謫降​顕神(たっこうけんしん)

ここ

第1話 神を宿した少年、泥に咲く。

 ここは、綾川町の学校体育館の裏で1人の少年と3人の不良がいる。

不良1「なぁ十拳金貸してくれよ。」

 十拳と呼ばれたその少年は、本名十拳現身(とつかうつみ)肌が青白く髪の一部だけが白くなっている、お世辞でも明るいなどの好印象を与える事はできないであろう。たった今その少年が恐喝、学生間ではカツアゲと言われる悪行をされている。

十拳「今月、もう5万も貸してるからさすがにこれ以上……。」

 そよ風が吹き少し肌寒く感じる中、十拳が喋りながら顔を見上げると、不良1があたかもゴミを見るような目でこちらを睨んでいる。

不良1「お前は金だけ渡してくれればいいんだよ。」

不良2「でもさすがにヤバくないっすか?このまま訴えられたら俺らやばいですって。」

不良1「あ?黙っとけ俺は俺のやりたいようにやる。」

 不良1は手を差し出すとクイックイッと手招きをする。その動きから、金銭を欲しているのが見てとれるだろう。それと同時に、渡さなければ帰ることができないということも同時に汲み取れる。

 十拳は、過去の記憶を思い出す。昔、十拳はいじめた相手を本気で死ねと願った、その結果いじめてきた人が全員死んでしまい、二度と抵抗はしないと決めた。

 十拳は財布から1万円札を取り出し、震えながら不良1に渡す。

不良1「最初からすぐ渡せばいいんだよ。」

 不良達が帰ろうと振り返った時、不良1だけが戻ってくる。

不良1「そういえば、コーヒー飲む男ってかっこいいよなぁ」

 缶コーヒーの蓋を回し開ける

不良1「コーヒーでも飲んでもっとかっこいい男になれよ」

 不良1は十拳にコーヒーを頭からかける。コーヒーは、とても冷えていて身体中がコーヒーで濡れてしまいベトベトする。十拳は不快感を覚えながら、立ち去る不良達を見送ることしか出来ない。

 十拳は帰路に着き、いつも通る道とは違う道を通る。今日も酷かったな、最近妹さんが亡くなったからかな。など、意味の無い思考を永遠と巡回しながらいっぽまた一歩と進む。

 夕焼けで辺りが赤く染まり、小学生などが帰り恥じてる時間帯となった頃…。十拳はとある神社の前で立ち止まる。祈りのひとつでもしてみるか…といじめに対する恐怖と誰にも好かれないという、鬱憤を晴らすために長い階段を一段飛ばしで登る、消して急いでいる訳では無いが。

 階段を登り終え鳥居を潜り鈴と賽銭箱がある所へと向かっていくと、1人のアラサー男性に話しかけられる。

アラサー男性「ねぇ君、最近困ってることはないかい?例えば"人に避けられる""いじめにあってる"とか。」

 アラサー男性が言ったことは、どれも十拳が経験してきた事だ。しかし、それと同時に、この人怪しすぎないかと疑いの目をかける。

アラサー男性「そんな不審者を見るような目で見ないでよ。あ、自己紹介が遅れてしまったね、僕の名前は橘 櫟(たちばな くぬぎ)。」

 橘櫟は目が隠れるほどの髪でミステリアスな雰囲気を纏っている。

十拳「は、はぁ。」

 十拳少し苦笑いをする。

アラサー男性「早速本題だけどさ、僕の元でバイトしない?給料は弾むよ!福利厚生も抜群!」

 アラサー男性は夢中になって話していると、気づいた頃には十拳はとっくに帰っていた。

アラサー男性「あれれ?帰っちゃったかぁ。まぁどうせまた会えるからいいか。」

 十拳はアパートの階段を上り一番奥の部屋に鍵を刺し、戸を開けると靴を脱ぎ制服を掛けてシャワーを浴びる。シャワー室をでて、キッチンでカップラーメンを作っていると、いきなり携帯電話に着信が来る。十拳は着信相手が不良1だということ確認して着信にでる。

