第4章 森の奥
木々の間隔が狭くなる。
幹は太く、枝は低く垂れ、日差しはほとんど届かない。
湿った土の匂いに、微かに腐葉の匂いが混ざる。
少女は足元を確かめながら歩く。
枝を踏み、葉をかき分ける。
踏み慣れた道とは違う。森は少しずつ、重く、静かになっていく。
遠くで、かすかな音。
木の枝が折れるのでも、鳥の鳴き声でもない。
小さな“何か”が、森の奥で動いた気配。
少女は足を止める。
目はその方向に向くが、影はすぐに消える。
呼吸を整え、手はまだ刃に触れない。
ただ、感じるだけ。
光の筋がわずかに揺れる。
森の奥は、静かに呼吸しているようだった。
葉の間を通る風、土の匂い、木の皮のざらつき。
すべてが少女の感覚に刻まれる。
歩き続けると、足元に古い跡が見えた。
人間のものではない、動物の大きな足跡。
しかし、何かが違う。形は不揃いで、途中で消えている。
少女はその跡を追わない。
ただ、存在を確認しただけだ。
森の奥は薄暗く、音は少しだけ反響する。
枝を折る音、葉を踏む音、すべてが微かに大きく聞こえた。
少女は立ち止まり、影を探す。
何も見えない。
でも、違和感は消えない。
足を進めるたび、森は重みを増す。
少女は息を整え、歩みを止めない。
目に映るすべてが、日常ではない何かの兆しだった。
森はまだ、静かに呼吸していた。
少女はその中で、歩き続ける。
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