永遠の花園
学園は、もう静かではなかった。
私の正体が完全に明らかになってから、数日が経っていた。
生徒たちは二つに分かれた。
一方は私を「敵」として非難し、排除を叫ぶグループ。
もう一方は、私と過ごした日々を信じ、プロパガンダの嘘に気づき始めたグループ。
廊下を歩けば、罵声が飛ぶこともあった。
でも、同時に小さな声で『アレンくん、ありがとう』と囁かれることも増えた。
リリア先輩は、毎日私の部屋に来るようになった。
「みんな、混乱してる。私も……まだ全部は整理つかないけど」
彼女はそう言って、窓辺に立つ百合の鉢植えを見つめた。
「この花、ずっとここで咲いてると思ってた。でも、外の世界を知ったら、もっと広い場所で咲けるかもしれないって思うようになった」
私は黙って、彼女の横に立った。
ある夜、緊急の生徒集会が開かれた。
体育館に全校生徒が集まり、私も呼ばれた。壇上に立たされると、数百の視線が突き刺さる。
生徒会副会長のミアがマイクを握った。
「この学園から、男を追放すべきです! 私たちの純粋な絆を汚す存在は、許せない!」
拍手と賛同の声が上がる。でも、同時に反対の声も。
「待って! アレンくんは私たちを裏切ってなんかいない!」
「男が敵だって、本当にそう? アレンくんを見て、そんな風に思えない!」
会場が騒然とする中、リリア先輩が壇上に上がった。彼女は静かにマイクを握り、深呼吸した。
「みんな、聞いて」
体育館が静まり返る。
「私たちは、ずっと『百合』だけが美しいって教わってきた。女同士の絆だけが純粋で、男が入ったらすべてが壊れるって」
彼女は私の方を見た。
「でも、私はアレンと過ごした時間を知ってる。あの日々は、偽りじゃなかった。優しさも、笑顔も、手を繋いだ温もりも……全部本物だった」
ざわめきが広がる。
「百合って、何だろう。私たちは『男は敵』って信じてきたけど、本当にそう? アレンは、私たちを傷つけたことなんて一度もない。それどころか、守ってくれた」
リリア先輩の声が、少しずつ強くなった。
「この学園は楽園だって思ってた。でも、壁の外に目を向けたら、世界はもっと広くて、もっと可能性があるのかもしれない。私たちは、変われる。変えていいんだ」
会場が、息を呑んだ。
ミアが何か言おうとしたが、リリア先輩は続けた。
「私は、もう怖くない。アレンと一緒に、未来を見たい」
彼女は私の方に手を差し伸べた。私は迷わず、その手を取った。
体育館に、拍手が湧き起こった。最初は小さく、でも次第に大きくなっていく。反対の声もあったけど、
それ以上に、賛同の波が広がった。
その夜、屋上の庭園で、私たちは二人きりになった。
月明かりの下、百合の花が白く輝いている。
リリア先輩が、そっと私の手に指を絡めた。
「アレンくん、ありがとう。あなたが来てくれなかったら、私たちは永遠に目を覚まさなかった」
私は首を振った。
「僕こそ……君たちに出会えて、よかった」
彼女が微笑んだ。
「これから、どうなるかわからない。でも、一緒なら大丈夫だよね」
「ああ」
私たちは手を強く握りしめた。この百合園は、もう禁断の園ではない。
ここから始まる変化が、外の世界に広がっていく。
女性優位の壁が、少しずつ崩れていく。
男と女が、互いを敵ではなく、仲間として手を取り合う日が来る。
百合の花は、壁の外でも美しく咲く。
私たちは、それを信じて、未来へと歩き出す。
月が優しく照らす中、二人の影は一つに重なった。
絆は、形なんて関係ない。ただ、心と心が繋がれば、それでいい。
僕は学園の外に咲く百合の花を見た。その花は、綺麗だった。
禁断の百合園 月天下の旅人 @gettenka
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