憧憬教室:必要とされなくても君は生を肯定できるか
@mtr3
第1話 行動できる事が既に一つの結果であるから
「ンキエェェエ!!!」
発狂している人間がいた。それは別段珍しい事ではない。いや、十分に珍しく、この緑豊かな美しい公園には似つかわしくない事なのだが、その人物の現状を表せるもう一つの要素と比べれば、十分に無視できる範囲の事象だった。
その人物は自動販売機の下の隙間を必死に探っていた。もはやその隙間の奥に獣がいて腕が食いちぎられようとしていると言われた方が納得できる程度には異常な様子だった。
しかしそれも、三年前ならば何か大事な物でも落としたのだろう、という話で済む事だった。
何故なら今の時代では自動販売機に隠れた硬貨を拾う必要など無いはずだから。無論、私たちが満ち足りた生活を送れているから、という訳が全てでは無い。
硬貨など通常は存在しない筈だから。
今から約三年程前、無能力者には能力者からもたらされる労働から解放された生命と生活が保証された人生が幕を明けたから。
程なくした昔、正確な時期はわからないが、五年前あたりだろうか?
世界には突如”能力”という物が齎された。もたらされた者の共通点はわからない。もたらさらなかった者の規則性も見つけられない。ただ確かに言える事は、進化した種は進化前の種をほぼ例外無く淘汰してきた様に”能力者”は瞬く間に世に跋扈し、無能力者を駆逐していった。
しかしそれそのものはあまり問題ではない。確かに能力者は強力とはいえ、当時の各国の軍隊が正常に機能すれば無能力者の安寧は取り戻せただろう。銃弾を弾きミサイルに耐えれるものなど極めて少数であるからだ。
しかしそうはならなかった。何故か?単純に軍隊内部にも能力者が発生したからだ。その上当時の軍隊は未知の脅威に混乱しており、昨日まで仲間だった者ですら一切の躊躇いも無く人体実験台にしようとしたのだ。
となれば導かれる結末は自然、内部から崩れ落ち、唯一の暴力手段を失った無能力者達はただただ蹂躙されるしかなかった。とはいえ、決して当時の軍部を責められるものなどありはしない、人類の限界がそこだった、というだけの話だろう。
何故ここまで冷めた言い方が出来るのか?それは極めて自分勝手で、戦争の恐怖を知らないから、とも言えるのだろうが、結果的に能力者に支配された方が私達無能力者にとっては幸せだったからだ。
というのも、世界に混乱が満ちた数ヶ月後、とある一人の能力者が圧倒的な実力と人望で争いと混乱を沈め、無能力者の人道的な扱いと健康的な生活の保護を約束したからだ。
当然初めは皆が疑った、当然だろう。はっきり言って彼は異常だった。全てを支配しうる力を持ちながら我々の保護を行うなど。初めは無能力者でも能力者の世界で生きて行こうとした。
しかし考えて見れば分かることで、頭脳、肉体、発想、それらに関する一切の労働が費用以上の効果を生み出す事はない。彼らにとって私達は前時代、および原始的な意味での”無能”だから。
それから程なく一人が、その保護を喜んで受け入れた。その男は様々な支援を受け一つの会社を作った。作り終わる頃には能力社会以前の問題は殆ど解決していたが、その男曰く”まぁ、働く必要がないとはいえ、たまには自分から進んで職を求める人がいるもんさ、だからこの会社はそんな人たちの為に作ったよ”との事だった。結果的に思いつく限りのほぼ全ての事業を展開している事もあり、無能力者で就労を希望する人間のおよそ9割はここで働いている。そして私もこの会社に入社しようとしている者の一人だ。
割合で見ればとんでもない量だが、そもそもの母数が少ない為、何一つ社会的な経験がない私でも意外とすんなり面接までこれた。
そして面接前に一旦公園にでも寄って気持ちを落ち着けようとした矢先に