不良1「おい、十拳今すぐ綾流川廃病院にこいよ。」

 十拳は渋々了承した。

 十拳は外出用の、服装に着替えて戸を開けてしっかりと鍵を閉める。駐輪場に停めてある自転車に腰を掛け漕ぎ始める。

 数十分経った頃廃病院に着いた。不思議と封鎖されてるはずのもんが空いていて、もんを潜ると左右からから不良2人が殴りかかって来て、気を失ってしまう。

 十拳が目を覚ますと椅子に縛られていて身動きが出来ない状態。

不良1「なんでこうなってるかわかるか?」

十拳「わからない、。」

不良1「まぁ、そりゃそうだよな。理由なんてねぇもん。お前はさ不気味だし怖ぇんだよ、みんな思ってるだから俺がお前を押さえつける。俺はヒーローなんだよ。」

 十拳はボソボソと何かを口走る。

不良1「なんだよ?」

 不良1は十拳の髪を掴み、下を向いてる顔をあげさせる。

十拳「う…しろ」

不良1「あ?」

 不良1が後ろを振り着くとそこには1人の少女がぽつんと立っている。不良1がその少女を見ると急に涙ぐんでゆっくりと向かっていく。

不良1「まみ?まみなのか?お兄ちゃんだ、わかるよな?ほらおいで、。」

 不良1が呼びかけると少女が手を広げながら走ってくる。不良も手を広げ少女が来るのを待つ。

十拳「駄目だ!」

 十拳の声は届いていなく。少女と不良1が出会うその瞬間であった、少女は不良1にラリアットをする。すると不良1は飛んでゆき柱へと激突する。

 すると聞き覚えのある声が少し遠くから聞こえてる。

橘「あらら、遅れちゃったか。やぁ君また会ったね」

 十拳は驚いたような顔をする。

橘「そんな驚かないでおくれよ。僕はただ霊力を感じたから追いかけてきただけだよ。まぁ色々説明しなきゃだしついでに、かな?」

 橘がベラベラと無駄話をしていると、少女が走ってきてまたラリアットをしてくる。

 だが橘ラリアットを華麗に避けてカウンターをする。

橘「"ドッキング"」

 橘の脳内にその少女の記憶が流れ込んでくる。

 少女は兄に愛されてはいたもののその愛は歪んでいて、家庭内暴力が横行していた。

  橘は優しい顔になり固まっている少女にハグをする。

橘「辛かったな。」

 橘は頭を優しく撫でると少女は光の粒になり、夜空へと消えていった。

十拳「あの、お取り込み中のところ悪いんですけど、縄を解いてもらっていいですか?」

橘「あ、ごめん」

 橘ら十拳に近ずき縄を解いていく。

十拳「ほかの不良たちはいないみたいですね。」

橘「まぁ、しばらく気絶してるんじゃない?」

 十拳は、橘がやったことを察する。

十拳「それよりも、なんなんですかあの…幽霊?みたいなの」

 橘はミステリな雰囲気をただ寄らせるような笑みを浮かべる。

橘「もちろん"幽霊"だよ。」

十拳「幽霊って実在したんですね。」

橘「もちろんそして僕らは幽霊を退治する、"神器(かみうつわ)"って言うんだ。」

十拳「退治?祓うとかじゃなくてですか?」

橘「うん、僕らはあくまで死んだ人間を三途の川に送るだけの存在。じゃなきゃ幽霊が人間の魂バクバク食い始めるからさ。」

十拳「な、なるほど、。」

 十拳が少し考えるような雰囲気で下を向くと、近くでゴォオオン大きな破壊音が鳴り響く。

不良1「殺す、コロス、korlotu」

 柱が1本壊れ、砂埃や瓦礫の山で視界を多い尽くし喉を焼く。肺の奥まで瓦礫の塵に侵食されるような、不快な沈黙が流れる。

 十拳はその光景に驚いた。不良1の死体はある。だがしかし近くには、不良1が歩いている。

