巫女と一緒に異世界いったらレベル壱になった。豊穣の山神から迷宮魔神に転職。神使達が制御不能である。
金谷さとる
第1話 我わけわからん
五十年に一度、その血筋に我が巫女は産まれる。
巫女は我が住まいである山を整備し、我がそばで健やかにに過ごす。
巫女及び、巫女の血族は我が加護により不足の少ない生活をおくることができる。
無論、信仰が多い方が恩恵は多く与えられる。
最近の血族、我を敬っていないのをひしひしと感じる。なにせ、我が個体認識できる人の子は巫女だけである。
だから、我が巫女が『還らずの陣』で境界を渡る時、巫女に与えたモノを召喚の陣にねじ込んで巫女に与えた。そして我も境界を越えた。
巫女に世話を受けていた獣たちと共に。
我を敬うは巫女だけなら巫女のいない世界では我は消え失せるだけである。
新たなる世界。そこもまた神の息吹多き世界。
我が存在に気がついた宗主によりその支配空間に招かれた。
緊張する我(我は信仰を失いつつあった貧弱神である)に宗主は笑った。
「世界に刺激は必要ね。基本的なルールは守ってもらいますが、あなたがどのような存在になるかはあなたの選択次第。楽しみにしていますよ」
次に気がつけば、獣たちと共に山の中に居た。
我は元々山神であるが故に居心地は良い。
「デブガラス、レベルってなんだ?」
巫女が世話をしていたヤギ(我への敬意はないが我が神使)がゴツゴツ頭突きをしながら聞いてきた。
レベル?
ああ、この世界ではステータスが見えるのかな?
どれ。
名前 ヘビーさん
ああ。巫女がそう呼ぶからかな。
種族 神
ふむ。
レベル壱
レベル壱?
スキル 豊穣の祝福 山神の怒り ストレージ(信徒の数による利用制限有り)
連絡手段 宗主神(私)の気まぐれ応答
は?
はぁ!?
信徒って巫女含まずか?
「デブガラスーーー! ヤギだ。ヤギさんがいるぞー」
いや、わかってるから頭突きすな。
勢いで吹っ飛びそうに痛いから。
ガツガツ遠慮なく踏み込むから砂利までぶち当たりにきてるじゃないか。
「わかってるからおとなしくしろ。レベルというのは強さの指標だな」
この世界においてのレベルが上がる基準はなんだ?
信徒を集めればいいのか?
「じゃ、デブガラスはこのグニョグニョを踏み殺せ」
ん?
グニョグニョ?
視線を下せば不定形の粘液生物が蠢いていた。
アメーバのようだが少し違いそうだ。
興味を持って観察しはじめるとまたヤギが急かすように頭突きをしてくる。
よろけた勢いでぶちゅりと踏んだ。
レベルニになりました。
ぽんと脳裏にそんな言葉が流れた。
一日にレベルが上がる上限は一です。
レベルは生物の生命を奪うことで上がります。
この土地はバーセット王国はずれの山トトント山です。
山裾に小さな集落が複数あります。
迷宮はないです。
生息する魔物はスライム、リス、蝙蝠、蟷螂、ミミズ、蛇、モグラが現在確認されています。
(神、及び神使の倒した生物が記録されていきます)
え?
待って。
お前らなに殺戮に走ってんの?
イボ猪が追加されました。
「おー。ヤギもレベル上がったー!」
ガッツガツアメーバ改めスライムを踏み殺すヤギの姿にハッと気がつく。
もしかして、我がレベル上がらないと自分たちもレベルが上がらないからスライム持ってきたのか!?
ヤギはともかく他のがそのくらい思いつきそうだな。
「じゃあ、デブガラス、また明日なんか持ってくるなー」
いや、待て。
おまえら不敬だし、殺戮に走りすぎでは?
「あ」
駆けて行こうとしたヤギが立ち止まり首をこちらに向けた。
「ご主人の居場所、デブガラスはわかる?」
ん?
巫女の居場所?
召喚の術式が招いたはずだ。
方向はあっちか。
方向はわかるがどのくらい離れているのかがわからないと伝えるとヤギは苛立たしげに地面を蹴る。
「アッチだな!」
ヤギが立ち去ったあと、生き残ったスライムがうぞうぞしている様子を見守る。
弱い魔物であり、『掃除屋』の愛称もあると知れる。
つまり、まぁ、有用な存在である。
ころころと転がっている小さな結晶。
魔核と呼ばれている魔物の心臓。キラキラと美しい。
我がこの世界ではじめて奪った生命のアカシ。
トトント山のスライムがヘビーさんの信徒になりました。
これにより種族表記が神より魔神となります。
は?
我、魔神?
魔神ってなに?
魔神、魔物に信奉される神。
我の巫女、人間だが?
もしかして称号『魔神の巫女』とかにならない?
勇者召喚された娘の称号が発覚しないといいなぁ。
勇者が信仰していた時点で魔神ではないため称号は付きません。
ですが、彼女のレベル上限はあなた次第となります。
えー。
宗主様、それ勇者としてまずくないですか?
あなた次第ですね。
ああ、明日も誰かがなにか瀕死の魔物を連れてくるのか。
見上げた空は木々の緑に縁取られ青く高く美しかった。
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