「「「キュエェェエ!!!」」」
と発狂しながら何もないはずの自動販売機の下をおおよそ精密機械に対して立ててはいけないはずの音を出しながら弄っている男を発見した。しかしじきに終わり、少し猫背気味に立ち上がるとそのまま何も言わず離れていった。
流石に初対面とはいえ何か忍びないと思い
「あ、あの、大丈夫ですか?何か落とし者でも?」
と勇気を振り絞って背後から声をかけた。するとその男はゆっくりとこちらを振り返る。フードでも被っているのかと思えば違った。その男は顔全体を隠すタイプのマスクを被っていた。目出しでもないため素顔の一切はわからない。ただ、その、なんと表現すれば良いのだろう、奇怪な、というより、これを表現する語彙が私にはない為わからないのだが。伝えるとするならば (՞ةڼ◔) ←これが描かれていた。本当になんなのか、文字なのか絵なのかすらわからないがうっすらと顔、に見えなくも無い。そんな感想を心で述べていると
「お金、ない」
「えっ?」
「今月、お金、無くなったから、ください」
とその言葉を咀嚼する前に目の前の人?は綺麗な、初見の私にも分かる程度には熟練した滑らかな動きで土下座を披露していた。
「え、えっと」
「お、オデ、このままだと、死んじゃう」
「その、、、」
「だ、だから、どうか、どうかお恵みを」
カコーン と聞き慣れた軽い金属音をならしながら缶スープが落ちてきた。
「そんなにお腹空いてるなら、これ、どうぞ」とそれを手渡そうとした時
「あ、ごめん、現金が欲しい」
まぁおおよそまともな感情を持った人間が放つべきではい言葉を聞き届けながら、私はそれ以上の事は無視して会社に向かっていた。時間にまだ余裕はあったが自分の精神衛生上それが最善だと思ったから。しかし
「どうして現金が欲しいんですかね?」
と私はそんな当たり前の事を口にした。当たり前である、あの自動販売機はなんでも無料で売り切れでも無い限りは貰える。現金があればそれ以上のサービスが受けられるという機能もなく、なんならお金を投入する場所も無い。
これを聞いた時、初めは中々意味がわからないかもしれない、しかし最初に言った様に私達無能力者は能力者に生活が完全に保護されており、食料を心配する必要もない、そしてあの自動販売機も初めこそ一部の人間が独占する、という事態が起きていたが、そのような独占がなんらかの利点を生み出すことがない程度には物品が補充される、という事実を知った途端、その様なトラブルもなくなった。そう、この世界は所謂、無能力者にとっての、ユートピアなのだろう。
そんな事を考えながら受付まで来た。
「あ、あの」
「はい、」 と少々疲労が伺える程度には気だるげな、しかし印象が悪いとは思わなくなるほど真剣に返事を返してくれたその人は、忙しく操作していた端末を一旦すみに置き、私に向き直った。
「ご用件は?」
「えっと、3時に面接を予定して頂いてる遠山セリカです。」
「あぁ〜、遠山さんね、うん、確認取れてるよ。じゃぁ面接室は33階だから、あのエレベーター乗って行ってらっしゃい、そっから先は係の者が案内してくれると思うよ」
「えっ、その、本人確認とかしなくて良いんですか?」
「まぁそうだね、働いてる人間はそこそこ多いけど、年々応募者は減少してるからね、もう最近だと一年に一人いるかいないかぐらいだからね、流石に覚えてるよ。後、技術的な話をするんだったら一応持ってきてもらった書類あるでしょ?エレベーターがそれのバーコード読み込んでちゃんと目的地に連れてってくれるから大丈夫大丈夫」
とその様な説明を受け、お礼を述べてからそのエレベーターに乗り込むと
「あれ?」
なぜか全く反応しないのだ、試しにスイッチを押したり紙を翳したり色々試したのだが一向に動く気配は無い
あ、あれ?。何が、どうなって?
