追放された極炎の魔術師 配信者として舞い戻る

チョーカー

第1話 失われた力と追放

 セイラの声が聞こえてきた。


「……え? なぜ、お前が……私を庇って―――」


 何だ? 俺がセイラを庇ったのか?


 頭を打ったのか、少し記憶が飛んでいる。


 確か、戦闘の最中だったはず…… 見上げると敵がいた。


 巨大な影。 それは魔物モンスター……ドラゴンだ。


 そうだ。俺たちはドラゴンの討伐をしていたはずだ。


「どうした、みんな? 敵はまだ―――ドラゴンは健在だぞ!」


 このパーティのリーダー『姫騎士』 セイラ・ブリューナ


 斥候&前衛の戦士『亡霊戦車』 アイナ・ノクス


 そして、魔法使いの俺―――『極炎の魔術師』 フレイ・アドラ


 国内最強の冒険者グループとして、ドラゴンの討伐を請けたわけだが……


「くっ! 杖はどこにいった? 目を―――ぼやけて、視覚が効かない」


 俺のメインウェポンは、杖と魔剣。 しかし、杖は近くにないようだ。


「だったら、魔剣に血を―――」


 俺の体内には、魔法の術式が刻まれている。 

 当然ながら、体内に流れる血液にも術式が刻まれていてる。


「つまり、俺は生きる魔法陣ってわけだ」


 体から漏れている血液で魔剣を濡らす。


 炎の魔剣が、俺の術式と重なり合い、轟々と光を灯した。


 俺の特別スペシャルだ。ドラゴンでも、無事にはすまない……はず。 

 

 だが、ここで奇妙な事に気づく。 


 セイラとアイナの反応がない。戦闘に参加する様子もない。 


「……どうした? 2人とも?」


 戦闘中に関わず、セイラとアイナは俺を見ているだけで動かない。


「だって、フレイ……あなた、まだ気づいてないの……」


「そんな腕も…魔眼だって……」


「2人とも何を言っている? 腕がどうしたって? 魔眼……? よくわからない」


何か精神性の攻撃を受けているのか? ずっと意味がわからない事を喋っている。


いや、何が起きたんだ? 戦闘の最中だぞ!


「だったら俺が――――やるしかないのか!」


 残った魔力を肉体強化に回す。 ただの強化魔法ではない。 


 肉体を壊し、作り直していく―――より、戦闘に特化した肉体に生まれ変わっていく。


 魔力と生命力を燃料とした禁忌に近しい魔法だ。 だから―――


「行くぞ! ドラゴン――――俺が極炎の魔術師だ!」


 俺は一歩だけ踏み込む。 強化された肉体は、離れていたドラゴンとの位置を縮む。


 魔剣を振る。  まず斬るのはドラゴンの鱗。


 普通に剣なら、切断する事は不可能な強度の鱗だったが―――


「俺の魔剣は、ドラゴンの鱗も


 溶けた鱗なら、斬る事は可能だ。 ドラゴンの体に刃を届かせ、その鮮血をまき散らかせる。

    

その戦果を前に、俺は―――


(……っ痛いっ! 痛い痛い痛い! 消えそうな意識が痛みで……失神する事も許されない)


 激しい痛み。全身がバラバラになりそうな痛み。


 いや、実際に体の崩壊と再生が行われているのだ。 


 生存を許される代わりに、生命力と魔力が失われていく感覚。


 (……動け、動け、動け!)


 忘れてはいけない。


 相手はドラゴン。地上最強の生物なのだから―――


 激しい高速戦闘。 俺は魔法使いであり、接近に慣れていない。


 攻撃の最中にバランスを崩した。わずかに生まれた隙。 


 だが、相手はドラゴン。わずかなミスも死に直結する。 


 目前には開かれた顎。 そこに感じされるのは膨大な魔力―――つまり、ドラゴンの息吹ブレスだ。


 思わず、俺は笑みをこぼした。


「おい、ドラゴン。お前は知らないだろうが、俺の二つ名は『極炎の魔術師』だ。 炎で俺は殺せないぜ」


 火山の噴火にも匹敵するドラゴンの息吹。赤い閃光が放射されていく。 


 だが─── 


 俺は魔法を発動した。


奪略インターセプト


 その効果は―――


 炎属性の攻撃を無力化。 

 それが魔力を含む攻撃なら、相手から奪い取る事ができる。


「ドラゴンのブレス……コイツはおまけだ。俺の魔力を上乗せして―――叩き返してやる!」


 俺の前に、巨大な火球が生まれた。 それを宣言した通り、ドラゴンに向けて―――放出した。


      

  ~~~ ~~~ ~~~ ~~~


 「―――生きて戻って来れたか」


 目を覚ました。 異常なほど、白い部屋だった。


 それで、ここが病室だとわかった。


「ようやく、起きたか。フレイ?」


「ん? あぁ、セイラか」


 まだ意識がハッキリとしていない。 まるで、頭の中にモヤがかかっているかのような感覚だ。


「フレイ、君を仲間から追放する。それは――――」


「え?」  


 彼女が何を言っているのか? すぐに、わからなかった。 


「なぜ……」と言って、体を起こそうとしてバランスを崩す。その理由は、すぐにわかった。


「俺の腕が……腕がない」


 あるはずの左腕。それが紛失していた。 馬鹿な……!


 それだけではない……片目が見えない! 


「まさか!」と、近くにある鏡を見た。 鏡に写された俺の顔……そこには片目が、魔眼がなかった。


 俺の魔眼は、魔力の制御装置だった。


 それを失うという意味は緻密な魔力コントロールはできなくなり、多くの魔法が使用できなくなるという事だ。


「落ち着いてくれ。君がドラゴンとの戦闘で私を庇って、怪我をしたんだ。だから―――」


 徐々に記憶が蘇っていく。 


 戦闘の途中で失った杖を探していたが…… 何てことはない。 なくなったのは、杖ではなく俺の腕だったのか。


 俺は戦えない体になったみたいだ。  魔眼と片腕を失って……


 再起不能。その言葉が重く圧し掛かる。


「できれば、今後の話しを―――」


「すまない。今は返ってくれ。 少し、1人でいたい」


「そ、そうか。では、日を改めよう。返事は、その時に」


 そう言ってセイラは病室から出て行った。


 「俺は、俺は……」


 その後の記憶はない。 そのまま腕を隠して、病院から抜け出し、町を彷徨っていた。


 そうして、3年後――― 


「先生、おはようございます」


「ん? あぁ、おはよう」


 俺は正体を隠して、学校の先生をしていた。 


 それも貴族が通う魔法学校の教師だ。


 学校の名前は─── 『聖ステラ学園』


 冒険者時代、ここの理事長からの依頼を請けた縁で採用された。

 コネ採用とも言う。


「先生、頭に寝ぐせがついてますよ~」


「くすくす」と生徒たちから笑われる昼行燈ひるあんどんを演じながら……

 

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