異世界召喚されたクラスはシナリオに従い神々に遊ばされます

悠希

ゲームスタート



舞台は整った。


神々は観ている。


娯楽を求めて、刺激を求めて。


「さぁ神々よ、これよりゲームを開始いたします」





騒がしい。

何が起きている―――。


重いまぶたを開き、周囲を確認する。


(なんで……どこだ、ここ?)


冷たい大理石の感触が背中に伝わる。

さっきまで、確かに教室にいたはずだった。

机が並び、黒板があって、いつもと変わらない日常だった。


――なのに。


「何処だここ……」


声が震えているのが、自分でも分かった。

返事はない。代わりに、周囲から似たような声が上がった。


「おい、ふざけんなよ……」

「ここ、どこ?」

「夢……じゃないよね?」


視線を巡らす。

見覚えのある顔が、いくつもあった。


同じ制服。

同じクラスの、同級生たち。


――僕だけじゃない。


全員が、広い空間に散らばるように倒れていた。

天井は異様なほど高く、壁には見慣れない文様が刻まれている。

足元は、どこまでも冷たい大理石。


教室の面影は、どこにもなかった。


「落ち着け……!」


誰かが叫んだ。

けれど、その声は混乱を止めるには弱すぎた。

不安と恐怖が、ざわざわと広がっていく。


その時だった。


――カツン。


硬い音が、静まり返った空間に響いた。

一つ、また一つ。

規則正しい足音。


全員の視線が、一斉に奥へと向けられる。


長いローブを纏った人影が、ゆっくりと姿を現した。


「ようこそ、勇者諸君」


その言葉に、背筋が凍る。


「勇者共々、どうか我が王国を救って欲しい」


……勇者?

……王国?


理解が追いつかない。


次の瞬間、視界が歪んだ。


空中に、文字が浮かび上がる。

まるでゲームのプレートのような表示。


—————————————————


【メインタスク】

王国の要請を受諾し王国を救国せよ 


成功報酬:不明

失敗ペナルティ:不明

制限時間:不明


—————————————————


「なんだこれ……ゲーム?」

「王国の要請?」


ざわめきが一気に大きくなる。


「要請って何だよ!」

前の方にいた男子が叫んだ。

「俺たち、勝手に連れてこられたんだぞ!」


「そうだよ!」

「帰して!」

「意味わかんない!」


怒りと恐怖が入り混じり、場は完全に制御を失いかけていた。


ローブの人物は、何も答えない。

ただ、静かに立っている。


その瞬間。


空気が、張り詰めた。


空中の表示が、書き換わる。


—————————————————


【警告】

メインタスク未選択状態


再選択を強制します

残り時間:00:30


—————————————————


数字が、淡々と減っていく。


29。

28。


「……え?」


誰かの声が、掠れた。


「ちょ、待って……!」


何をすればいいのか分からない。

どうすれば止まるのかも分からない。


ただ、時間だけが確実に削られていく。


21。


空気が、張りつめた。


18。


——これが、「選択」なのか。



「……待て!」


誰かが声を上げていた。

周囲の視線が、一斉に一点へ向けられる。


「今は……今は、選ぶしかないだろ」


声が震えている。


「ここで拒否して、様子を見よう。何が起きるか分からない」

「少なくとも、状況を知るまでは……話を聞くべきだ」


沈黙が落ちた。


重く、逃げ場のない沈黙。


正しい。彼の言っていることは正しかった。だが、この状況下何が正解かわからない。

やがて、誰かが小さく頷いた。

それが、引き金になった。


全員が『拒否』を選び表示が、静かに切り替わる。


—————————————————


【メインタスク】

拒否:確認


受理できませんでした

再選択を要求します


—————————————————




「「「「「………は?」」」」」


『受理できませんでした』


受理ができなかったらしい。

ゲームのバグのようなものだろう。

全員が思った。


「も、もう一度選択してみよう」


全員が再選択した。


—————————————————


【メインタスク】

拒否:確認


受理できませんでした

再選択を要求します


—————————————————


受理されなかった。


「おいこれ、承諾しないと進行しないタイプか」


誰かが乾いた声で言った。

冗談めかしているようで、まったく笑えない。


「そんな……拒否って選択肢、意味ないじゃん……」

「最初から決まってたってこと?」


ざわめきが広がる。

怒りよりも、戸惑いが勝っていた。


その時。


視界の端で、数字が灯った。


—————————————————


【警告】

メインタスク未受諾状態


再選択を強制します

残り時間:00:20


—————————————————


「……え?」


誰かが声を漏らす。


20。

19。


「な、なんだよこれ……」

「時間……減ってる?」


18。

17。


心臓の音が、やけに大きく聞こえた。

喉が詰まる。


「ちょっと待て!」

「これ、0になったらどうなるんだ!?」


誰も答えられない。


ただ、数字だけが無慈悲に進んでいく。


14。


空気が張りつめる。

誰かが息を呑む音がした。


――このままだと、何かが起きる。

何が起きるか分からない。

でも、確信だけはあった。


11。


「今は……承諾するしか…」


8。


「選択肢が用意されてるだけで、選ばせる気は最初からない」


6。


「だったら、まず状況を知るしかないだろ!」


4。


沈黙。


1。


「一度……承諾しよう」


0。


—————————————————


【メインタスク】

承諾:確認


—————————————————



全員が承諾した。

表示が切り替わった瞬間張りつめていた空気が、ふっと緩んだ。


ローブの人物が、静かに頷く。


「感謝する、勇者たちよ」


その言葉に、誰も返事をしなかった。


――選んだ。

そう思いたかった。


けれど胸の奥に、

小さく、消えない違和感だけが残っていた。



──────────────────


こんにちは!

これが初投稿ですかね

自分が妄想していたのを形にしただけなので、おかしいな所があると思います。

誤字などをコメントで伝えてもらえれば修正します。

とりあえず、1話最後まで読んでいただきありがとうございます!

投稿頑張ります!

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