「あ〜、大丈夫?」
と半ばパニックになっている私に声をかけてくれたのは先ほどの受け付けの人だった
「あ、はい、すみません、その、エレベーターが反応しなくて...」
と不当な侵入者扱いを受ける事を半ば覚悟しながら
「ん〜、そっか、じゃぁちょっと書類見せてもらっても良い?」
と聞かれたので私はなんの躊躇いもなく差し出すと、少し濡れている事に気づいた
「...!」
「あ〜、これ、濡れちゃってんね、しかも運の悪い事にめっちゃピンポイントで肉眼では見えないはずのバーコードが濡れちゃってんと、あ〜、まぁ、心あたりとかある?」
と聞かれ、当然ある筈もなく、書類はここにくるまで一回も外に出してなかったし。その上、水滴が出るものなんて、と言おうと思った時、一回だけ、一回だけあった事を思い出した
「その、今朝公園で物乞い?みたいなのしてる人に、」
「物乞い?このご時世珍しい、(いや、なんか心当たりあるな)」と後半部分は小さくて聞こえなかったがこう言っていたと思う
「缶スープを渡そうとしたんですけど、現金が欲しいって言われた後に”でも好意は受けっととくんチョスねぇ”って言って私の手からひったくった後’アッチャアあっちゃちゃ”って言ってそのまま投げ返してきたんですよ、その時に何故か運悪く書類を入れてるフォルダーの間に入って、その時の湿気が原因だと思います」
「真に申し訳ない」
と言い終わるやいなやその受付の人は頭を下げてきて
「えっ?なんであなたが謝るんですか?...もしかしてさっきの物乞いの人なんですか!?」
と流石にありえないとは思いつつも自分の中では最も矛盾のない論理を導き出した。
「いや、流石に本人じゃないっすね、いやでも本当、申し訳ない、今度からやめるよう注意しときますんで」
とやや砕かれた敬語で話し始めた。よほど都合の悪い事だったのだろうか?まぁそれ以上の追求をする必要もないだろう、世の中にはきっと知らなくてもシ合わせに生きて行けることが多いのだろうから。多分これもそのうちの一つだろう。
そこから受付の人がついてきてくれるという話で纏った。ずっと受付の人、というのも申し訳ないので雑談の一環として名前を聞こうか迷ったが、さっきからずっと眉間を摘みながら目を瞑って何かを懸命に堪えている様な表情をしていた為、そっとしておく事にした。
「じゃぁ、俺はここまでです、なんかあったら呼んでください、じゃぁ後はそのシー、そこのお姉さんが案内してくれますんで、まぁ緊張しないで下さい、そんな難しい事は聞かれませんよ」
「あ、ありがとうございました!何から何で」
「いや、マジで気にしないでください、元はと言えばマジでこっちが悪いんで」
と、その時は言葉の真意を汲み取ることが出来なかった。一応気持ちは受け取ったという事で。
「では、こちらに、」
「え、あ、はい!」
とその女の人の後ろをしばらくついて行った。随分奥まで進み、これまでとは雰囲気の違う木製の両開きドアの前に立たされた。そして案内役の女性がノックをする直前に
「あ、っちょ、ちょっと待ってください、」
「はい?」とこちらに向き直ると、心底不思議そうな声で
「どうかなさいましたか?」
「い、いえ、その、私の勘違いかもしれないんですけど、ここって、社長室ですよね?」
「はい、よくご存知ですね」
「え、えぇ?ど、どうして新人の面接なんかで社長が直々に?」
「そうですね、端的に言えば、暇だからです」
「...暇だから?」
「はい、暇、というより、社長が現状負っている業務以上に年に1度くるか来ないかわからない新人を見定める、という業務の方が重要と思ったまでなのでしょう。つまりやはり暇だから、というわけです」
何故か少し棘のある言い方だったが何かあったのだろうか?そんな事を考えているうちに案内の人の手は既にドアノブにかけられており
「失礼します」
という言葉と共に開けられる
「ひ、ヒャい!」と緊張からか変に裏返った声を出しながらその中を見やる。
しかし、そこには誰もいなかった
「あ、あれ?」
「あー、なるほど、このパターンは、そうですね、きっかり5分後に到着すると思います」
「そ、そうなんですか?なんでそんな事わかって」
「それより、あなたはなぜこの会社で働きたいと思ったのですか?恐らくそれが唯一この面接で聞かれる質問です。あなたは今は集中してその答えを考えておく方が賢明でしょう、では」
