ショートショート『愛社精神』

505号室

愛社精神

プシュッ!!

炭酸の弾ける音と共に爽やかな甘い香りが鼻腔をくすぐる。


私はある飲料会社に15年以上勤め、コーラの研究開発を行っている。

少しでも美味しく、人が幸せになれるコーラを。

そんな思いを胸にずっと研究を行ってきた。


しかし我が社はコーラ業界で常にシェア2位。

1位はライバル企業であるA社が独占し続けている。

といってもいい勝負ではあるのだがいつもほんのあと一歩足りない。

まさに目の上のたんこぶである。


打倒A社のため、私は彼らのコーラを常に研究し続けている。

寝ても覚めても彼らのコーラを。

この人気の秘訣を、業界1位となるための秘密を見つけ出すために。

香料か…スパイスのバランスか…

10年がかりで分析を続けても簡単に暴けるものではないが、諦めるつもりは毛頭ない。


ゲフッ…


私の熱意がガスとなって口から漏れる。

研究のためとはいえ少し飲みすぎたか…。

しかしこれも我が社のコーラを一番にするためだ。


そんなある日、私の元に一つの封書が届いた。

宛名はライバル企業のA社

なぜだ??

まさか私が研究していることがバレたのか…?

なんにせよ、中身を見ないことにはわからない。私が封書を開くとそこにはこうあった。


感謝状


〇〇様

平素より弊社のコーラをご愛飲いただき、誠にありがとうございます。


弊社の売上の大半を占める、長年にわたる継続的かつ膨大な量のご購入実績を拝見し、ささやかではございますが感謝の意を表したく、本状ならびに商品券をお贈りいたします。


今後とも弊社商品をご愛顧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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