異世界召喚されたクラスはシナリオに従い神々に遊ばされます
悠希
ゲームスタート
舞台は整った。
神々は観ている。
娯楽を求めて、刺激を求めて。
「さぁ神々よ、これよりゲームを開始いたします」
*
騒がしい。
何が起きている―――。
重いまぶたを開き、周囲を確認する。
(なんで……どこだ、ここ?)
冷たい大理石の感触が背中に伝わる。
さっきまで、確かに教室にいたはずだった。
机が並び、黒板があって、いつもと変わらない日常だった。
――なのに。
「何処だここ……」
声が震えているのが、自分でも分かった。
返事はない。代わりに、周囲から似たような声が上がった。
「おい、ふざけんなよ……」
「ここ、どこ?」
「夢……じゃないよね?」
視線を巡らす。
見覚えのある顔が、いくつもあった。
同じ制服。
同じクラスの、同級生たち。
――僕だけじゃない。
全員が、広い空間に散らばるように倒れていた。
天井は異様なほど高く、壁には見慣れない文様が刻まれている。
足元は、どこまでも冷たい大理石。
教室の面影は、どこにもなかった。
「落ち着け……!」
誰かが叫んだ。
けれど、その声は混乱を止めるには弱すぎた。
不安と恐怖が、ざわざわと広がっていく。
その時だった。
――カツン。
硬い音が、静まり返った空間に響いた。
一つ、また一つ。
規則正しい足音。
全員の視線が、一斉に奥へと向けられる。
長いローブを纏った人影が、ゆっくりと姿を現した。
「ようこそ、勇者諸君」
その言葉に、背筋が凍る。
「勇者共々、どうか我が王国を救って欲しい」
……勇者?
……王国?
理解が追いつかない。
次の瞬間、視界が歪んだ。
空中に、文字が浮かび上がる。
まるでゲームのプレートのような表示。
—————————————————
【メインタスク】
王国の要請を受諾し王国を救国せよ
成功報酬:不明
失敗ペナルティ:不明
制限時間:不明
—————————————————
「なんだこれ……ゲーム?」
「王国の要請?」
ざわめきが一気に大きくなる。
「要請って何だよ!」
前の方にいた男子が叫んだ。
「俺たち、勝手に連れてこられたんだぞ!」
「そうだよ!」
「帰して!」
「意味わかんない!」
怒りと恐怖が入り混じり、場は完全に制御を失いかけていた。
ローブの人物は、何も答えない。
ただ、静かに立っている。
その瞬間。
空気が、張り詰めた。
空中の表示が、書き換わる。
—————————————————
【警告】
メインタスク未選択状態
再選択を強制します
残り時間:00:30
—————————————————
数字が、淡々と減っていく。
29。
28。
「……え?」
誰かの声が、掠れた。
「ちょ、待って……!」
何をすればいいのか分からない。
どうすれば止まるのかも分からない。
ただ、時間だけが確実に削られていく。
21。
空気が、張りつめた。
18。
——これが、「選択」なのか。
「……待て!」
誰かが声を上げていた。
周囲の視線が、一斉に一点へ向けられる。
「今は……今は、選ぶしかないだろ」
声が震えている。
「ここで拒否して、様子を見よう。何が起きるか分からない」
「少なくとも、状況を知るまでは……話を聞くべきだ」
沈黙が落ちた。
重く、逃げ場のない沈黙。
正しい。彼の言っていることは正しかった。だが、この状況下何が正解かわからない。
やがて、誰かが小さく頷いた。
それが、引き金になった。
全員が『拒否』を選び表示が、静かに切り替わる。
—————————————————
【メインタスク】
拒否:確認
受理できませんでした
再選択を要求します
—————————————————
「「「「「………は?」」」」」
『受理できませんでした』
受理ができなかったらしい。
ゲームのバグのようなものだろう。
全員が思った。
「も、もう一度選択してみよう」
全員が再選択した。
—————————————————
【メインタスク】
拒否:確認
受理できませんでした
再選択を要求します
—————————————————
受理されなかった。
「おいこれ、承諾しないと進行しないタイプか」
誰かが乾いた声で言った。
冗談めかしているようで、まったく笑えない。
「そんな……拒否って選択肢、意味ないじゃん……」
「最初から決まってたってこと?」
ざわめきが広がる。
怒りよりも、戸惑いが勝っていた。
その時。
視界の端で、数字が灯った。
—————————————————
【警告】
メインタスク未受諾状態
再選択を強制します
残り時間:00:20
—————————————————
「……え?」
誰かが声を漏らす。
20。
19。
「な、なんだよこれ……」
「時間……減ってる?」
18。
17。
心臓の音が、やけに大きく聞こえた。
喉が詰まる。
「ちょっと待て!」
「これ、0になったらどうなるんだ!?」
誰も答えられない。
ただ、数字だけが無慈悲に進んでいく。
14。
空気が張りつめる。
誰かが息を呑む音がした。
――このままだと、何かが起きる。
何が起きるか分からない。
でも、確信だけはあった。
11。
「今は……承諾するしか…」
8。
「選択肢が用意されてるだけで、選ばせる気は最初からない」
6。
「だったら、まず状況を知るしかないだろ!」
4。
沈黙。
1。
「一度……承諾しよう」
0。
—————————————————
【メインタスク】
承諾:確認
—————————————————
全員が承諾した。
表示が切り替わった瞬間張りつめていた空気が、ふっと緩んだ。
ローブの人物が、静かに頷く。
「感謝する、勇者たちよ」
その言葉に、誰も返事をしなかった。
――選んだ。
そう思いたかった。
けれど胸の奥に、
小さく、消えない違和感だけが残っていた。
──────────────────
こんにちは!
これが初投稿ですかね
自分が妄想していたのを形にしただけなので、おかしいな所があると思います。
誤字などをコメントで伝えてもらえれば修正します。
とりあえず、1話最後まで読んでいただきありがとうございます!
投稿頑張ります!
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