といいそのまま扉を閉めてしまった、そうして気付く。彼女も表面上は全く凛々しく、殆ど感じとる事は出来なかったのだが。また疲労からくる物なのかうっすらと気だるげな雰囲気を醸し出していた。余程この会社の労働環境が悪いのかとも思ったがそうでもないだろう、エントランスにいた人たちはかなり活発に新しいプロジェクトやアイデアについて話し合っていた。私が見た中であまり元気とは言えないのは恐らくあの二人だけだろう、そういえば受付の人が名前を言いかけていたし、何か関係があるのだろうかとも思いながら、そんな事より今考えるべき問題に意識を映す。
なぜこの会社で働きたいと思ったのか
回答自体は容易だ。何故なら明確に理由があるから。問題はどちらの答えを伝えるか、だ。
1つは社長に会いたかったから。これは嘘でもなんでもない、本当に三年前に無能力者でも働ける環境を作って、今なお一定以上の価値を示し続けている人物など同じ無能力者として憧れない訳がないのだ。
そして2つ目がこの会社のサービスを利用したいこと、先ほど通貨はない、と言ったが、それはあくまで生活の保護を受けている無能力者間での話だ。能力者間の間では逆に交換品目を通貨に絞り込む事によって経済の混乱を防いでいる。それもあの能力者のリーダーのカリスマと実力あっての物だろうが。そしてこの会社が唯一無能力者が能力者に対してサービスを提供しているという特徴を持っている。
まぁ規模間的にも当たり前と言えば当たり前なのだが。とどのつまりこの会社のサービスを利用するにはお金がかかるのだ、そしてお金を稼ぐ最も早い手段がこの会社に務める、という事に他ならない。
自社で稼いだ金を自社に落とす、というのはなんとも奇妙に思えるが、様々な優遇措置がある為労働が無駄になる事はないし、何より経済規模、というより無能力者間でのこの会社が占めている経済割合がとてつもない為、感覚としては同じ国で稼いで同じ国でお金を落とす、というものに近い。
そして私はこの会社が提供するサービスの内、最も心が惹かれた”能力者が生み出した製品を購入できる”という特典を使いたかった。
別段購入が禁じられているわけではないが、会社が早い段階で仕入れているので他で買うより比較的安価、というのと社員からのアンケートである程度のものは要望にそって準備してもらえるらしい。それには様々なものが用意されている。
物理総則を無視するなど当たり前、質量保存の法則など意味をなさずただ与えられた効果を発揮する。おおよそ思いつく限りの不思議な現象を起こせるそのような道具だが、私が使いたいものは「記憶を思い出せる」というものだ、それも私のではな
「「「ガッシャーン」」」
とお手本の様なガラスが割れる音と共に、何者かが入ってきた。
酷く緊張を覚えながらも無理やりその存在に視線を映すと
あの、今朝会った変なマスクを被った物乞いが立っていた
「し、侵入者〜!?」
と悲鳴をあげながら部屋を出ようとするもそれより先に
「どうかしましたか?」
と受付の男の人がドアを開けて立ってくれていた
「あ、あの、件の不審者が社長室に、何か盗むつもりかもしれません!」
と知った顔に安堵を覚えた私は最も重要であろう報告を済ませると
「んんん〜、失礼しちゃうんチョンスねぇ?ボ、ボキはそんな悪い奴じゃないんちょんすよ?」
「う、嘘つかないでください!勝手に不法侵入してる人がいい人なわけないでしょう!?」
「イヒーwww 勝手に侵入するから不法侵入なんチョンスネぇ、勝手に不法侵入なんて二重表現何ちょすねぇ?後ついでに言えば別に不法侵入じゃないんチョンすねぇ」
「そ、そうなんですか?二重表現だったんだ。ってそんなのはどうでもよくて、受付さん!一緒に取り押さえて下さい!」
と憧れの人のデスクが荒らされるところなど見ていられず思わずそう声を荒げるが
「あー、その、すいません、そいつがうちの社長なんすよ」
え?と普段の私であれば即座に否定しただろう。しかし、目の前のその言葉を紡いだのは他でもないこの会社できっと長く勤めてきて、その上あんなに疲弊しているのに私を文句一つ言わず連れてきてくれた人だ。その隈に沈みながらも誠実さを感じさせる瞳で射抜かれた私に反論する手立てなどなかった。
となれば自然、後に襲ってくる感情など
悲しみ?怒り?違う、これはそんなものではない、もっと、胸が冷たく冷やされた真縄で締め付けられながら針で鋭く突き刺された様な痛み。今まで満ち足りた生活を送っていた私には訪れることのなかった初めての感情。そう、形容する語彙があるとするのならこれは、まさしく
”絶望”
その2文字がお似合いだろう
「え、そっ、そんな、う、そ」
と足元がおぼつかず文字通り卒倒しそうな私を受付の人が支えてくれた。
そのままソファへと私を寝かせ、朧げながらも聞こえた言葉は
「あんた、流石にもう少し手加減してもバチは当たんないと思うけど?」
「その分のしっぺ返しがこの子に来そうじゃないか?」
と言っていた様な気がする
….
