雨の背後の敵を単装砲と両肩の連装砲2基の発射で吹き飛ばしながら、すいーと夕立の横へ来る村雨。
「ぶー、私は置いてけぼりばかりー」
そして遠くでは12.7cm連装/単装直列に配置されたライフルとでもいうべき形の武器で正確に邪魔になりそうな個体を撃つ五月雨がいる。
「だってさみちゃんが一番冷静でしょー?
後ろは任せたぜー?」
「一応、同型艦の姉に当たる個体が隣にいるのに妹の方頼るんだ」
「ごめんて!!」
喋っている二人の背後に飛び掛かるD.E.E.P.を見もせず連装砲を向けて倒す。
しかし、前の海面から飛び上がる個体に一瞬反応が遅れた瞬間、それも後ろからの砲撃に撃ち抜かれる。
「村雨、気取っているようだがお前も詰めが甘い。助けた代金は食堂で払ってもらう。
カバー!!」
言われた指示に即座に反応し、砲撃を加えて敵を散らす。
瞬間、両腕の61cm魚雷発射管
水中起爆より威力は劣るが回避が難しい技を選択して敵を倒し、朝雲は後ろを軽く振り向く。
「ボサっとしているとは余裕か!?
貴様の単艦突撃癖はもはや前世レベルで治らんはずだろうが!!
謝る時間があれば戦え!!!
もしくはさっさと沈んで私たちの苦労を減らせ!!!」
その横顔を掠める砲弾が、朝雲の背後に迫るD.E.E.P.を轟沈させた。
「了解、朝雲ちゃん♪」
「……その調子がいつまで続くか見ものだな!」
再び各々が武装を構え、周囲を囲むD.E.E.P.達を蹴散らしていく。
***
「────正気か!?
制限なしの夕立の動きじゃないか!」
戦闘の様子をCICで確認した『ふそう』艦長、
「フルマチ艦長、制限なし、って?」
「ああ、
夕立はな……アイツ能力は優秀なんだが、なにぶんフリートレスの中じゃ問題児なんだよ。
特に白露型の能力知ってるよな?」
「ランページ・オーソライズ、でしたっけ?
殴ったら大体のロック外せちゃうっていう」
「アイツは特にその能力が強くてな……フリートレスの脳内には必ずある『人間に対する危害を加えないリミッター』を意図的に外せるんだ。
で、まぁ殴られて当然のヤツが大半だが、自分の提督を何人か『素手で整形手術』しているのさ」
それを語る艦長の顔は、まさしく『見たことのある』をこれ以上になく語っている表情だった。
「そんな……なんで処分されて性格矯正をされないんです?」
「されてるのが普段見てる夕立だよ。
知っての通り、だいぶ優秀だろみんな知ってるのは?
ただそんな『規制版』より優秀なんだよ、元の夕立は。
周りのフリートレスが倒れた中、単艦突撃してD.E.E.P.の強い個体を倒す戦闘力ってだけじゃない。
数少ない幹部教育課程修了者かつ、海軍特戦群の訓練を指導できる立場だ」
「うわ、海軍特戦群ってあの?」
「ま、本人曰く『取らないと戦場に出さないと脅されて仕方なく』とは言ってるがな」
うんざりした顔をしている中、ふとオペレーター席から声が上がる。
「艦長、我が間へ通信です」
「誰からどんな内容だ?」
「『四水戦旗艦那珂より『ふそう』、この場は任せて後退せよ。
ついでにビッグセブン陸奥の砲撃の為の支援を要請する』です」
「……逃げろって言われるかと思えば、俺たちの性格をよく知ってるらしい。
一度後退して、D.E.E.P.からの電子的妨害をなるべく除去しろ!
共同撃破で今日は勘弁してやろう!」
『了解!』
『ふそう』は即座に転舵、この戦場を離れ始める。
「!
レーダー感!7時の方向高速接近物体!!
D.E.E.P.カテゴリー1、複数体特攻してきます!!
毎時34ノット!!」
しかし、戦場とは別方向から突然の追撃。
「回避!」
「待ってください!
6時方向から二つ、いえ四つの航行物体!!
38ノット……魚雷!!」
***
「あらあら、D.E.E.P.さん達は私たちとデートしてくれないと!」
「はいはい、狙うなら私達ね!!」
由良と那珂が放つ魚雷が、不意打ちをしてきたD.E.E.P.の一段を砕く。
「まさか別働隊とはね。
だいぶ囲まれてるって感じかな?どう思うよ由良さんや?」
「じゃなかったら、私達のクーデターまがいの無断出撃なんて状況にならないかもね、那珂ちゃん♪」
水柱が上がる撃墜地点を通過する2隻は、軽口をたたきつつ周囲を警戒する。
『────由良さーん!!聞こえまーすかー!!』
ふと、由良の脳内に響く『思念』。
「那珂ちゃん、高雄ちゃんが『火砲支援情報ちょうだい』って」
「『ふそう』レーダー使えない?」
「D.E.E.P.のいつもの電磁妨害除去はまだみたいねぇ?
じゃないと私の能力でわざわざ伝えてくるとは思わないし。
……高雄ちゃんと霧島さんのじゃない、陸奥のを撃つ見たい。着弾地点に分かりやすい目印を付けないとね」
「…………そういうの、神通お姉ちゃんがやるんじゃない?」
「同じ型でしょ♡」
「…………由良さん、
後、援護よろしくぅ!!
ちくしょー!!そんなキャラじゃないんだよ那珂ちゃんはー!!!!!」
半泣きで敵の密集地域へ駆け出す那珂に手を振って、由良は砲撃で支援しながら自らの異能を使う。
(───夕立ちゃん聞こえるかな?)
「お、由良さん!」
由良、というより長良型フリートレスの能力である『
(今から頭に送る場所で、派手に探照灯でも爆発でも良いから光を打ち上げてほしいんだ)
言葉と共に、遠くからこの場所の別の視点が見える。
由良の頭のイメージが直接夕立に送られてくるのだ。
「みんな見えてたね!?
春雨ちゃん来て!!!
朝雲ちゃん、ここの指揮!!!」
「最初からしている!!!
春雨!!姉が寂しがってるぞ、ついていってやれ!!」
「押忍ッ!!!」
「────させない」
と、戦列を離れた夕立と春雨の前に、ふとD.E.E.P.達が集まり始める。
人魚だった物が、溶け合い、融合し……一つの歪な形へ。
「げぇ!?カテゴリー3か!!!」
やがて、目の前に新しい敵が現れる。
巨大な腕を持った、異形の姿が。
***
艦装少女-フリートレス- 来賀 玲 @Gojulas_modoki
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