自分が描いたイラストの異世界に転移してしまった
マホロ
第1章 隠遁(いんとん)
第1話 異世界に飛ばされたみたい
ゆっくり
「知らない天井だ」
言ってみたかったセリフを
シーツはザラザラだし、なんだかチクチクした感触もある。それに着ている服だっていつものパジャマではない。なんだかゴワゴワしている。
起き上がって周りの様子を確認する。6畳くらいの部屋にベッドと机、椅子が置いてある。ベッドのそばに窓があるので、外の様子を見ると森の中にいるようだ。どこだろう?夢かな?そんな事を考えつつベッドから立ち上がってみた。普通に動くことは出来そうだ。
外に出ることは出来そうだけど、さすがに怖いので様子をうかがう。出口はベッドの足元方向にある扉と、ベッドのそばにある窓だけ。窓はガラス張りだが構造上開きそうにない。そうなると出口は扉だけだ。窓を割って出るという選択肢もあるが、机の上に本があるからそれを見てみようかな?
私は「
両親の残した家とお金があったから何とか暮らしていけていたけど、このままではいずれ貯金も底をついてしまうので、大学時代に少しやっていたイラストの仕事をつてに何とかフリーのイラストレーターになれた。自分が通っている心療内科の病院代も馬鹿にならない。
フリーのイラストレーターになって1年、自分のイラストが小説の挿絵に採用されたのは運が良かったと思う。それにそのことで少し自信が持てたのも大きかった。でも人と話すのは今でも苦手だ。
私が今の状況である程度落ち着きを保てているのは、この風景に見覚えがあるからだ。自分がイラストを担当した小説に登場する主人公が、冒頭で異世界に転移した時にたどり着いた部屋と全く同じだ。この部屋の風景は私も描いた。もちろん混乱はしているけど、自分が描いたイラストと全く同じ部屋にいるのは不思議な気分だ。
(どう見てもあの小説の冒頭部分に出てくる部屋よね……)
仕事を引き受けるにあたって、原作の小説はかなり読み込んだ。細かい設定までは聞いていなかったが、それでもある程度内容は覚えている。それに机の上にある本の装飾まで私の描いたイラストと全く同じだ。
今は焦って動いても良いことはなさそうなので落ち着いて行動する。とりあえず主人公と同じ行動をとってみようと思う。
机に近づいて本を観察してみる。
(この文字では私には読めないわね、主人公は普通に読めるような表現がされていたけど……)
しばらく眺めていると、タイトルの文字が動き出し日本語に変わっていく。錯覚かと思い目を閉じてからもう一度見てみるが、やはり日本語になっている。
『異世界での過ごし方』
ページをめくってみると、目次が現れた。そこには【本書について】や【世界について】といった項目が並んでいる。かなりの項目数があるため、私はじっくり読み進めていくことにした。
(主人公はさっと読んで移動していたけど……)
【本書について】
本書は、別世界からここへ辿り着いた方に向けて記されています。書かれている言葉は、読んでいる方が使用している主要な言語へと自動的に変換されます。すべてを読破する必要はありません。あなたに今必要な情報が、優先度の高い順に並んでいます。まずは、最初の3項目ほどに目を通されることを推奨します。
なるほど、つまりこの本は、私専用に書き換わっているということかな?やはり、私は異世界に転移してしまったらしい。ここが知っている小説と同じ世界なのか、それとも似て非なる場所なのかはわからない、最初の項目である【世界について】を読んでみた。
まず、この世界は『イルヴァーシル』と呼ばれる場所であること。そして、大気中に『魔素』と呼ばれる物質が存在し、それを使用した『魔法』が機能すること。その『魔素』の影響で『魔物』という存在が生まれることなどが記されていた。他にも大陸の事や気候についての記載があったが、今は割愛する。
小説ではこんな細かな設定までは書かれてはいなかった。ただ『剣と魔法の世界』だという表現にとどまっている。イラストを描いているのもあるが、この手の小説は何本も読んできた。この本に興味を惹かれた私は、時間が経つのを忘れて読み耽った。
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自分が描いたイラストの異世界に転移してしまった マホロ @mahoro-0727
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