……
……….
目が、開く。恐らくそこまで気を失ってはいないだろう、しかし、向き合わなければならない、見届けなくてはならない、その事実を。
そう思い、体を起こす
そうすると、目に入ってくるのは当然
「やぁ、おはよう」
と爽やかに声をかけてくれる素顔を隠した奇人の姿だった。
…
「あー、もう大丈夫?」
「えぇ、はい、大丈夫です。せっかくの面接なのにこんな時間の使い方をしてしまい、本当にすみませんでした。」
「あぁ、大丈夫大丈夫、おかげで君の復帰の速さと適応力もわかったからね、何一つ気負う事はないよ」
と、そうあっけからんと言い放つその姿に、本の少し、本の少しだが人の上に立つ者の風格を感じてしまった
「まぁそうだね、一応もう聞いてるかもしれないけど、君はどうしてこの会社に入りたいの?」
私は、もう、全てを正直に話す事にした
「そうですね、私は社長に会いたかったのでこの会社に入ろうと思いました」
「過去形だね、もう目標は達成したから満足かな?」
「はい...そしてもう一つは記憶を、思い出す、復元する魔道具が欲しいからです」
「なるほど、よくわかったよ。いい目標だね。まぁ物によるけどそこそこ安価で使えるから、きっと達成出来るよ。んじゃ採用で、担当は、そうだね、ゲンタにでもしようか」
「え、それだけですか?それにその、使用用途とかは聞かなくていいんですか?もしかしたら危ない事に使うかもしれないのに」
「...だとしても、記憶、強いては人の思い出なんてデリケートな部分、他人が踏み込むべきでも責任も取らずつべこべいうものじゃないと思うよ。それに」
「それに?」
「まぁ問題が起きればその部署の責任に全部丸投げできるからね!!」
「それで仕事が増えんの俺なんだから勘弁してくださいよ、マジで」
と明確に苛立ちを募らせながらその手に持った分厚い中身の詰まったフォルダーの角で社長の頭を叩く、あのマスクの中に何があるかは知らないが仮に何のクッションもなく直撃しているならかなり痛そうだ。
「...あれ?どうして受付さんがここに?」
「あー、そういえば自己紹介まだだったね。俺はブラックステンレスコーポレーション、技術開発部門代表兼哀れな中間管理職、大野ゲンタ。あー、一応これ日本語名で実際は韓国、ってもわかんないか、この国の対岸にあった国の出身で本名ジ・イン、呼びにくいって理由で名前まで取り上げられた可哀想な君のこれからの上司だよ。 よろしく」
と、気さくに、かつ中々に恐ろしい事をさらっと言ってのけた気がするが
「はい!これからよろしくお願いします、ゲンタさん!」
と握手に応じるのであった。
ちなみに国籍と言語が違うであろう彼と私が意思疎通が出来ているのは、勿論彼が私の使っている言語を話ている可能性はあるが、それ以前にある能力者が言語の壁を破壊できる能力を使用したため伝える意思があれば言語に関係なく意思が伝わる様になったのだとか。
退出後
「お前、結局ゲンタ呼びだったなww」
「あー、何でだろ?やっぱ呼びにくいんすかねぇ?」
「いやだって、インさんともジさんとも呼びにくいだろ、陰惨を持参する人みたいになっちゃったよ」
「それはw笑えないっすねぇw」
と言いながら徐にラジオの周波数を上げる
[こ.... き……む…こ …せ. ろせ!]
「相変わらず血気盛んっすねぇ?あの人らは」
「まぁ血気盛んというより、シンプルに不満があるだけだろ、まぁこうしてわかりやすくしてくれた方が水面化でなんかされるよりは嬉しいが」
「いつにします?」
「んー、まだ決めてないけど、多分一週間後とかかな?お前も来るか?」
「必要ないでしょ」
「だな」
と誰にも聞かれない会話を弾ませる、例え聞かれたとしてもその真意を理解できる者は、この場に限れば、室内の二人と外で見張る一人以外いないだろう。
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