 十拳はその光景を見て目を疑った、理解を拒むようなその光景に、体は恐怖により固まってしまい、さらに鼓動も脳内に響くほどに激しくなる。

十拳「え?どういう事?」

橘「これが幽霊だよ。こいつはどうやら僕らの魂を食べたいらしいね。」

 橘は地面を強く蹴り、一気に不良1に近づき腹に一発殴りを入れる。すると、不良1は飛んでいき壁に衝突する。

橘「あらら、まともに透過もつかえられないからすり抜けれないか。君名前は?」

 声をはりなが言う。

十拳「十拳現身です」

 橘と同じ声量で話す。

橘「うつみくん今したのが"霊力"。簡単に言うと素手で殴ってるって感じ。」

 不良1が、起き上がり地面を蹴り橘の方へと飛んでくる。

橘「そして次行うのが、"霊能力"。まぁ、刀とか銃とか道具だと思って。」

 不良1が振るって来た拳を片手で受け止める。

橘「ドッキング」

 橘の脳内に不良1の記憶が流れてくる

橘「僕の霊能力はドッキング、幽霊と繋がることで幽霊の霊力を使って戦える、それと」

 橘は受け止めた手と逆の手を握りこぶしにして構える

橘「全ての攻撃が致命傷になりうる。」

 橘は不良1を殴ると上半氏が吹き飛び、残ったのは腕と下半身のみ。そしてまた、光の粒となって沈んでいく。

 十拳はその光景を見て驚いた、今までに見た事のない事ばかりであるからだ。

 橘が、十拳の方へと向かってくる。

橘「君、やばいの飼ってるよ。」

十拳「え?どういうことですか?」

 十拳が疑問を言うと、急に当たりがぼやけてきてやがて気を失う。

 十拳が目を覚ますと、布団で寝ていた。辺りを見渡すと和室となっており。しばらくすると橘が入ってくる。

橘「やぁ、起きたか」

 橘は隣へ座る。

十拳「ここはどこですか?」

橘「実質僕の家」

 十拳は実質?と疑問に思ったが、彼にその疑問を聞く気力は残っていない。

橘「まぁ疲れてるだろうし、早速本題に入ろう。

もしかしたら、君の化縁やいじめを解決出来るかもしれないと言ったら?」

 十拳は重い体を勢いよく上げ、橘の方を見る。

十拳「ほんとですか?」

橘「僕は嘘はつかないよ。まぁ一旦目をつぶって。」

 十拳はそっと目をつぶる。

橘「自分の中の炎を探すんだ」

 十拳が目をつぶりながら炎を探すことを意識していると、黒く燃える大きい炎を見つける。

橘「あったかい?」

十拳「ありました。」

橘「じゃぁその炎を包み込んで小さくするイメージをしてみて。」

 十拳は言われた通り、炎を縮めよう触れた瞬間両親の顔が過ぎる。さらに、謎の声が聞こえる。雑魚のくせにまぁよくやるな、。あざけ笑うような笑い声が脳内に響く、耳を侵食してくる、黒板を爪で引っ掻くような、聞いただけで呼吸が荒くなり脈動が激しくなる、その声に驚きつつも炎を縮める。

橘「うん、"霊力漏れ"無くなったね。」

十拳「霊力漏れ?」

橘「霊力の制御ができなくて漏れている状態だよ。君はそのせいで虐められたりされていたんだよ。まぁ弱く知能のある生物はしょうがないことだけどな。」

十拳「なるほど。」

橘「話変わっちゃうけど、うちでバイトしない?」

十拳「あ、えっとぉ。」

 目を逸らす。

橘「大丈夫、国からの仕事だから安心だよ。」

十拳「給料は?」

 橘はハンドサインをする。

十拳「やります。」

橘「じゃぁ早速明日、午後7時に綾川公園で会おう。」

十拳「はい。」

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