ショートショート集
赤腹井守
化石燃料
環境エネルギー庁にて。
「せんぱーい。次のCCS(工場から出る二酸化炭素を地中深くに埋めて二酸化炭素の排出量を減らす取り組み)の新候補地が見つかりました。」
部下が上司に資料を手渡した。
「お、次は西駒込の地下2000メートルか。遂に東京でもここまでの深さに埋めることになったのか」
「場所が足りませんからね。地方ではすでにかなり深くまで埋めて、限界ですし、海外に埋めてもらうっていうのも最近は国際批判が激しいですからね」
「先進国は途上国をゴミ箱にしているのかって言われるものなあ」
「あ、そういえば化石燃料の埋蔵量が良くてもあと10年位しか耐えないようです」
「朝のニュースで言っていたな。まだ国内電力の20%は火力発電に頼っているからな。深刻なエネルギー問題になるぞ」
「全く、先人達に言ってやりたいですね。化石燃料の使用をヤメローって」
「本当にそうだよな。先人達の尻拭いをなぜ私たちがやらないとならないのか」
「地球、耐えるといいですね」
「そうだなあ」
人類が滅亡して一億年ほど後。植物が知能を手に入れて、地球を新たに支配した。
「大統領!国内の二酸化炭素田が新たに見つかりました!これで後10年は持ちそうです」
彼らは深刻な食糧難に陥っていた。大気中の二酸化炭素を使い切ってしまい、大量の者が餓死してしまった時に運良く地下深くで二酸化炭素を多く含む層が見つかった。それにより一旦は食糧難が解決されたものの、二酸化炭素田をあまり持たない国が大量に持つ国に対して分けてもらうことを求めた。しかし、どこの国も応じず戦争が多発している。もちろんこの国も例外ではなかった。
「ふうう、最後の二酸化炭素田が枯渇してから国民が飢えて、戦争に負け気味だったよ。これで戦争に勝てるぞ」
「そういえば大統領、昨日の空襲で大量の死者が出てしまったのですが、墓地に埋めると大量の油が発生してしまうのです。これによって深刻な環境破壊が起きてしまって、国内の環境保護団体が黙っていません。戦争時にデモでも起こされると戦争に行き詰まってしまいます」
「ううむ、うるさい国民だ。死体を置く場所はあるじゃないか。廃田の穴に死体を埋めてしまえ!」
ショートショート集 赤腹井守 @Akaharaimori2022
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